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実は極悪カップル(回想2)

「それで?」

「玉城楓、君は常に十位以内に入る優秀な生徒だ」


 優香が促すと、副委員長がじっと私を見てきた。

 いや、それほどでも……


「遊佐には補習も必要になる。君は部活動にも入っていないようだし、塾にも行っていなければ、アルバイトもしていない、要するに暇人だろう? そんな暇な優等生は君くらいしかいない」


 ひ、暇人?

 今、この人、私のこと、暇人って言った?


「暇じゃない! 帰ったらテレビをいっぱい見るの!

「それを暇人だって言うんだ!」


 カッチーン。

 何で、今日、初めて話すような人に暇人とか、言われなきゃいけないの!?


「あんた、楓の趣味馬鹿にしてると、痛い目に遭うよ?」

「いいや、塾に通う僕たちからしたら十分に暇人だ! 実にたるんでいる!」

「うっ……テレビから学ぶことはいっぱいあるの!」


 アニメもドラマもバラエティだって大好き、ニュースだって見てれば、誰との話題にも困りません!

 結構誰とでも何かしら話を合わせられる自信はあるのです!


「聞いた話によると、君は実に低俗なDVDばかり購入しているらしいじゃないか」

「低俗?」


 委員長が首を傾げる。

 うん、でも、私は副委員長が言いたいことがわかってしまった。


「B級洋画馬鹿にすんな!」


 この際、何で副委員長が、私がB級洋画のDVDを買い集めていることを知ってるのかはどうでもいい。


「下品な言葉を使って、何でも破壊すればいいと思ってる、これを低俗と言わずとして何と言うか!」


 聞き捨てならない!


「破壊の美学がお前なんかにわかるか!」

「わかりたくもない! あんなものばかり見ていては、いつか犯罪を起こすんじゃないのか?」

「非現実的なワイヤーアクション、銃撃戦、カーチェイス、派手な爆破にムキムキマッチョ!」


 惜しげもなく莫大な制作費を使ったのに、あんまりヒットしなかった感が最高なのに!


「あんたさ、頼む気あんの? ないの? 楓に喧嘩売りにきたの?」


 そうだよ。私、お願いされてたはずなのに!


「玉城さん、ごめんね? でも、もう玉城さんしか頼れる人がいないの」

「少し言い過ぎた。是非、お詫びにそのロールケーキを食べてくれたまえ。君の為に買ってきたんだ」


 委員長は申し訳なさそうにしてるけど、副委員長にはやっぱり喧嘩を売られてるとしか思えない。


「副委員長さ、本当は嫌がらせに来たんじゃないのぉ?」


 優香様の言う通りにございます。


「嫌がらせに一本二千円もするロールケーキなんか買うか!」


 やっぱり、ここのお店高いんだ……うげっ、ケーキに二千円とかありえない。


「つまり、それが自分達を守る値段ってわけ。随分とお安い体だね」

「好きなだけ食べていいのよ? 丸かじりしてもいいわ。私も昔っからロールケーキを一本豪快に食べてみたいなんて思ってたの――玉城さん?」

「……ロールケーキ、嫌い」

「は?」

「私はロールケーキが大っ嫌いなの!」


 ロールケーキなんて大嫌い!

 こんなのもの朝っぱらから出してきたあげくに、一本丸かじりが夢なんてどうかしてる!


「リサーチ不足だったねぇ」

「なっ……ケーキが嫌いな女の子なんているはずがないわ!」


 委員長さんは言うけど、いるはずないなんてことはない。


「残念、ここにいる玉城楓嬢はケーキ嫌いのありえない女子高生なわけで」


 そうここにいらっしゃるわけですよ。ケーキ嫌いのありえない女子高生が。

 ロールケーキに限らずケーキが嫌い。何が嫌いかと言われればふわふわのスポンジと生クリームが。


「そんな……」

「本当に頼む! 君しか頼れないんだ!」

「今度は好きな物御馳走するからお願い!」


 何で、この人たちはこんなにも必死なんだろう。


「一応、わざわざ、こんな賄賂まで買ってきてお願いしてるわけだから、聞いてあげよっか?」


 優香さん、あなた、ロールケーキ食べるつもりですね?

 もう貰ったものだから、食べるつもりでしょ?

 自分の胃袋に納める気満々ですよね?

 そういうオーラ出てますから!


