21.師弟対決、決着
「悪戯薄霧」
槐が合掌すると、彼を守る火炎防御壁の周りに。
薄いもやが出現した。
それにより、灯火の技――連射式少量焼暴弾の的中率は大幅に下げられてしまった。
「責任点火」
老人が、自分の胸や腹、股やももを力強く叩くと。
灯火の纏式火炎弾は消失し、代わりに槐を覆うようにして火炎が出現した。
「灯火よ、お前の炎はワシがいただいた」
「……ったく、どこのアルセーヌ・ルパンだよ」
灯火は悪態をつきながら、打開策を練っていた。
「熱探知」
熱探知により、技の命中率を底上げする。
しかしそれでも。
灯火の火炎弾は、紅蓮の壁に吸い込まれては、その姿を消していった。
「責任点火」
そして。
もはや攻撃の取っ掛かりと言っても差し支えがない、連射式少量焼暴弾を。
槐は。
奪い取った。
それにより高速の火炎弾は、一瞬にして姿を消し。
代わりに。
日本庭園のそこかしこにある石燈籠にやわらかな明かりを灯した。
「なめんな、クソじじいー」
またもや力任せに扇を振るう灯火。
「むっ?」
それにより。
老人がまとっていた、纏式火炎弾も。
石灯籠をまばゆく照らす、かがり火も。
消滅した。
残ったのは、防火式鎧戸だけ。
じゃり――っという。
玉砂利を蹴る音がして、振り向くと。
そこには、薄霧にまぎれて灯火がいた。
「終わりだ、じじいー」
絶対不可避の近距離で、灯火は。「焼暴弾」
バランスボール並みの火炎を放出した。
「むぅ……」
老人は苦虫を噛み潰したような表情で。
「狂気的噴火口」と叫んだ。
するとたちまち――地面が隆起し。
間欠泉のように、火柱が立ち上った……。
焼暴弾はその火力の前に、あっけなく消え去ってしまった。
「ワシの勝ちじゃな」
灯火が火柱に気をとられている隙に、槐は。
掌底打ちをお見舞いしていた。
「燃焼型猛打掌」
灯火は短い悲鳴を上げると、腹を押さえて動けなくなってしまった。
「――というわけじゃ。一戦交えてわかったことじゃが、お前は弱い」
片耳がなくなっていることなど意にも介さず――火傷の処置は行っているが――老人は提案した。
「これからやるべきは修行じゃな。修行をして強くなれ。とりあえず修行じゃ」
と、修行を推奨した。
「いや、でもさ……」
「ワシが死んだら、あとを託せるのはお前しかおらん。わかるじゃろ?」
うーん、と。
若干ではあるが思考したあとに。
「わかった!」
灯火はひざを叩いて。
「要は俺が最強になれば、もうじいちゃんを心配させずに済むってわけだな」
気が付けば、20話超えてる……。
長くても2,3話で終わらすつもりだったのに。