エピローグ
翌日のお昼、優香はすっかり不機嫌だった。
眼光鋭く遊佐さんを睨んでる。
そう、私達の教室に遊佐さんがお昼を食べに来たわけで。
「マジなんだな。その色気のねぇ弁当」
遊佐さんは勝手に椅子を用意して、私の隣に座って、優香のお弁当を覗き込んでる。
屋上にはもう行かないって約束したから。今日は、クラスの方で食べるって言ってたはずなんだけど……
お弁当だって、朝、教室に渡しに行ったし……
「何で、あなたがいらっしゃるんです? 楓のストーカーだった遊佐さん」
「す、ストーカー!?」
優香の声はトゲトゲしてて、私もちょっとこわいくらい。
って言うか、何、その話?
「誤解を招く言い方してんじゃねぇよ、二重人格蛇女。付き合ってんだから、当然だろ?」
「あの、遊佐さん、何で優香の二重人格知ってるんですか? って言うか、優香、ストーカーって何?」
優香の二重人格は本当の話、何と言うか、本性というか、たまに対兄弟用の優香が出てくる。
兄弟仲が悪いってわけじゃないんだけど、やっぱり言い争いにはなるみたいで。
「それより、何で天真と南城までいるんだよ?」
遊佐さんははぐらかすように視線を彼らに向けた。
南条先輩のニッコリでちゃっかり机と椅子を借りたりして、いつもは二人きりのお昼が何だか大所帯……でもないか。
委員長と副委員長が来たんだけど、やっぱり帰ってった。
「僕達、お父さんとお母さんだからね」
「こいつは他人の邪魔が趣味らしいからな」
天真君はお守りだと肩を竦めた。
天真君は大変だと思う。南城先輩は曲者だし、その点で寧々子先輩はもっと苦労人だと思う。
「ああ、それで、この男がいかにしてストーカーになったかって話だったっけ?」
優香は箸で遊佐さんを指す。いや、ストーカーって違うよね?
「ストーカーじゃねぇ」
「あれは停学くらう前でしたね」
「何で、てめぇがそこまで知ってんだよ?」
遊佐さん、それは愚問です。優香さんは無敵の情報ハンターです。何知ってても不思議じゃあないんです。
「“星高の白い虎”ともあろう人が、一目惚れした女に会いたいがために停学に耐え、会いたい一心で毎日学校に来る。何とも涙ぐましい話ですねー」
優香の言葉はとってもわざとらしい。遊佐さんは眉間に皺寄ってるし。
「それ、マジかよ?」
「へぇ、そうだったんだ?」
天真君と南城先輩が遊佐さんを見る。
「うるせぇ、どうだっていいだろ」
「でも、私、遊佐さんのこと見た記憶ないよ?」
当時からこんな金髪だったら知ってるような気もするんだけどな……
「単に擦れ違っただけだし、当時、楓はとある映画に夢中で、熱心にその話をしてたから、完全に眼中になし」
とある映画って何だったっけ?
大体、天真君か優香に熱く語ってるけど……
「遊佐君、君は意外にロマンティストなのかもしれないね」
「そうなんですか? 遊佐さん」
南城先輩が笑って、私は遊佐さんに確認してみるけど、眉間の皺がより深くなったような気がする。
「……楓ちゃん。その遊佐さんっての卒業しねぇ?」
「遊佐さんは遊佐さんですよ?」
一体、何のことだろう。遊佐さんは遊佐さんなのに。
「だって、俺ら、付き合ってんだし」
「え、そうなんですか!?」
あれ? そういえば、さっきもそんなこと言ってたっけ?
寝耳に水なんですけど!
思い返してもそういうやりとりがなかった。
「そうなの? 天真君」
「俺に聞くんじゃねぇよ」
天真君がちょっと不機嫌になった。
でも、天真君はある意味立会人なんだし……
「俺に熱い想いをぶつけてきたんだ。そりゃあ、つまり、そういうことだろ?」
遊佐さんが当然のように言った。
そ、そりゃあ、なりゆきで告白しちゃったし、遊佐さんも好きだって言ってくれたけど、付き合うって単語はなかったし。
「嫌なのかよ?」
「嫌じゃないです!」
嫌なわけがない。
「じゃあ、呼べんだろ、名前で」
それとこれとは別の問題だと言いたい。
急には無理というか、照れるというか、優香の視線が怖いというか……
「遊佐君、君、ちょっと図々しくないかな? 君より付き合いの長い僕でさえ未だによそよそしい呼び方されてるのにさ。結城も白河もずるいよね」
南城先輩、何か怖いです。名前で、とは言われてたけど、でも、南城先輩ともそんなに親しいわけじゃあ……ないですよね?
だって、天真君は幼なじみだし、寧々子先輩は……何でだろう?
「まあ、テストで結果出さない限り誰も認めないでしょうねぇ? 結城さん」
「意味ありげに俺を見るな、瀬山」
また優香と天真君の間には微妙な空気。ちょっと怖い。
「テストなんかに邪魔されてたまるかよ! んなもん、楽勝だ!」
「あ、言いましたね? 赤点、ダメですからね?」
にぃっと優香が笑った。乗せられたら負けなのに……
「一緒に勉強しましょうね!」
こうなったら、それしかない。私も勉強する!
そう決意したものの、結局、真面目なテスト勉強の仕方もわからない私がどうにかできるわけもなく、あの極悪優等生カップルを頼ることになったのは言うまでも……違った。言いたくないことである。
遊佐さんは赤点こそ回避したけど、本当にギリギリで、勉強の日々が待ち構えてた。
でも、私達はいつの間にか認められて、周囲からバカップルと言われるまでになってしまったわけで……
まあ、これが平和で、幸せ、なのかな?
これにて、純情ロールケーキ完結です。
いずれ番外編なんかも書きたいなぁと思いつつ、同じ高校を舞台にしたオムニバスの一つとして考えていた話なので、他の話もその内書きたいです。
星高の正式名称が何なのか、とか(出してないことに今気付いたなんて言えない)フルーツの名前の女の子とか、猫様の活躍とか…
ではでは、ここまで読んで下さりありがとうございました!