「遊佐さんってどういう人なの?」

「ゆ、遊佐君は……」


 優香のオーラに圧されて聞いてみたら、委員長が口ごもった。


「知らないって正直に言っちゃえば? だって、あの人、全然授業出てないし」

「君の方がよく知ってそうじゃないか」


 二年F組広報部(実際そんな部はないんだけど)の優香様に、何と愚かな……!

 この人は超広域のアンテナ持ってるんですよ。

 おまけにスピーカーっていう人種。この人に秘密を知られたらどうなるかわからないって言われてるぐらい。


「まあ、あたしはね。でも、悪い噂は委員長たちもいっぱい知ってるよね?」

「い、いや、まさか、そんな……」


 悪い、噂?


「正直に言った方がいいんじゃない? 後から契約違反だってあたしが煽って吹っかけちゃうかもしれないから」


 怖い!

 味方のはずなのに、私でも時々優香が怖くなる。それはとっても頼もしいってことでもあるんだけど。


「…………」

「…………」


 黙り込む委員長と副委員長。まあ、無理もない。絶対に何があっても味方宣言をされてる私だって怖いんだから。


「じゃあ、あたしが言おう。遊佐武瑠、十八歳、白っぽい金髪に獣のような目つきの、通称……」


 きっと、今、優香の頭の中では、その遊佐さんのファイルが開かれているんだろう。

 すると、二人は慌て始めた。


「か、彼は留年して、うちのクラスになったんだ」


 副委員長が慌てて話し始めたけど、それはさっきも聞いた。


「そのダブりの理由ってのがさぁ」

「びょ、病気とかじゃないんだけどね……」


 すかさず、口を挟んだ優香に今度は委員長が大慌て。

 そりゃあ、病気じゃないでしょう。

 何だかよくわからないけど、虎とか呼ばれてる人なんて、怖いに決まってる


「それで、一度も授業に出てきたことがないんだよね?」

「学校には来てて、いつも立ち入り禁止のはずの屋上にいるらしいのだけど……」


 学校には、来てるんだ……しかも、屋上。不良の聖域的な?


「って、それだけ?」


 全然、詳しい話じゃない。結局、最初に聞いたことの繰り返し。

 不都合な事実を耳に入れたくないっていうのが、見え見え。


「じゃあ、彼のわっるーい噂の数々、聞いちゃう?」


 優香がニヤッと笑って、委員長と副委員長の顔色が悪くなる。

 聞いちゃったら、断られるのがわかってるんだ。


「まぁ、いじめるのはここまでにして、折角賄賂まで持ってきたんだから引き受けちゃえば?」


 何をおっしゃいます、優香さん。

 さっきは私の身を案じてくれたじゃない!

 しっかり、ロールケーキ持っちゃってさ!


「でも、受け取ってむぐっ……」


 私は受け取ってない。

 私は受け取って……


「はーい、一口受け取った」


 うぇっ、気持ち悪っ。私は優香のペットボトルのお茶を奪い取って一気に流し込む。

 ごっくん。


「優香こそ私をいじめたいの!?」

「大丈夫大丈夫、楓ならできるって」


 いや、何、その根拠。さっきはあれだけ私を守ろうとしてくれたじゃない!


「そういうわけでこの件はこの瀬山優香が責任もって玉城楓に遂行させます故……いっただきまーす!」


 わしっと、優香は両手でロールケーキを掴んで、大きな口を開けた。


「わ、ワイルド……」

「君の口はブラックホールか……」


 委員長も副委員長も唖然としてる。

 あっと言う間にロールケーキは優香の中の宇宙に消えていった。

 そう、こんな時間からロールケーキ一本消失させられるのは優香しかいない。


「じゃあ、玉城さん、お願いね?」

「頼んだぞ、玉城楓」


 二人は笑顔で、絶対に断れない空気を感じたわけで……

 まあ、適当にやるしかないか。


「ああ、そうだ。もう君しかいないと思っているわけだが、君が失敗した時には……ロールケーキ代を請求するとしようか」


 お、鬼!

 一本二千円もするロールケーキ買うくらいなら、DVD買うもん!


「まあ、昼休みにでも行っておいでよ」


 こんな無責任なことを優香に言われちゃったりして、今に至る、みたいな?

 まあ、まったりお昼を食べて、どうにか逃げようと思ってたら全部見透かされて、追い出されたんだけど。

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