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第十四話「プラチナクラスと新しいダンジョン」

 入学式前、俺は生徒寮にいた。在学している生徒は全員、寮に入ることになっており、それとは別に教師の寮も用意されている。また生徒寮にも区分があり、市民生徒寮と貴族生徒寮だ。貴族生徒寮の方が設備は良くなっている。かくいう俺の部屋も結構広めだった。公爵の息子、という所があるのかも知れないが、イータとガンマは同室、そしてシロンの部屋もある。実質3DKだ。いっても三人の部屋はそこまで大きくないため計20畳ほどだろうか。


 荷解きを終え、学園支給の制服に袖を通し、入学式へ向かう。流石に入学式に三人がついてくることはできず、ガンマは駄々を捏ねてしまう。あとで構うという約束をし、その場は一旦納得してもらった。そんなこんなで向かっているのだが、周りの年齢がバラバラなことに気づいた。見た目年齢だが、カストルと同じくらいの人もいれば、明らかに20歳を超えている人もいた。そこまで学園のことを知らなかったのだが、もしかすると、年齢関係なく入れるのかも知れない。


 そのまま少し歩いていると後ろから肩を叩かれる。振り返ると、そこにはモモが立っていた。会うのは最後にダンジョンに潜った時だからおよそ一ヶ月ぶりだろうか。俺たちは歩きながら話す。


「お久しぶりです。カストルさん」


「久しぶりだね、モモ。モモも今日から入学?」


「はい。おかげさまで母も良くなって、セリシールさんとメイさんがお金を出してくれて入れることになったんです」


「それはよかった。じゃあ今日から一緒に学ぶ学友だね」


 俺がそういうと、モモは両手を顔の前あたりでひらひらとふり、その言葉を否定した。


「そんな、ボクがカストルさんと友人だなんて恐れ多いです。カストルさんはボクにとってヒーローですから」


「それは学校外での話でしょ? ここでは2人とも一学生。俺は対等な関係で居たいんだけど、どうかな」


「…わかりました。善処しますっ」


 そういうとモモはむふーとでも擬音が出そうな様子で胸の前で手を握りしめる。なんか天然感ありそうなんだよなこの子。愛されやすそうな、そんな感じがする。普通に顔も美形だし、モテそうな感じだ。ただ、まだ年が11ほどのため、悪い大人に騙されてしまいそうで、少し心配だ。


 さて、そうこうしているうちに学園のグラウンド、というよりかはドームだろうか。地面が芝生で中心の奥ほどにはスピーチ用の台のある運動用の場所についた。早く来た順でドームには新入生がきれいに整列しておりざっと見ただけでも百名ほどはいるだろう。多分この後クラス分けも発表されるだろうが、まぁモモ以外に知り合いがいる訳でもなく、そこまで興味はない。


 しばらくしていると、台に一人の女生徒が登る。腰にはレイピアが刺さっており、髪はアルファさんと同じような綺麗な青髪である。顔立ちもどことなくアルファさんに似たものを感じる。まさか血縁関係でもあるのだろうか。いやいやあの亜人趣味+美少女大好きなアルファさんが結婚できてるはずが、、


「諸君、私は風紀委員長のクルサ・アケルナルだ。よろしく頼む」


 嘘だろ。いやいやいや、なんでいるんだ。いや、流石に失礼か。アルファさんも35だ。別にいておかしい年齢じゃあない。それにアルファさんは美人だ。普通にいる、、って35ならなおさらだろ。クルサ先輩どう見ても16くらいだ。どう考えてもあの年齢の娘がいるのはギリ犯罪臭を感じる。なんかマズそうな感覚。いや、考えるのやめよう。あんま人の厄介ごとに首突っ込むもんでもねえや。


「さて、諸君はこの学園が何故存在しているか知っているだろうか。知らない者もいるだろうから今一度言っておく。この学園はこの国を発展させていくために存在している。今、この国は戦争下にある。この戦争に負ければ、我々は搾取され、人間としての尊厳を失うだろう。この戦争、必ず勝たなければならない。全ては国を守り! 我々の尊厳を守るため! その為に諸君にはこの学園で学び、力をつけてもらう。諸君と戦えるのを心待ちにしている」


 クルサ先輩はそう言って壇上から降りた。生徒の間では雄叫びが巻き起こる。確かにあの式辞は効果的だろう。国のためと言いつつ、共に戦うことを期待していることを伝えられてはやる気の上がらない方が稀だ。まぁ俺はどうでもいい。目標なんてとうに決まっている。スローライフだ。それは今でも変わらん。


