ヌヴェル24 拝啓オッペン・ハイマー様
拝啓 オッペンハイマー様
原爆の父と呼ぶ方がいいでしょうか?
暑さ厳しい八月となりました。
今でも貴方は覚えているでしょう。忘れたとは言えないはず。愚かなる大統領に対し、“私は手が血で汚れているように感じる“と言いましたよね。あれは、貴方の懺悔の気持ちから出た言葉だと思っています。
いずれ近々降伏するであろう国に対し、何故、あのような恐ろしい兵器を使うことになったのか。
貴方は、“戦況を知らされていなかった。日本が降伏を模索している段階にあることを聞かされていなかった。
戦争を終わらせるために必然なのだと言われたから必然なのだと考えた“と言いましたね。
一方で、シラードの嘆願書(日本が降伏を受け入れるならば、原子爆弾は使用しないことを嘆願したもの)を見た時、貴方は怒りを表した。“日本人の心理について何を知っているというのか?戦争を終わらせる方法をどうやって判定できるのか?”と。
そこには、言い逃れしようとする貴方と狂気に取り憑かれている貴方がいた。
貴方は後に、原子爆弾を開発したことを自負する一方、それを使用したことを悔いる発言をしていますね。
でも謝罪の気持ちはあったのでしょうか?
一生かけても償いきれない謝罪の気持ちが。
貴方はロスアラモスの核実験について、こうも言いましたね。
「私は、ヒンズー教の聖書(バガッド・ギータ―)の一節を思い出した。ビィシュヌは義務を果たさねばならないことを王子に説得し、彼に感銘を与えようとして複数の腕を持つ姿に変わる。そして言う。“われ世界の破壊者たる死とならん” だれもが何らかの形でこれと同じことを考えたと私は思う」と。
こんなことを言う貴方に謝罪の気持ちがあったとは到底思えないのです。
ゼウスから火を盗んで人類に与えたギリシャの神“プロメテウス”のように、貴方は人類に原子の火を与えた。
その火で、貴方は焼かれているのか?
その火に包まれて、貴方は身悶えているのか?
この世の地獄に突き落とされた人々の数多の苦しみの中にいるのか?
貴方は、その目が腐り果ててしまうまで見続けなければならない。
二度と、あのような災禍が繰り返されないように。
二度と、あのような狂った行為が愚かな輩のために起こされることのないように。
暦の上では秋ですが、まだまだ厳しい日が続きます。
どうか暑さにめげず、くれぐれも愚かな行為がなされぬよう未来永劫目配せをくださいますようお願い申し上げます。
敬具
参考文献 オッペンハイマー 「原爆の父」と呼ばれた男の栄光と悲劇 PHP研究所




