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四つの扇  作者: オリンポス
3章:捲土重来を期する、東家と西家!!!
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24.身につけたモノ

「なあ、じいちゃん。ちょっと訊いていいか?」

 頭が重く、身体はダルく、異様に眠たい。

 そんな気持ちを抑えながら、灯火は言った。

 エアコンの良く効いた涼しい部屋で、円卓の向かいにいる祖父に向かって。

「殺す気かっ!?」


「まあの」

 コップに入った麦茶を飲み下し、槐は冷淡に答えた。

「じゃが、これくらいで死ぬような(たま)じゃないことも、十二分に理解しておるがの」


「よく言うぜ」

 灯火もコップをつかんで、口に運んだ。

 その際に、手の熱がコップに伝わって、麦茶が沸騰している場面を想像してみた。

 そしてぐっと力を入れてみる。


「まあ結果オーライじゃろ。これで基礎は修得出来たじゃろうし……」

 灯火の持つコップを見て、槐はふっと笑みをこぼした。

 コップの底には気泡が溜まっており、それがコポコポと水面に顔を出しては消えていった。

 程度良く熱せられた容器からは、薄い湯気が出ている。


「なるほど、大体のイメージはついた」


 走っているとき——灯火は、燃えるような『暑さ』を経験した。

 それは燃えるような『熱さ』と置き換えてもなんら遜色ないほどに、すさまじい暑さだった。


 だからこそ灯火は。

 体内に蓄積された熱を、外に分散させることを強いられたのだ。

 知ってか知らずか、予想通りか想定外か……。

 とにもかくにもその際には、内的エネルギーを使用していた。


 じつを言うと——。

 横切った自転車のタイヤがパンクしたのも、ダウンジャケットから煙が出ていたのも。

 灯火の内的エネルギーが原因だったのだ。


「では修行も第2段階目へと移行しようかの?」

 やけどした箇所が痒いのか、槐は包帯の上からなくなった耳を掻いた。

 灯火の胸がずきんと痛んだ。


「2段階目って軽々しく言うけど、俺はもう、足がやばいぜ」

 円卓に手を置いて身体を支えながら、灯火はそろそろと立ち上がってみせた。

 いまだに足ががくがくと震えている。


「安心しろ、灯火。2段階目の修行は——」槐は穏やかな表情で諭した。「湯治じゃから」

「湯治だと? 温泉に行くのか?」

「もう日も暮れてきたし、ちょうど良いじゃろ。それにサウナに入れば、今日のおさらいも出来るしの」


 熱の分散。

 ——それは技と呼ぶにはあまりにも貧弱な技だが、基礎中の基礎である。

 早いうちにマスターして然るべきであろう。


「わかった。じゃあ風呂道具の準備をしてくるよ」

「うむ。療養も兼ねた本格修行第2段階の始まりじゃ!」

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