「凄かったですね、カストルさん。私、あの人の横に立ちたくなっちゃいました」


「ああ、確かにそうだね。下手にくどくど言う式辞よかああいうのがいいんだろうなぁ」


 そう言いつつ、俺とモモは2人で出口に向かう。するとそこでは人だかりができていた。大衆の目線の先には横一列に数枚のプレートがあり、そこにはクラスと、そこに入る生徒の名前が書いてあった。一番左に置いてあるプレートに目をやるとクラス分けの基準が書いてあった。要約すれば、スキルの量及び強さ、適正魔法の多さ及び熟練度、ギルドのランクである。そして、クラスは下から銅、銀、金、プラチナとあり、年齢関係なくクラスが分けられている。おっとなんか嫌な予感がする。そう思いながら俺の名前を探すと、プラチナの欄にあり、その下にはモモの名前もあった。周りからは「有り得ない」だとか、「一年目のくせに」とか驚きとか恨みとか色んなものが混ざった声が聞こえてくる。そういや俺たちセリシールさんとメイさんがいない時とか2人で一緒に潜ってたから俺はSSランクだしモモはSランクだしとかいうエグい能力値になってたんだったな。あー、なんか面倒くさいことになっちまった。俺が渋い顔をしていると、モモがはしゃいだ声で話してくる。


「カストルさん! 私たち一番上のクラスですよ! やりましたね!」


 その笑顔に俺も自然と顔が綻ぶ。ま、なっちまったもんは仕方ないし、精一杯波風立てずに頑張りますかね。




 *




 さて、その後俺たちはクラスにいたのだが、少し騒ぎが起きていた。白髪の男子生徒とクルサ先輩が喧嘩しているのだ。


「だからおかしいだろって。なんで一年目のやつらが2人もこのクラスにはいんだよ。明らかに実力不足だろって」


「いや、厳正なる審査の判断だ。文句なら私だけでなく学園長にも言ったらどうだ」


「もう言ったさ! でもあのおっさんなんつったと思う? 『風紀委員でないお前が知ることではない』って突っぱねやがったんだぜ?」


「なら納得して欲しいものだが、、」


 明らかにその2人の周りの空気はピリついている。なんとなく何で喧嘩してるかは理解した。あまり関わらないようにと思い、2人で後ろの席に座ろうとしたら男子生徒の方に俺たちがいるのがバレてしまい、声を掛けられる。


「なあ、お前らだよな? 一年目の奴らって。本当にてめえらにそんな能力あるのか?」


 俺は無視して席へ向かおうとするが、モモがその言葉に反応してしまう。


「ボクらに聞かれてもなんとも。ただまぁ初対面の人を威嚇しないっていう品性は持ち合わせてますよ」


「初対面の先輩を挑発するっていう品性のなさを見せといてよく言うぜ。まぁどうせクラス内ランキング決めで今日ダンジョンに潜るんだ。そん時にでも本当の実力を見極めてやるよ」


