<探偵と楽園>
赤いスポーツカーは制限区域と書かれた立て看板の所で停車した。中からディーとソナタが出て来る。
「お前は危ないからここにいろよ!?」
ディーが念を押すように、後部座席のジョナに厳しく言いつけた。
ジョナは不満そうだったが、取りあえず飲んでおくことにしたようだ。
「でも、イオニスを見つけたら必ずすぐ呼んでよ!?」
「ええ、分かりましたから、大人しくしていてください。私達の言うことを聞く、という契約でしたよね?」
ソナタにそこまで言われてしまっては何も言えない。
「じゃあ行くぞ」
沈黙を了解と受け取ったディーが携帯ライトを点けソナタを促し、新界の廃墟の方へと歩き出した。
「ディーさん達も、気をつけて!」
窓を開けてジョナが声をかけると、二人は彼女に小さく微笑みを向けた。
大丈夫。彼らならきっと、イオニスを見つけてくれる。ジョナは祈るような気持ちで、彼らの後ろ姿をずっと見つめていた。
「確かに、ここなら人間は誰も来ないからな。オートマタンが隠れるにはもってこいだ」
ディーが辺りを警戒しながら言った。廃墟ゆえに、かろうじて立っている街灯に電気は通っておらず、真っ暗だ。
ここは土壌汚染を理由に政府が立ち入り禁止に指定した区域だった。人間が長時間いたら何らかの病気になると思われていて、あえて入ろうとする者は犯罪者か自殺志願者くらいしかいない。
政府も復興する気がないのか、何年も放置されているため、街は災害時の爪痕もそのまま荒れ果てるにまかせているのだった。
「でも、こんな所にずっと隠れていても、どうしようもないでしょう?その『白い髪の女』は何をしたいのか、全く見えてきませんね」
ソナタも言いながら、懐にある愛銃コルトガバメントM33を取り出し、マガジンを確認した。
そう、彼らは戦闘を想定しているのだ。イオニスを連れて行こうとすれば、きっとソナタがイオニスの目を通して見たオートマタンが抵抗するだろう。もしかしたら他にも、オートマタン達が一斉に向かって来るということも考えられる。
『アクロード』の二人はひび割れめくれた道路を歩き、半壊し傾いた建物に目を配る。
雑草や木々はまばらに生えてはいるが、生き物は何もいない。
実際にどんな汚染なのか国民に詳細を知らされてはいないが、これを見ると確かに何か良くない物質が含まれているのだろうと思わせる。動いているのは先を照らすライトの光と、彼らだけ。
生き物に見捨てられた土地を『新界』と未だに呼び続けているのは、タチの悪いユーモアだ。
二人は慎重に進み、やがて目的の教会を発見した。
半ば崩れ廃れていても、暗い天に向かって掲げられている十字架はどこか神聖な感じがした。
教会の門に、ソナタが見たオートマタンがいる。
薄い茶髪で、ちょっとキツめの顔立ちの男性型。ごく普通の、わりと最近の型だろう。半袖のTシャツに履き古したジーパンは裾が擦り切れていた。どれくらいここにいるのだろうか?
向こうも彼らに気づき一瞬驚いたが、彼らが近づく前に自ら進んで来た。
「人間が、こんな所に何の用だ?犯罪者だろうが自殺志願だろうが、どこか他の所でやってくれ。ここは俺達の居場所だ」
『居場所』という言葉に、ソナタはおかしな言い回しをする、と感じたが、その思考はディーの言葉で遮られてしまった。
「オレ達はどちらでもない。ここにいるはずのオートマタンを連れに来た。イオニスというんだが」
ディーもオートマタンに劣らない無表情さだったが、オートマタンの男はそっけなく否定した。
「知らない。そんなヤツはいない」
「知らないならいいです、勝手に探しますから」
ソナタが彼を押し退けて行こうとすると、彼はソナタの行く手を遮った。
「俺達の仲間を連れて行かせない」
「……仲間?」
ディーが訝しげな声を出す。
「そうだ。ここは俺達の『楽園』だ。誰にも邪魔されない居場所なんだ」
また『居場所』だ。あの白い髪の女は、『仲間』を集めて、この教会を彼らの『楽園』と刷り込んだのか。何のために?
