表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四つの扇  作者: オリンポス
3章:捲土重来を期する、東家と西家!!!
22/101

22.内外的エネルギー

「まずは稽古をつける前に、座学から始めるぞ。準備は良いか、灯火?」

  日本家屋の一室、畳の部屋で。

  灯火と槐は、向かい合って正座をしていた。


  槐は片耳に包帯を巻いて、痛々しい傷痕を隠してはいるが、その生々しさはむしろ強調されていた。


  一方の灯火も、さらしのようにして。

  腹周りを包帯で覆ってはいたものの、それはある種武闘家のファッションのようにも見えた。

  理由は、彼の肩幅が広く。

  スリルに引き締まった腹筋も、枡が埋まっているのかと思うくらいに割れていて、鍛え抜かれていたからである。


  恐らく単純な力比べであれば。

  それもたとえば腕相撲であったならば。

  灯火の圧勝だったはずだ。


素手喧嘩(ステゴロ)の……扇なしのガチの殴りあいはやんねーのか?  じいちゃん」


「やっても良いが、今の灯火(おまえ)じゃワシには勝てんよ?」


「言うじゃねーかよ、クソジジイ。1度勝ったくれーで調子に乗るなよ?」


「調子に乗っておるのはどっちじゃ? 相手の力量も測れず、見誤り、南家の荒くれ者に大敗を喫したのはどこの御仁かの?」


「あれは……。

 クラスメイトっつー、人質がいたからであって……」


「そういきり立つな。まずは座りなさい」

 今にもつかみかからんとする灯火をいさめて、槐はゆっくりと続けた。

「まずは扇が手元になくても、その能力を使役し得るようにならねば、話にならんからの。

 ところで灯火。扇の持つ本来の役割というものは知っておるか?」


「扇の持つ、本来の役割?」

 復唱し、思考してみるが、「そんなものは知らない」

 聞いたこともなかった。扇には属性攻撃をする用途以外にも、なにか役目が与えられているというのか。


「そうじゃの。漠然とした説明になるが自然界には内的エネルギーと外的エネルギーの2種類がある。

 内的エネルギーというのは、生物が生きるために発するエネルギーのことじゃ。たとえば灯火の基礎代謝なんかもそれに値する。要は『有機物の発するエネルギー』のことじゃ。

 対する外的エネルギーというのは、原子力発電や太陽光発電のような『無機物によって生成されるエネルギー』のことじゃ。

 外的エネルギーを取り込んで来て、おのれのエネルギーとして昇華するのが、扇の役割なのじゃ。

 そしてさっきワシがやってみせたのは、内的エネルギーで作り出した炎……扇の熟達者となればあれくらいは容易に出来るのじゃ」


「なんとなーくわかったけどさ。その内的エネルギーってどうやって使うんだ?

 話を聞く限りだと、基礎代謝だけで、技が発動出来るようなニュアンスだったけど……」


「うーむ、そうじゃの。だいぶ感覚的な説明になってしまうが」

 槐は腕を組み。

 難しい問題に頭を悩ませる学者のような顔をしてから。

 少しずつ言葉を紡いでいった。

「技を発動させるイメージと、技が発動したあとのイメージ……じゃな。

 身体のどの回路から、どのようにして、どのような技が放出されるのか、明確にイメージすることが肝要なのじゃ。

 手っ取り早い例でいくと、掌が燃えるイメージを持つとするじゃろ。そして実際に手に力を込めると、燃焼型猛打掌(バーニングストライク)が使えるといった要領じゃな」


「力を込めるっていうのは、単純に力こぶを作るってことじゃないんだよな?」


「力の入れ方は人それぞれじゃ。技の発動がイメージ出来れば、どんな風に力を入れてもらっても構わん。しかし、あんまりにも入れすぎていると、技を使用したあとの虚脱感がとてつもないからの。戦闘においては、そういうさじ加減も重要になってくるのじゃ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