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四つの扇  作者: オリンポス
2章:戦闘狂の南家、出陣!!
13/101

13.西風扇の逆襲

「ダメでもともとよ。乾坤一擲(けんこんいってき)、やってやるわ!」


 虚空はウエストポーチから、大量の釘を取り出して。

 真上に放った。


「なんだなんだ? 天に(つばき)するつもりか?」

 土竜は面白そうに。

 遠目で眺めている。


「局所的突風(風速40メートル)」

 西風扇を振って。

 虚空は高々と釘を打ち上げた。


「うん? 花火でも打ち上げたつもりか?」


 しかし、花火のように散り散りになることはなく。

 釘は空中でまとまった。


 そして、一ヶ所に集中して降り注ぐ。


無頭釘降雨(ブラッドネイルシャワー)


「なっ……。にっ?」


 まるで釘1本1本が、意志を持っているかのように。

 土竜めがけて、襲いかかる。


 バク転に側転と、アクロバットな技を決めつつ。

 土竜は正面玄関の(ひさし)に隠れた。


 文字通りの――雨宿りだ。


硝子旋風(ガラスデビル)


 ひゅんひゅん、と。

 今度は無数のガラス片が飛翔し、容赦なく土竜を切りつけていく。


 石階段にも、粉々になったガラス片が散らばっていた。


「くっそ、痛って!」

 皮膚に刺さった破片を抜きつつ。

 土竜は苛立ちをあらわにした。


 そして。

 虚空のいる、穴へと突っ込んでいく。


「かかったわね」

 風探知(ブリーズサーチャー)で、土竜の動きを察知し。

 虚空は攻撃を仕掛けていたのだが。

 もちろん。

 逆上した土竜がぶん殴りに来ることも、予測済みであった。


「よっと……」

 穴のふちに手をついて。

 ゆっくりと両足で着地した土竜。


 だが。


「爆裂砲台固定キャノンッッッ!!!!!!」


「ま、た、か。西家の者よ」


 土竜はまたしても。

 吹っ飛ばされてしまった。


 虚空はすかさず。

 吹っ飛んだ土竜の脚にしがみつく。


 ずざーっと、しばらく地面に擦られたが。

 虚空はようやく脱出に成功した。


「やってくれるな、西家の者よ。

 やはり対遠距離戦闘は、やり辛いな」


「近接戦闘は南家の十八番だからね。そりゃあなるべく回避するわよ」


「ふん、意気地のない。

 そんなことだから、東家に負けるのだ。西家の者よ」


「なんですってー!?」

 激怒した虚空は。

 すぐ側で転がっている土竜の胸ぐらをつかんだ。


 が。

 相手はポンチョを着ているのだ。


 胸ぐらはつかめても。


「ふんっ!」


 すぐに振りほどかれる。


「なにをしようと、(ぬか)に釘だ!」

 土竜は手押し相撲のように。

 虚空を突き飛ばした。


 体勢を崩した虚空は、受け身をとったが……。


 ズボッ。


「きゃっ!!!!」


 またしても落とし穴に、落下してしまった。


 落ちる際。

 ガリガリ、と。

 ほほを抉られた。


「痛っつー!」


 アスファルトの断面を、忌々しげに睨みつけ。

 出血した部位を確認する虚空。


 大丈夫。ただの擦過傷だ。


「じゃあな、西家の者よ。これよりオレは撤退する」


「はあっ!? なにを意気地のないこと言ってんのよ?」


「パトカーと救急車と消防車のサイレンが聞こえないか? 未曾有(みぞう)の大災害が発生したんだ。自衛隊だろうが、なんだろうが、駆けつけてくるに決まっているだろう?」


「……そうね、かすかにサイレンが聞こえるわ」


「そういうことだ。聴取とか職質とかめんどくさいから、あとはよろしく頼んだ。西家の者よ」


「ちょっ……ちょっと待ちなさいよ」


「それとだな。東炎扇及び西風扇は、1週間後くらいにもらいに来る。だからそのつもりで待っていてくれ」


「待ちなさいってば」


「じゃあな、西家の者よ。東家の者にもよろしく言っておいてくれよ!」


 そう言ってポンチョを翻すと。

 土竜は市街地へと姿をくらました。


 たぶんあの怪しげな格好なら、ここにいなくても職務質問を受けるだろうな、と虚空は思った。

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