「ここは国の管轄です。あなた達オートマタンが所有を主張できる土地ではありませんよ。できれば私達も早く出ていきたいので、そこをどきなさい」
ソナタはわざと最後の言葉を命令口調で言った。しかし、彼はどこうとしないばかりか敵意のこもった目で自分達を睨み返してきたのだ。
「良くないですね……」
ソナタは小さくつぶやいた。ディーも同じことに気づいたみたいだ。
オートマタンは基本、人間の命令に逆らえないようにプログラムされている。理不尽に思えるかもしれないが、オートマタンの暴走を防ぐためだ。だが彼はソナタの『命令』を無視しただけでなく、己の意志で反抗する気すら見せたのだ。
彼の電脳はすでに暴走し始めている。彼は自分が納得いかないことであれば、人間を傷つけることもしてしまうだろう。
「オレ達がここを通るのに、お前の許可を得る必要はない。イオニス!いるのか!?返事しろ!」
ディーは彼に構わず、イオニスを呼びながら教会の門へとずんずん歩いて行った。
「待て―――!」
男がディーの腕を掴もうとした時、女が教会の中から出てきた。
「あのオートマタンは……」
ソナタがつぶやく。
白い髪の女のオートマタンだった。門番の彼の姿は薄汚れているのに、彼女は小奇麗な身なりをしていた。
ゆっくりとディーとソナタの前にやってくると、優雅とさえ言える微笑みを浮かべて言った。
「貴方達は誰?こんな所に何かご用?」
「オレ達は探偵だ。依頼でイオニスを連れ戻しに来た」
ディーが彼女を見下ろす。
「あなたが一週間ほど前に連れ出したオートマタンです。ここにいることは分かってますよ」
ソナタも彼女がどんな反応をするのか探るかのように、付け加えた。
彼女は笑顔のまま、オートマタンらしい無機質さで答える。
「私はデュエナ。別に彼を連れ出したりしてないわ。彼が、自分の意志でここに来たのよ。彼がここに居たいのなら、貴方達にだって彼を連れ戻す権利はない」
「残念ながら、その言い分は通りませんよ。私達は彼の所有者から依頼を受けているんです。そもそもオートマタンに、ここに集まっても良いという権利はありません。ここは立ち入り禁止区域です」
「誰も来ないなら、私達がここにいたって誰にも迷惑はかけないし、構わないでしょう?」
「普通なら所有者に迷惑がかかるが、お前の所有者はもういない。多分お前が殺したんだろう」
ディーの言葉にデュエナの顔から笑みが消えた。
「だがそのことはどうでもいい。こんな所に逃げ込んで、どうするつもりだ?」
「『仲間』を集めて、あなた達にひどいことをした人間に復讐でもする気ですか?」
「復讐?とんでもない!」
デュエナは心底意外な顔をした。
「私は彼を憎んだりしたことなどない。むしろ彼を愛していた。ここにいる皆そうよ。愛していたのよ、彼だけを!他の人の所になんて行きたくない!だから私達はここに来たんだわ。私達は愛する人との思い出以外、何も望んでない。そっとしておいて欲しいだけなの」
「愛していたですって?それはプログラムのせいです。『所有者に忠実』ということを愛だと思い込んで勘違いしているだけです」
「どうしてそう言い切れるの?私がオートマタンだから?オートマタンに『愛』は生まれない?」
「それは……」
ソナタは言い淀んだ。
『愛』というものの定義は説明できるが、それが感情である以上、本人にしかその有無は判らない。進歩したオートマタンの感情システムに『愛情』が生まれないという確証もない。
