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32.危機

自分は女王に使えている。

それもビックで高慢でクソみたいに美人な女王様だ。

そんな高慢で掃き溜めにつっ込みたい程手に入れたい女王様は、ある事件を闘犬の様に追っている。魔女の拷問を模し、最悪火あぶりにしてしまうあの臭い事件。

別にそこらの人間が1日何人死のうが知ったこっちゃないが、女王様の命だ。いつだってイロイロ調べてやる事は出来る。それにあれの精気は本当に極上品だ。もらえればもう結構な月日を過ごす事が出来る。それも目当てで犬をやっていることなど向こうだって承知だ。

女王様は人間的な関係を求めちゃいない。俺達は忠犬だからな。品性なんかもいらない、ただ命をこなせばうちの女王様はどんな下品なジョークだって笑ってくれるしな。


『…そうだね、ドゥ』


自分の中で自分より少し高めの声がこそりと響く。こいつは俺と同じ肉体を使っていながら、未だにその考えが読めない。俺と同じでありながら、その存在は得てして異質だ。コイツを読もうとするたびに胸にいいしれないざわめきが覆い尽くす。

止めておこう。今は女王様の命を聞くべきだ。

かぶりを振って、手元のPC-今は浮かび上がるデータをチラリと見やっただけだった―と片方の水晶球。この世に無い情報は己の力で手に入れる。この力だけはこの世で自分だけのものだ。

ニヤリと笑みを浮かべたその時、ドゥの瞳に突如驚愕の色が混じった。


『ドゥ!? これは…』

「馬鹿野郎。…まだ本当と決まった訳じゃない。ち…」

『…気をつけろ』


奥で響くトロアの声が同じように焦燥を帯びていた。ガンガンと頭の中に警鐘が鳴る―これはよくない事が起こる前の前兆だ。ギリ、と歯を食いしばり、水晶に再び手を伸ばして感覚を研ぎ澄ます。じっとりと手の平に汗が滲むのが分かる。そのうちに知らされた情報に思わず―ほんの一瞬だけドゥに僅かな動揺が生まれた。


『っ! 駄目だドゥ! 動揺するな! 代われこの莫迦!』


それを感じ取り、トロアが慌てて制しようと叫ぶが、瞬間ものすごい勢いでそれは竜巻に似た音を立てて彼の意識に迫ってきた。あっという間に彼の意識は取り込まれ、「無」がそこに生まれた。意識が消えた瞬間、彼らの身体はその場にドサリと音を立てて崩れ落ちた。




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