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第十六話「復讐と敵襲」

全力で駆ける。正直、普通に潜っているのじゃ間に合わないことはわかっている。奴等が向上心高いタイプかどうかはよくわからないが、少なくとも、もしあのまま潜り続けていたのなら前までのスピードで潜っても五十階層にすら辿り着けないだろう。正直さっきまでは一位とかどうでもよかったからリミッター解除すらしていなかった。だがそんなんじゃダメだ。正直、リミッターを解除するだけでこんなにも力の差が出るのは訳がわからないが、使えるものは最大限使う。


リミッターを外すことによって上がった身体能力を使い、どんどん潜っていく。正直低階層のボスは敵じゃなかった。大抵が軽く魔力を流すだけで爆散するからだ。その割に落ちる魔石はでかいから結構ありがたい。確実に追いつける保証はないものの、もし追いつけなかった場合は次回にでも()りゃあいい。その場合はリスキルすればいいからそっちの方が釘は刺せるが、バレたらバレたで面倒臭いから今ここで勝負をつけたい。


正直、追いつけば即座に殺せる。ただ絶対的な恐怖を与えてから俺だと気付かせずに殺す。それが最低条件だ。最悪バレても先に殺されたからって言う免罪符があるからまだ、、いや。俺のことを気にしたらダメだ。全てはモモを殺した復讐のため。


そうして走っているうちに五十階層についた。残り約四十分ほど。できれば早く抜けたいが、一人で突破できるほど五十階層ボスは甘くない。奴は火属性の魔法を使ってきている。一気に魔力を流し込んでも魔法で消費されて流し直しになる。正直、あの時は機敏なモモがいたからあんなに早く攻略できたんだ。一人じゃ勝つのは難しいかもしれん。しかしそんなことを気にしている余裕なんて俺にはなかった。正直自分でも驚くくらいイラついてる。早く殺さねばどうにかなってしまいそうだ。策は一つある。それで速攻撃破だ。


俺は勢いよくボスの間の扉を開け、中に入る。そこには先ほどと同じ、人間サイズのアリが立っていた。アリ。ギガントアントとでも言うのだろうか。向こうの世界でも人と同じサイズになれば驚異になると言われている生物である。それが魔法やらなんやらでさらに強化されているんだから手強い。さっきは俺が弱らせたところをモモの一撃で倒した。モモの手柄にする必要もあったし。が、今はもう関係ない。俺は相手がこちらに気づかないうちに羽まで鉄製のダーツの矢を数本作成する。それに壊れないギリギリ程度に魔力を込める。そして一気に頭部に投げつける。魔力で強化してあるそれは、鋭くギガントアントの頭部に突き刺さった。それに悲鳴をあげるが、それだけでは終わらない。突き刺さった衝撃で矢は細かく砕け散る。その破片を込めた魔力ごと操り雨のように降り注がせる。それだけでも充分なダメージになるだろうが、オーバーキルだ。破片に込めた魔力で火を起こす。アリは火に弱い。ライターでアリを燃やしたことがある。そのアリは一瞬で燃え尽きていった。今回も黒焦げになったニオイが立ち込める。少々焦げ臭い。


無事ボスを突破した俺は五十一階層に出る。さっさと探そうと思ったその時、目の前に見覚えのあるやつがいた。俺とモモがNo.1はおかしいと言った先輩。彼の手には血のついた剣が握られていた。ダンジョン内で死んだ魔物は魔力となって消える。血は残らない。なのに血のついた剣を持っていると言うことは紛れもなく。


「あんただな。俺とモモを殺したのは」


そう声をかけると、そいつはありえないものを見るような目でこちらに振り向いた。実際ありえないとは思っていたのだろう。俺もモモも、アルファさんに教えてもらった魔力を抑える技術で魔力総量を隠している。その抑えた魔力を見たやつは俺達が雑魚だと踏んでいたのだろう。


と言うかこいつ一人なのか。モモが音もなく殺されたことから勝手に二人以上の犯行だと踏んでいたのだが、まさかこいつ一人にやられたとでも言うのだろうか。


「なんでお前がここにいるんだ?! 俺は確実に殺したはずだ!」


「急いで潜ってきたんだよ。一人なら別に調節する必要もないし」


「あぁ!?」


その声には明らかに怒気が込められていた。いや、怒りというより恐怖だろうか。こんな速度で戻ってくると思っていなかった俺への恐怖。それの裏返しで精一杯の威圧をしているのだろうか。


「一つ聞かせろ。どうやって俺たちを殺した? 完全に気配はなかった」


「なんでお前なんかに教える義理があるんd」


「教えろって言ってんだ。人の話が通じねえのか?」


俺はそういいながら使役のスキルを発動させる。そうするとそいつは従順に俺の問いに答え始めた。


「俺はスキル、透明人間(インビジブル)を持ってる。使えば気配を完全に消せるスキルだ」


なるほど。だから何も感じなかったのか。インビジブル、透明人間って意味だな。結構強いスキルだ。喧嘩売る相手間違えなきゃ相当な使い手になっただろうが。ひちに喧嘩売っちまった以上買われた時のことを考えてないとは言わせない。俺は使役を解除しながら言った。