「所有者がいなくなったオートマタンは、記憶を消されて処分されるか再利用されるかだ。俺達はデュエナのおかげでそうならずにすんだんだ。ただ一人の所有者だけに愛を捧げたい。俺達がそう思っちゃいけないのか?」
門番のオートマタンが言った。
「ミゲル……」
デュエナにミゲルと呼ばれた門番が続けた。
「ここにいれば俺達は企業に連れ戻されたりしない。所有者を失った悲しみを知る俺達だけの『楽園』なんだ。どうしてそれを奪おうとするんだ」
「……分かったよ、そんなにここにいたいならいればいい。お前達のことには関与しない。オレ達はイオニスさえ返してもらえればいいんだからな」
ディーが少し彼らに同情したかのような言い方で、譲歩した。
本来ならば通報すべきだが、まあそこまでする義理もないので、それでいいかとソナタも納得する。
しかしミゲルは承諾しなかった。
「『仲間』を連れて行くなんてダメだ!俺達は唯一お互いの『愛』が解る仲間なんだ!イオニスを町に戻したら、彼は廃棄されてしまう。そうなると分かっていて『仲間』を渡す訳にはいかない!」
「何を言ってるんだ?このままここにいたって、お前らはメンテも受けられない。動けなくなるまでここにいるつもりか?」
「そうよ」
デュエナのはっきりした声が響いた。
「私達は死ぬまでここにいる。死ねば彼の所に行けるかもしれないもの」
彼女の目はもはや二人を見ていなかった。
「やはり、電脳に異常をきたしているようですね」
ソナタの目が細められた。右手をいつでも懐に伸ばせるように意識する。
「くそッ、イオニス!!」
ディーが教会の方へ駆け出すと、ミゲルがディーの前に回り込んだ。
「行かせない!」
ガシャッと両手を震わせたかと思うと、関節が外れ腕が伸び、指も鋭く長くなっていた。
「お前―――!」
その変化にディーは驚きを隠せなかった。元々戦闘タイプであったはずがない。ならばこれは―――。
「自分で自分を改造したのさ。ここを守れるようにな」
カタリ、とミゲルの背後で音がした。
外の異変を感じたのか、イオニスが教会から出て来たのだ。
「イオニス!オレ達は探偵だ!」
「ジョナに頼まれて、あなたを連れに来たんですよ!帰りましょう!」
ディーとソナタが呼びかけると、イオニスはハッとした顔になった。
「ジョナ……」
とても懐かしいものを思い出すかのように、彼女の名前を呼ぶ。
「そうです!あなたのことをとても心配しています!彼女のお世話をしていたなら分かるでしょう!?」
イオニスの顔にためらいが浮かんだ。それを見て、ディーはまだ彼には説得の余地があると踏んだ。まだ彼はデュエナやミゲルのようにはなっていない。
「イオニス、本当にあの子のことを思うなら、帰るんだ!あの子はずっとお前を待ってる!」
「騙されるなイオニス!こいつらと一緒に帰ったって、廃棄されるだけだぞ!」
ディーがミゲルの脇をすり抜けようとすると、ミゲルが長い腕を彼の足元に叩きつけてそれを阻んだ。
「どうしても行かせない気ですね」
ソナタが銃を抜く。
「!」
デュエナがソナタの腕に飛びつこうとした。さっと体をかわすソナタ。
「おやめなさい、戦闘プログラムでも電脳に入ってない限り、私に立ち向かっても無駄ですよ」
「……そうかもしれないわ。でも、私はここを、私達の『楽園』を守ってみせる!」
するとデュエナは普通のオートマタンとは思えない素早さで、ソナタに飛びかかった。
「やめて!やめてください!」
イオニスがたまらなくなって駆け寄って来たが、
「来るな!ライトを頼む!」
とディーに制止されて足を止め、投げて寄こされたライトを取った。が、どうしたらいいか分からず取りあえず彼を照らしておく。
