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四つの扇  作者: オリンポス
最終章:それぞれの人生。
100/101

100.死闘の果てに

 羽柴家の家督争いは、少数の犠牲者を出すことで終結した。

 もはや東家と北家は潰えてしまい、残されたのは西家と南家だけであった。


 彼らはお互いを、"羽柴家の残滓ざんし"と揶揄しあったが。

 その一方で戦争を経験した盟友としての契りを交わすことにした。

 2度と同じあやまちを犯さぬように、長く続いた家督争いを、"家出主カデシュの戦い"と名付け、羽柴家で初となる成文化された平和条約、"平和同盟条約"を締結した。


 条約の内容は。

①領土不可侵

②相互軍事援助

③政治的権利の放棄


 ①については当たり前だが。

 ②については藤原家のような能力者を警戒してのことである。四羽扇や四鏡のほかにも国宝級の軍事兵器があるやも知れぬ。そのような不測事態でも相互で協力できるように定める必要があったのだ。

 ③については、北家が過去に行った悪政"扇狩り"を防ぐ狙いがある。国家権力を東西南北の4つに均等に分けて四権分立させる。最終的な目標は、4大勢力の羽柴家を1つにすることだが、事実上は西家と南家しかいないため、この施策はすぐに達成できるだろう。




 後日談。(羽柴虚空)

 羽柴虚空は結婚した。

 彼女は不遇の幼少時代を送ったためか、すこし男嫌いな気があった。

 しかしお相手の男性は、容姿に優れ、経済面も安心して任せられる、理想の夫であった。

 彼女は第2の人生を謳歌すべく、現在は子作りに挑戦中だ。

 ちなみに南土扇は羽柴土竜が持っているが、そのほか"東炎扇、西風扇、北水扇"は彼女が一括して預かっていた。


 後日談。(羽柴土竜)

 家出主の戦いを経て、すぐにフランス外人部隊に入隊したため、羽柴土竜は独身だった。

 フランス外人部隊に憧憬のまなざしを向ける日本人男性は意外と多く、入隊初日はたくさんの同期に囲まれていた。しかし度重なる過酷な戦闘訓練、疲労骨折するまで歩かされる徒歩行軍、カルチャーショックなどによって、その同期はあれよあれよと姿を消してしまい、今では孤高の戦士とまで称賛されるようになっていた。

 おそらく彼の実戦投入もそう遠くはないだろう。




 後日談。(藤原孔雀)

 藤原孔雀は服役していた。

 このまま一緒に家族で生活することは、世論が許さない。 

 そう判断した彼は、警察に出頭したのだ。

(重要参考人として手配されていたため、自首とはならなかった)


 彼は裁判判決で懲役刑を課せられた。

 孔雀はそれに素直に従った。しかし、藤原道草は納得しなかった。

 裁判所はもちろん、テレビや新聞社などのマスメディアに、抗議の文章を送ってみせたのだ。

 報道機関はそれを面白がってネタにし、"保険屋が殺人は無罪だと主張!"などと記事を掲載したため、ネットを中心に一時期話題をさらうトップニュースにまでなった。


 後に一連の騒動を知った孔雀は、涙を流し、父親に謝罪したのだった。


 後日談。(藤原道草)

 藤原道草は保険屋を解雇された。

 息子の醜態が世間にさらされ、成績が非常に伸び悩んでいたというのもあるが、決定打となったのは報道機関の、"保険屋が殺人は無罪だと主張!"という例の記事だった。あれによって完全に終止符を打たれたという感じだった。


 その後も何度かマイクを向けられることはあったが、「慙愧ざんきの念に堪えません」と短く答えるだけにしてやり過ごした。


 東京の賃貸住宅では、放火未遂や誘拐未遂が相次ぎ、殺害を予告する旨が、固定電話やファックス、メール便などで頻繁に送られて来るため、現在は青森の片田舎で津軽弁を勉強している。


 後日談。(藤原典嗣)

 藤原典嗣は活発になった。

 いつかの橋場ハルキとの対決が、彼に自信を与えたのだろう。

 もともと飲み込みが早い少年だけあって、たいていのことは器用にこなした。

 友達も増えた。

 だが水泳だけはどうしても苦手らしい。

 毎年お盆の季節になると、羽柴灯火の墓石に花を添えている。


※勘違いされている読者も多いと思うが、彼は藤原道草のおいである。家族ではない。

 彼の両親は海外赴任から帰ってきたため、現在は実家の京都暮らしである。


 後日談。(藤原美沙)

 藤原美沙はいじめられていた。

 仮病で学校を休むことも増えた。

 この年齢にもなると、青森に引っ越してもあまり変わらない。

 そう思っていたが、変わったことがひとつだけある。

 父親の態度だ。

 昔は仕事一辺倒で家族をおざなりにしていたが、現在は運動会や授業参観にも出席するようになった。

 それが嬉しくもあるが、友達のいない現状を知られるのが、心苦しくもあった。

 将来の夢は、素敵なお花屋さんになること。




 こうして物語は幕を閉じるが。

 羽柴家の本当の戦いは、まだまだこれからで。

 藤原家の本当の戦いは、始まったばかりである。


 しかし、彼らは思っていた。

 これからも強く生きていこう、と。

 炎のような熱い心で激動の時代を駆け抜けた、羽柴灯火のように。

物語の方は、これで完結とさせていただきます。

ここまで読んでいただけて、感無量です!


この小説は家族をテーマにしてたんですが、全然表現しきれませんでした。悔しいです。もっと精進します。


ではでは、言いたいことは盛りだくさん。

言い残した設定も掃いて捨てるほどあるので、次話でそれをちょこっと紹介して、本編の幕切れとします!


2年以上の長い間、皆様のコメントがどれほどの励みになったかわかりません。これからは、より実力をつけていきますので、引き続き応援のほど、よろしくお願いします!

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