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四つの扇  作者: オリンポス
3章:捲土重来を期する、東家と西家!!!
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16.今こそ決行のとき

小規模氾濫ア・スモール・フラッド


「おいおい、なんか水かさが増してねーか?」

 灯火は大した確証もなく呟いた。


「たしかに水流が速くなっているような……」

 虚空も同調した。


「でも雨は降ってねーし、気のせいか」

 と。

 灯火が言いかけた瞬間。


 上流に設置されている小滝(カスケード)が、轟音をとどろかせた。


 まるでダムが決壊したかのように、水が溢れだし。

 その勢いに押されて、岩や木材が流されていた。


 当然。

 骸骨少年の家族も、天災による被害を受けた。


 立っていられずに、尻もちをつき。

 そのせいで全身を水流に支配されたのだ。


 溺れた彼らは、もはや泳ぎの体裁すらなしておらず。

 大の人間と、小の人間が。

 笹船のようにして、押し流されているのであった。


「ぐうっ」

 骸骨少年は奥歯を噛みしめた。


 お母さんとお兄ちゃんを助けたい。

 だけど、助けられるわけがない。

 ――複雑な思いが意地悪く交錯する。


 そんな中。


 ふと、灯火のある発言が脳裏をよぎった。

【いつまで経っても『出来ない理由』ばかり探して、そうやって自分に言い訳して生きてきたんだろ?】


「違う……」

 声に出して否定する、骸骨少年。


【なにもしようとしない、なにも出来ないお前が、なんでも出来るという根拠はあるのか?】


「根拠なんかなくったって、やるしかないだろ?」


【出来るか、出来ないかはあとでわかる】


「そうだ。ぼくがやるんだっ!」

 もうすでに、少年の双眸そうぼうから迷いは消えていた。

 まるで霧が晴れていくように、サッパリとした面持ちで。

「ぼくが助けるんだっ!」

 骸骨少年は衣類を脱ぎ捨て、氾濫した河川に飛び込もうとした。


 が。


「待ちなさい」

 木の枝のように細い腕を、がっしりとつかまえられて。

 少年の足が止まった。

「あなたじゃ無理よ」

 虚空は力強く言った。


「離してよ、お姉ちゃん」

 少年は虚空の手を振りほどこうとするが。

 その華奢な身体では、虚空をビクともさせられなかった。


「大丈夫だから。彼に任せなさい」


「彼?」

 ただならぬ恐怖心により、骸骨少年の声は震えていた。

 これから入水自殺をするようなものだったのだ。想像以上の覚悟が求められていたのだろう。


「ええ、彼よ」

 虚空が見つめる視線の先には。

 パンツ一丁で、猛然とダッシュしている灯火の姿があった。


 東炎扇をがっちり握りしめて。

 灯火は親子2人の救出に乗り出した。

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