「かかってこいよ三下。二度目はねえ」


そういうと、そいつは気配を消す。多分スキルを発動したんだろう。多分あくまで姿を消す系のスキル。だから多分存在自体は透明になれていない。それこそ、存在ごと消えているのなら発生し得ない土埃が立っている。それが存在を消せていない何よりの証拠だ。つまり、“透明”なのであって、“透過”はしない。


ならばやりようはいくらでもある。あたり一面燃やすとか。でもそれだけじゃ生ぬるい。圧倒的な実力差を見せつけて殺す。ならやることは簡単だ。場所を探ると言うのも込めて魔力を全身から発生させる。そうすれば跳ね返ってきた魔力で場所を知れる。蝙蝠の超音波みたいなものだ。勿論、全身から発生させているため、エグい量の魔力消費だ。とはいえ今の魔力はほぼ無限にある。もう問題はない。


幾度か突進攻撃を受けるが、場所がわかってるんだから怖くはない。あいつ剣使ってるけど扱えてない。て言うか何気に剣まで透明になってんだよな。触れてる人まで透明にできるんなら結構有用な能力だが。


「なんで、なんで当たらない」


「お前も見えてるだろ。魔力放出して位置見えてんだよ。まさか魔力見えねえとは言わんねえよな」


まぁ実際見えるとは思っている。それほどまでに大きく魔力を出しているからだ。大して修練していない俺でもアルファさんの魔力くらいは見えたし。さっきからあいつの足震えてるし。モモも奇襲には弱かったんだな。死んだことで精神壊れてなきゃいいが。


「うわぁぁぁっ」


そいつはもう諦めたかのように透明化を切って襲いかかってきた。涙目だし、歪んでるし。そろそろ頃合いか。俺はその手を確実に掴み、腹に膝蹴りを叩き込む。そいつは咳き込むが、その首を俺は掴む。あ、そうそう。忘れちゃいけないのが使役だ。多分使役してる間の記憶は消えるだろうし、これで俺が殺したことがバレなきゃいいんだけど、先に殺してきたのこいつだし情状酌量の余地がなんとかっていって許してもらお。


そのまま締め殺してもいいが、せっかくの機会だ。人間に許容量を超える魔力を流すとどうなるか試しておこう。じっくり、じっくりと魔力を流すとそいつの体は爆散した。最悪だ、全身血まみれになっちった。どう言い訳するかねぇ。


「そこまで! 上帰ってきてねー」


突如として頭に流れたその声は間違いなくアルシャイン先生のものだった。テレパシ能力か何かだろう。さっさと帰るか。





上に戻るとさっき殺した先輩もいた。確実に俺に怯えてるな。これで手も出してこないだろう。


「カストル君。後で話がある」


うげげ。バレてそうな感じだな。許してくれっかね。まぁバレても退学なるとかそんなとこだろ。別にどうでもいい。


「結果は後日伝えるとして、さっさと帰ろうか」


アルシャイン先生がそういう時皆出口に向かっていく。モモはもう意識が戻っていたようで、俺の横に来た。


「カストルさん、何かあったんですか?」


「あー、、ちょっとね」


流石にモモに殺したことを伝えるわけにはいかない。自分のせいで〜とか思わせたくない。あくまでこれは自分でした選択だ。モモには関係ない。


俺たちがダンジョンの外に出たころには少し暗くなっていた。そして随分と風も吹きつけていた。おかしいな、風はまだしもまだ正午くらいのはずだ。暗くなってるはずがない。空を見てみると別に太陽が沈んでいるわけではないことがわかった。太陽は真上にある。紛れもなく正午だ。じゃあなんでこんなに暗く、、そこで気づいた。光がないのはなんかに遮光されてるからだ。それはひらひらとこちらに舞ってくる。手で受け止めてみるとそれは灰であることがわかった。なんで灰が。どっかで火事でも起きてるんかな。


俺は嫌な予感がして校舎の方を見る。それとほぼ同時に爆音が響いた。その発生源は、学園。学園が燃えているのだ。


「は?」


俺は思わず困惑が表情に現れる。なんで学園が燃えて。


「全員聞いて! 学園が襲撃された可能性がある! 魔法やスキルで飛べるものは私に続いて学園に向かい、飛べないものはタビトについていって! 道中敵襲があるかもしれないから気をつけて向かうこと。それじゃあいくよ!」


そう言ってアルシャイン先生は飛び立つ。それに続いてどんどん先輩たちが向かっていく。俺も飛んでいかないとな。そう思うがふと、モモが飛べないことを思い出す。


「モモ、急いで向かうから、俺に身を預けて」


そう言って俺はモモを抱える。モモは滅茶苦茶慌てていたが、俺の表情があまりに真剣だったため、気を引き締めていた。そうして俺も飛び立つ。俺の飛び方は前と変わらず氷を蹴ることによる無茶な飛び方だ。


なんでこんな入学式があった日に。ややもすると新入生が狙いか? もしこれが敵国からの襲撃なら、、俺は嫌な予感を抱えながら学園へと向かうのだった。

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