第2話「スライムの美少女、風呂を要求す」
「……というわけで、私は人型にもなれるスライムだったわけだ」
銀髪の美少女が、焚き火の明かりの中で胸を張る。柔らかな笑顔と、鋭い眼光。そのギャップに、レインは思わず見惚れてしまっていた。
「いやいやいや、いくらなんでも展開が急すぎるだろ!」
レインは焚き火越しに叫んだ。
「朝まで一緒にいたの、スライムだよ? 透明なぷるぷるだよ!? それがいきなり人間の女の子って、どういうバグ?」
「ふふっ、いいリアクションするじゃん。実は、これが“第二形態”ってやつ。ある意味、今の方が本来の私」
スルルは、ふわっと髪をかき上げる。銀の髪が月光に反射して、美しく輝いた。
「……なぁ、その格好、もうちょっとどうにかならないのか?」
レインは視線を泳がせながら尋ねた。
「なに? 気になるの? えっちなの? この変態」
「いやいや! 変態じゃない! でも! その格好はほぼタオル一枚なんだよ!?」
進化直後のスルルは、魔力で簡易的に布のようなものをまとっているだけだった。ほぼ透けてる。ダメ。これは男子高校生にはダメなやつ。
「ふふん、じゃあ服作ってよ。あんた、“無属性魔法”でいろいろできるでしょ?」
「えぇ……初日でチートフラグ立ちすぎじゃない!?」
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翌朝──
森の奥、小川の近くに簡易テントを張り、二人は一夜を過ごした。
レインはほぼ一睡もできなかった。隣でスルル(女体)が寝ていたせいで。
(あれがスライムだったとは思えん……いや、でも中身はスライム……ってことで、理性保てオレ……!)
「レ〜イ〜ン〜」
「はいぃ!?」
「お風呂。作って」
「え、いや、ここ川だし……って、魔法風呂かよ!?」
「だって女の子だもん♡」
完全に遊ばれてる気がする……でも、仕方ない。
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レイン、初の無属性魔法実戦!
「おれの“無属性魔法”は、いろんな属性を混ぜられるんだよな……よし、火+水で“湯”を発生させて……」
レインは両手を組んで、集中する。
「《融合:火+水》──“温泉生成”!」
ゴゴゴゴゴッ……
小川の脇に、ホカホカと湯気の立ちのぼる天然風呂が現れた。
「……できた! すごい! まるで温泉地の露天風呂じゃん!」
「やるじゃん、レイン。イケメン度アップだわ」
スルルはそのまま湯に飛び込もうとする。
「ちょ、お前っ、服脱いで入るのか⁉︎ 目のやり場が――!」
「レインも入れば? 一緒に♡」
「無理無理無理‼︎」
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その後、スルルからの真剣な告白
「……レイン」
スルルが、湯の中から真面目な顔で語りかけた。
「私はね、ずっと一人だった。最弱スライムとして、モンスターにも人間にも見下されて、逃げて、生き延びてきた」
「でも、レイン。あんたは最初から、私をちゃんと見てくれた。喋れるってだけで驚かず、契約を拒まず、一緒にいてくれた。……だから、私、あんたの“相棒”になりたいって思った」
「スルル……」
「これからの旅、危険だと思う。あんたの力は、世界の連中にとって“脅威”になる。……でも、私がそばにいるから。絶対、守るから」
湯気越しに見えるその瞳は、確かに“仲間”のものだった。
レインは、まっすぐスルルを見返すと、手を差し出した。
「これからもよろしくな。オレの相棒、スルル」
スルルは静かに微笑んで、その手を取った。
「うん。……一緒に、最強になろう」
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次回予告
勇者パーティー「レインを追い出したのは正解だった。アイツ、雑魚だし」
→街中で“温泉を一晩で作った”という噂を聞き、ザワつく勇者たち!
次回、「元仲間、ざまぁのフラグを立てる」お楽しみに!
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