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四つの扇  作者: オリンポス
2章:戦闘狂の南家、出陣!!
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12.南家の陥穽

「距離をとったのが、(あだ)となったわね」


 無数のガラスが突き刺さり。

 苦痛の表情を浮かべる土竜。

 虚空はそれを見て、誇らしげに言った。


「ふん、軟弱なセリフだ。ガラスなど、オレにとっては大過ないわ! 手術代を勘案したから、渋面になっただけだ」


「手術代?」


「ガラスの摘出手術だ。食道から入ったのならまだしも、皮膚から侵入したガラスを消化する自信はないからな」


「ふーん。それはご愁傷様」

 言って。

 虚空は思考する。


 土竜にも五月雨式硝子旋風(ガラスデビルマシンガン)が通じるということを、今更ながらに実感した。


「こんなことを続けてもオレは絶命しないぞ、西家の者よ。

 ましてや扇の使用量を無益に減らすことにも繋がるだろう?」


「そうね。とどめの一発が出せないんじゃ、私の劣勢は免れないわね」


 扇には、使用制限がある。

 力を使えば、エネルギーを消耗する。

 その消耗したエネルギーは時間が経過しないと、回復しないのだ。


 例えるなら、蓄電池。


 電池が切れたら、しばらく使えなくなるのだ。


「オレもお前も、大技を使っていることだしな。ここはひとつ、徒手で戦わないか?」


 ジグザグに歩いて。

 土竜は虚空に接近する。


「いざというときのために、技を節約しようではないか」


 虚空のポーチには、ガラス片のほかに。

 金槌と。

 大量の釘が入っていた。


 しかしここで。

 このタイミングで、扇を使用するのは。

 あまりにも無意味。


 ならば。

 寝技には重々気を付けて。

 格闘戦に持ち込むしかない!


 東家との格の違いを見せてやるんだ!


「いいわ。その挑発に乗ってあげる」


 だが、虚空が足を踏み出したその瞬間。

 無情にも、土竜が仕掛けた技。

 陥穽の法則が発動してしまった。


「んっ!?」

 虚空は始め。

 なにが起こったのかすら、わからなかった。


 身体が宙に浮いたのかと、錯覚してしまった。


 まさかアスファルトが。

 自重で陥没するとは。


 それもかなり沈んだのである。

 落とし穴と表現しても決して過言ではないほどに。

 その深さは計り知れなかった。


 現実としての認識が。

 追いつかなくなる。


「まさか、そんな……」


「どうかしたか、西家の者よ」


 尻餅をついて、腰を抜かしている虚空に。

 土竜は言った。


「あなたの扇は南土扇じゃないの?」


「その通りだが?」


「じゃあなんでアスファルトまで陥没させることが出来るの?」


「南土扇が対象としているのは、なにも、土だけではないぞ」

 虚空の勘違いを。

 ははは、と笑い飛ばして。

 土竜は答えた。

「アスファルトも、グラウンドも、中央玄関の石階段も、床も、学校の階段も、人間が地面とみなすものすべてが、南土扇の対象となる。校舎の地盤さえも、意のままだ」


「へえ、そりゃすごいわね」


 ――虚空が落ちた穴。

 陥没したアスファルトの直径は、約150センチ。深さは170センチほどもある。


 女の子にしては、比較的長身な虚空だが。

 腕を伸ばして()いつくばらないと、脱出は不可能だった。


 しかし、そんな脱出法方では。

 もぐら叩きのように、すぐに叩かれてしまう。


 では、いったい。

 どうやって脱出すればいいのだろうか?

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