ミゲルとデュエナは、製造時に組み込まれていて特殊な手順やプログラム以外では外せないはずの、人を傷つけないために設定されたリミッターを自分で外したのだ。
ミゲルの腕がしなりながらディーの頭上に振り下ろされる。ディーはそれをギリギリで避けながら、すかさず腕を絡め取った。そのままの勢いでミゲルを投げ飛ばす。
「ああッ!」
ミゲルは攻撃をかわされたデュエナにぶつかり、彼女を下敷きにして倒れ込んだ。
慌てて起き上がり、ディーに向き直るミゲル。
ディーは挑発するかのように、鋭い目で彼を見据えている。たとえ辺りが暗く見にくくても、彼の才能とも言うべき戦いの勘が、敵の攻撃を正確に察知していた。
デュエナも起き上がったが、後ろからソナタに銃を突きつけられてしまい、それ以上動けなかった。
「大人しく見ていることですね。いくら自己改造したといっても、所詮付け焼刃でしかありません。純粋の戦闘用オートマタンでない限り、ディーの敵ではありませんよ」
ミゲルは双方向から両腕を繰り出した。しかしディーは左の腕を回し蹴りで踏みつけ、右腕を拳で弾いた。彼のブーツには鉄板が、グローブの指部分には鉛の粉が仕込んであるので、普通のオートマタンの外装くらいなら簡単にダメージを与えられる。
ミゲルの左腕は潰れてしまった。
「くそッ!」
それでもミゲルは潰れた左腕でディーの足を掴んだ。
「!」
そして右手の爪でディーの頭を突き刺そうとした瞬間。
銃声が響いてミゲルの右腕が肘から吹っ飛んだ。
「なッ!?」
ソナタがこちらに銃口を向けていた。暗闇でも彼の義身躯の右目はちゃんと見えているのだ。
「電脳を撃ち抜かれたくなかったら、もう止めなさい」
「うるさい、うるさい!お前らさえ来なければ、俺達は幸せだったんだ!お前達なんか殺してやる!」
「ミゲル、ダメです!」
イオニスが叫んだが、ミゲルは耳を貸そうとしない。
電脳の暴走だ。
ミゲルは破壊された腕も構わずめちゃくちゃに振り回した。そんな無鉄砲な動きは、今まで何度も戦闘タイプのオートマタンと戦ってきたディーにとって、子供の喧嘩程度にしかなっていない。
ディーはミゲルの懐に潜り込んで腹に渾身の一撃を叩き込み、前かがみになった彼の後頭部にきつく握り締めた拳を打ち下ろした。
ミゲルの頭部は破壊され、彼はもう動くことはなかった。
電脳が狂ってしまった人形の末路だった。
「ああ…、なんてことを……!」
デュエナの顔が苦悶に歪む。
その時、
「イオニス!」
この場にいるはずのない声がした。
「イオニスでしょう!?」
「ジョナ!」
イオニスは幻でも見たかのように驚いていた。
ジョナが門のすぐ側まで来ていた。
「ジョナ、どうして来たんだ!?」
ディーも焦った声を上げる。
「危ないですから下がって!」
でもここまで勝手に来てしまったジョナが、イオニスを目の前にして言うことを聞くはずがない。
「イオニス!探したんだから!」
ジョナは全力でイオニスに駆け寄った。
ぶつかるようにイオニスにすがりつくと、泣きながら気持ちを吐き出す。
「イオニスのバカ!どうして黙っていなくなっちゃうのよ!連絡もできなくなっちゃうし、誘拐されてどっかに売られちゃったのかもって、すごく心配したんだからあっ!ずっと一緒にいるって言ったくせに、もうわたしのこと嫌いになっちゃったの!?」
「ジョナ…、大丈夫です、泣かないで……」
イオニスはうろたえながらも、どこかホッとしていた。
「あなたのことが嫌いだなんて、そんなことありません。ただ私は……」
