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「血筋って?」
ハルトは不思議そうに聞いた
「おっと、この話は15歳にならなくてはな、・・」
ハルト地方では男子は15歳になると元服するならわしであった
大人への仲間入りである
「ねえ、おじいさん、レネはどうして王宮に行かなければならないの?」
「それもまだ早い話だな・・昔からのしきたり・・ということだ・・・・まあ血筋を
太くしてもいけない、細すぎても奴らが困る・・・おっと言い過ぎたわい」
そういうとピオじいさんは、口にほをばった木の実を飛ばしながら高らかに笑った
「ちぇ!じいさんのいじわる」
そういうと
ハルトは腰につけた木製の剣を抜くと、起き上がりざま足下の草をなぎ払った
折からの南風にあおられ......
いきおいよく舞い上がった草は、折からの南風にあおられて
高原の上方へと流されていく
それを見ていたピオじいさんは、にこりと微笑むと言った
「どうじゃ、ハルト、いっちょうやるか?」
そうして杖を、槍のように構えた
「くそ!今日は負けないからね」
ハルトも身構えて答えた
二人は、この高原で、剣術の練習をよくやっていた
ピオじいさんはさしづめ剣術の先生であり、ハルトはその弟子という風景である
ハルト地方の男達は、概して剣術にたけていたが、それは自営の範囲を超えるものではなく
大砲や銃、飛行機械や戦車全盛のこの時代に、たいして役にたつとは
思われなかったが、ハルト地方ではその差別法の為、銃及び爆発物、戦闘機械のたぐいは
全面禁止であった。
ピストルを所持しただけで、永久監獄行きであった
わずかに剣だけが、自治と自衛の為許されているのみであった
政府に対して反乱など望むべくもない、貧弱な武装である
二人ははげしく打ち合った
「ハルト!どうした?そんなもんか?・・・息が上がってるぞ」
「まだまだ・・」
ハルトの太刀筋は、子供のものでありながら、なかなかの出来だったが
木製の剣のことであり
15歳になるまでは真剣を手にすることはできない
ハルトもそのことは解っていて、いつも真剣を手にしたいと夢見ていた
ふと、ハルトが剣術の手を止めた
「おじいさん・・あれを見て!」
見ると高原のはるか下のほうから白いけむりを上げながら
おおきな物体が近づいてくるのが見えた
「巡回じゃ!ハルト剣をしまえ!」
それは、王立国防軍所属の8輪装甲偵察車だった
ハルト地方の住人はつねに監視されているのだ
その偵察車両は、しだいに近づき、こちらへまっすぐに向かって来た