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天然荘の魔女  作者:
裏町の天然荘篇
1/8

若き魔女と疫病神

初めまして


初めての投稿です

なので未熟な点があるかと思いますがご容赦ください

自由気ままに投稿していきたいとおもっております

つんと嗅覚が刺激された。


ゆっくりと意識が夢から現実に戻っていく。

窓から日の光が差し込み、今日は晴天であることを知らせる。

少年はしばらく屋根裏の簡易式ベットでぼーっとしていたが何かの異常に気付いてすぐに起きた。


このにおい…


またやらかしたな


やれやれと少年はベットを降りて洗面台に向かう。

洗面台には夜のうちに汲んでおいた井戸水が桶に入っている。

蓋代わりの布をめくって顔を洗った。

そして顔をふくなり曇った鏡をのぞきこむ。

良く見えなかったのでこすってまた覗き込んだ。


濡れたように黒い髪

白と少し違う黄色い肌

吸い込まれそうなほど黒い瞳


少年はため息をついた。

他人と少し…いや、違う作りをした自分の顔が彼のコンプレックスだった。

太陽に輝きキラキラと光る金色の髪に雪のように白い肌、水のように透き通った瞳、あるいは美しい豊な緑色の瞳…。

そんな中ただ一人の黒黒黒黒…。

周りはその闇に吸い込まれそうな色におびえて離れていくどころかひどい仕打ちを受けていた。

「見て、あの黒い髪に瞳に…近づいたら何かうつされるわよ!」

いつしかそんな声が聞こえてきた。

ああ…俺も美しい金髪で綺麗な青い瞳を持っていたらいいのに…。

少年は常にそう願っていた。


それはおいといて…


簡易ベットの横に位置する古く色がはがれかけた箪笥からジーパンとシャツを取り出して着替えた。

そして少年の父がいつの日か着ていた茶色いジャケットを羽織った。

身支度が終わると急いで下に通じる扉を開ける。

屋根裏から一階に向かうのに一度外につながる階段を使わなければならない。

少年は朝の綺麗な空気を吸い込みながら下に駆け降りた。

そして階段を下りたすぐ目の前の扉をそっと開ける。


何かの香りが少年の嗅覚を刺激した。


甘くもあり、苦くもある、ふしぎな香り。


中は誰かが換気の為に開けた窓から降り注ぐ朝の光に照らされていた。

少年は宿主を探すため、あたりを見回す。

入口から左…大きく質素な木造の机の上に無造作に積み上げられた本と薬瓶、薬材や大きな古びた鍋などがある。

一方入口から右…煉瓦で作られた壁がある。壁は二階に続く階段を備えていた。

少年は二階に上がった。

そこの床に…さまざまな草木が生えていた。

とても大きいとは思えないスペースにぎゅうぎゅうと種類が豊富な植物が芽を生やしている。

煉瓦の壁の一階には土が詰まっており、二階の部分には種類豊富な植物が生を成している仕組みだ。

そしてその二階の壁側に続く石の道が出来ており、そこにはビニールシートで覆われた本棚がある。

ビニールシートは植物の生えている場所にかたどって天井が吹き抜けになっているため雨の日を配慮して取り付けた代物だった。

本棚には古くて表紙の色が剥がれかけている物や新しい物などこちらも種類が豊富である。


(いない…。)


少年はまた階段を下りて行った。


同居人、この店の店主そして師匠である知人は一体何処に消えたのか。


少年が階段を下りた…と同時に奥のドアが開いた。

そして中から娘が出てきた。

少年より明らかに年上だが、明らかに若い娘だ。

花の年齢を迎えている…はずだがその茶色い髪が本来持っているだろう輝きの面影はなく枝毛が目立っていた。

そして化粧っ気のないすっぴんピンの白い肌と挑発的な橙色の目。その瞳はたまに太陽の光に反射して金色に光る。

服は上着が白く中華服のようなボタン留めになっている。下は黒いロングスカートを履いていた。

少年はやっと見つけた…とため息をついた。

そして口を開いた。


「おはようございます、レンカさん」

「おはよう、寝坊好きな弟子であるキクくん」


娘…レンカは皮肉で返した。少年・キクはやれやれとまたため息をつく。


「匂いがひどいようですが…このにおいはラベンダーですか?」

「香油の調合に失敗したんだ。ラベンダーは去年の夏に安かったために大量購入したものをそろそろ使おうと思ったからだ」


レンカは淡々と答える。


「香油?香水なんか作るんですか?」


キクは不思議そうに聞く。


「お得意さんの娼婦館の”妓女”から頼まれて作ろうと思ったんだが…余計なものを入れ過ぎて最終的に嗅覚兵器になった」

「あの…ギジョってなんですか?」

「ギジョは娼婦のことだ」

「ギジョってレンカさんの故郷の言葉ですか」

「そうだ」


レンカはそう言って机の上の散らばった器具を整理し始めた。


この世界はキクが生まれる数年前に国が無くなり世界が一つに統一された。

歴史的には最近のことであり、まだ自分が居た国の言葉や文化に捕らわれている人々も少なくはない。

キクもまだ小さいころ、父親に父親の居た国の言葉や文化を教えてもらっていた。

レンカは自分の多くを語らないが、たまに出てくる不思議な単語から自分の国の言葉や言語があるとキクは考えていた。

それはキクの父から教わったものとは明らかに違った。


「何ぼーっとしてるんだ。弟子の癖に、手伝え餓鬼」


レンカの鋭い声にキクは我に帰った。


「あ、はい」


キクは駆け足で机に向かい本や薬瓶を元の場所に戻してゆく。

それをレンカは横目で見ながら机の横に立てかけていた看板を持ち上げた。

そしてそれをガラスで出来た玄関の前に置く。

ふうっとまだ吸っていなかった朝の新鮮な空気を吸い込み、また中に戻って行った。

看板の黒板スペースには白いチョークでこう書かれていた。


『天然荘』


『香薬、薬湯、お売りします』


これは都心の裏町で噂される「若き魔女」と「疫病神」の話である。




短いですが今後時間が空いたらまた続きを書く予定です

ご観覧頂きありがとうございました!

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