「あなたがもうすぐ動かなくなってしまうかもっていうのは、わたしも解ってるわ。だからって勝手にいなくなるのはおかしいでしょう!?」
「私は、あなたを悲しませたくなかったのです。長くいればそれだけ別れが辛くなりますから」
「勝手にいなくなっちゃう方が悲しいわよ!」
ジョナは必死に涙を拭いて落ち着こうとした。
「わたしは、イオニスのことが好きよ。だからあなたの寿命がきてしまうのはとても悲しい。でも、イオニスの最後の瞬間まで一緒に過ごせたら、わたしは悲しくても幸せだと思うの。…解る?」
イオニスの目を見上げて、言い聞かせるようにジョナは語った。
イオニスはそんなジョナを見つめ―――、何かを悟ったような気がした。
「ジョナ、ありがとう……!」
イオニスはジョナを抱きしめた。
「…やれやれだな」
ふっと安堵の息を吐き、ディーがつぶやいた。
ソナタにもこれでやっと丸く収まるかと思われたが、そうはいかなかった。
デュエナがゆらりと立ち上がる。
「ずるいわ……」
「え?」
全員がデュエナを見た。
「ずるいわ、あなただけがここ以外に幸せを見つけるなんて……!」
イオニスは哀れみを込めた目でデュエナを見つめ返した。
「デュエナ、もう止めましょう。ここにいる仲間達はもう壊れてしまっている。あなたが『愛』に気づかせてくれたことには感謝しています。ですが、このやり方は間違っていたのです」
「そんなことない!ここは私達『愛』を知るオートマタンの『楽園』なのよ!」
「違います」
イオニスは悲しげに首を振る。
「ここは壊れた人形達の墓場です」
その一言で、デュエナの中で何かが完全に壊れた。
「許せない…あなただけが愛する人といられるなんて……私の愛した人はもういないのに……、あなただけ!」
デュエナは不意にイオニスからジョナを引き剥がし、その首に手をかけた。
「きゃあっ!」
「ジョナ!!」
「動かないで!動くと、この子の首をへし折るわよ」
デュエナがジョナを捉えたまま皆と距離を取った。
まだ手に力は入っていないものの、ジョナの目は恐怖を訴えている。人に危害を加えるオートマタンと出会ったのは初めてだろうし、普段は思ってもみないことだけにショックが大きいだろう。
「止めてください。私があなたの言う通りにすれば、ジョナを放してくれますね?」
イオニスが一歩前に出て、彼女を刺激しないよう、穏やかに言った。
だがもう、デュエナの電脳はまともな思考を導き出そうとはしなかった。
「いいえ……この子は放さない。このまま首を折るわ」
「デュエナ!」
ディーが警告の声を発した。ソナタも止めるよう説得してみる。
「それ以上はもう引き返せませんよ」
「帰る?どこに帰るというの?私の帰る場所なんてとっくにない。私の居場所はここだもの」
彼女は虚ろに笑った。その目はもう目の前のディー達を見てはいなかった。
「この子を殺せば、イオニスはここに残るかもしれないわね。そうすれば私達と同じ、愛する人を亡くしたことになる」
「イオニス……!」
ジョナが見開いた瞳に涙をにじませる。
「デュエナ、止めてください!」
じり、とイオニスがデュエナに近づいた。
デュエナの手に力が入った―――と思う間に、ディーが腕時計型の装備からワイヤーを射出しデュエナの首に巻きつけ、引っ張った。
「くっ!?」
手が緩んだスキにジョナはイオニスのもとへと逃れる。
「イオニス、許さない!」
ジョナを追うようにデュエナが少女へ腕を伸ばし―――。
ひとつ、銃声がしたかと思うと、デュエナの全身から力が抜け、文字通り彼女は人形のように崩折れたのだった。