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ハルトの高原のすそのにある、憲兵隊の駐屯所では、いつもなら




おだやかな午後であるが




この日は一台の装甲車が巡回から帰ってきてというもの




急にあわただしい動きをみせていた




装甲車からは、ひとりの老人が連行されていた




そう、ピオである




「何?  剣で切断されただと?」




憲兵隊の司令である少佐は、巡回分隊の隊長から報告を受けると




その切断された軍用拳銃とピオの剣を、交互に見つめていた




その長い髪は明らかにこの少佐が女性である証拠である




豊かな金髪の髪が腰まで伸び、制服の肩に付けられた金モールと




見まごうばかりの美しい髪である




「物理的に、不可能だ、そんなことがあるものか」




少佐は、少し口元に笑みをうかべながら言った





「しかし、少佐、私はたしかに見たんです、あいつが剣を抜いた瞬間




 剣が虹色に輝くのを」




「おそらく、太陽の光が反射でもしたのだろう、いいかこの事は他言するな




 分隊の兵士にも徹底させろ、いいな」





分隊長はすこし納得がいかない様子であったが、胸をはって少佐の方を向き直ると




敬礼をして答えた




「わかりました、機密といたします、あの老人はいかがいたしましょうか?」





「あとで、私が直接尋問する、拘置しておけ、くれぐれも乱暴するな!」





「はっ!」




分隊長は短く答えると、足早に天幕のそとへ駆けだしていった





少佐はひとり残ると、拳銃と剣をかかえたまま




木製の簡易ベッドに座った




その金色の長い髪をしきりにかきあげながら、何事か考えている様子だった




考え事をする時そうするのが、少佐のくせであるようだった




脇におかれた無線機や、書類のたばにまじって、綺麗な額縁に納められた




肖像画が置いてある




それは、この国いやこの惑星の支配者である国王




「ウル・メギド18世」




の肖像画であった




豪華な王族の衣装を身にまとったその姿は




権力者の圧倒的な威厳をそなえているように思われた




その長く伸びた髪は、少佐と同じ金髪であった




どことなく、少佐の人相と似通っているように思われた




少佐はかすかにふくらみのわかる、胸の内ポケットから




シガレトケースを取り出すと




タバコに火をつけた




「まさかな、しかしもしもということもある、御報告でねば」




そうひとりごとをつぶやくと




手に持ったタバコを口にくわえると




ピオの重厚な剣を、そのさやから抜きはなった




小気味よい金属音をたてながら、抜き放たれた剣は




午後の天幕のなかのやわい光のなかでも、水滴がはじけたのかと




見まごうくらいの輝きをはなっていた




「たしかに、いい剣だ」




「しかし、とくに変わったところはないな」




少佐は剣をふりまわしてみたり、細部にわたり入念にしらべてみた




そして刃の部分を見ていたとき




一瞬顔色がかわって




口にしていたタバコを落とした




あきらかに動揺していた




何かに気が付いたのだ




「ばかな!こいつは 全然刃こぼれしてないじゃないか!」




少佐は剣を左手に持ったまま




かたわらにある電話に手をのばした




朱色に塗られたその電話は、部隊間の連絡用の無線機とは




あきらかに用途が異なっていた




そう




メギドの王宮への直通電話である




「そうだ、憲兵隊司令だ、内務卿を出してくれ、火急の用件だ、今すぐに・・・」


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