「やってやりますよ」


「やめろタビト! 後輩をいじめすぎだ。ここに来ている時点で実力はわかるだろう」


「だからそれがわかんねぇって言ってんだよ、、って無視すんな!」


「悪かったね、モモ、カストル君。彼、タビト・アルニラムはあれでもこの学園のNo.2なんだが、少々気性の荒いところがあってね。理解してくれると助かる」


 No.2か。確かに魔力量は類稀なものを感じる。垂れ流しているわけでもなく、しっかりと抑制してある。その操作も上澄の方だと思う。


「いえいえ、こちらこそ売り言葉に買い言葉ってやつですよ。喧嘩に乗ったモモも悪かったんですからあまり気にしないでください」


「カストルさんッ! ボクはっ」


「分かってる。腹が立ったのも、守ろうとしてくれたのもちゃんと理解してる。でも、ちょっと喧嘩売り返すには早いかな」


「ほう、やはり母様から聞いた通りの人だな、君は」


「あー、やっぱりアルファさんの、、」


「娘だ。君がお人好しだというのは君が初めてダンジョンに潜った日に聞いた。魔物でさえ殺さないようにしたのだろう?」


「いえいえ、命を奪いたくないだけですよ」


「魔物の命も命を考えているのは君くらいだ。それも‘転生’が関係してるのか?」


 あれ、転生者リンカーネイショナーのことって国家機密なんじゃなかったっけ。アルファさんって意外と口軽いのかね。それともめちゃくちゃ信用してるってことか。


「知ってたんですね。そうですね。向こうの世界じゃぁダンジョンどころか魔物すらいませんから。どんな命でも奪ったら犯罪になりますし」


「ちょっと待て、転生ってなんだ?」


 俺の言葉にタビトが突っかかってくる。こうなるからあんまり話したくなかったんだけども。これで狙われたりしたらたまったもんじゃねぇ。


「あんまり気にしないでください。殆ど関係ないんで」


「余計気になるだろッ!」


 俺の言葉にタビトが咆哮をあげる。うるせえな。


「まぁ、とりあえず今日からよろしくお願いします」


「ああ。よろしく頼む」


 そう言って、俺たちは握手を交わす。なんか若干力が強く込められているような気がするけど。


 その時、突然教卓に女性が現れる。扉が開いた気配はなかった。なんかのスキルだったりするのだろうか。


「お前ら席付け〜」


 その女性は俺たちにそう命じる。そのことからその女性が教師であることがわかった。しかし、なんで急に現れたんだ? そう言うスキルか? 瞬間移動的な。


「今年も君らの担任になったラナ・アルシャインです。初めましての人は初めまして。そうでない人はおはよう」


 なんかすごい配信者的なことを言ってらっしゃいますが。


「えー、今からまたクラス内ランキングを決めるために学園のダンジョンに潜るわけだけど。モモ、そしてカストル・アークトゥルス。二人は別に潜らなくていいよ。二人のランキングは測るまでもないから」


 アルシャイン先生がそういうと、前の方で笑いが起こる。多分、笑ってるのはクルサ先輩とタビト先輩以外だろう。話が耳に入るが、どうせ最下位だとか、そういった話だろう。どうせ俺は気にしない。別に下だろうがなんだろうが。波風立てずに過ごせたら。ただ、モモがやっぱり怒りを露わにしている。ただ、一応堪えてくれているようで、健気だと思う。ただまぁ、俺が貶される分にはいいが、モモが貶されるのは理解できない。そこらの奴らの魔力を見るが、どう考えてもモモの方が操作が精密だ。そんなモモを下位に置くなんて、ありえない。俺もそろそろ文句を言おうかと思った時、アルシャイン先生が口を開く。


「みんな何を言ってるの? 二人はNo.1に置くんだよ?」


 何言ってんだこの人は。タビト先輩は置いといて、確実にクルサ先輩の方が能力値は高いだろ。モモと俺が勝てるわけがない。


「ちょっと待てよ。先公だからってあんまり巫山戯たこと言ってんじゃねえぞ?」


 そう言うのは誰か知らんが一般先輩だろう。


「先生。この先輩が先生に対してタメ語使ってるのは一旦さておき、俺もそれは同感です。なぜ俺たちがNo.1なんですか? そもそも二人をNo.1に置くとはどう言うことでしょうか」


「君たち二人がとても強いことはアケルナル団長からよく聞いている。二人は組み合わされば95階層のボスくらいなら余裕で撃破できるんでしょ? それはクルサにもできないこと。なら二人別々にランキング付けするより、二人でいてもらった方がこっちとしても効率がいい」


「と言っても俺たちができるのはあくまで対魔物戦です。対人戦なんて全くしたことがない。対人戦も加味したら俺たちは最下位と言っても過言じゃありません」


「95階層のボスなんて人型でほぼ対人みたいなもの。だからそこは考えてある。大丈夫だよ」


「それにしたって、今みたいに周りから不満が漏れるんじゃないですか?」


俺はなるべく面倒ごとに巻き込まれたくないのに。そんな自分からしたら真っ当な反論なのだが、アルシャイン先生はキッパリと切り捨てる。


「人からの評価や反応なんて気にしなければいい。一度きりの人生。自分らしく生きてみたらいいよ」


「なら尚更謹んで辞退いたします。私は迷惑ごとはごめんなので」


「ここで断った方が妬まれて迷惑ごとに巻き込まれる気がするけど?」


そう言ってアルシャイン先生はどんどん食い下がる。ただ、言っていることはもっともだ。ここで辞退すれば、何偉そうにしてんだっていじめまがいのことが起こるのは確かだ。それが俺だけならいいが、モモに迷惑がかかるのだけはごめんだ。モモは幸せになってもらわないと困る。今までずっと苦労してんだから。なら最下位にでも、、いや最下位でも舐められるか。ならもういっそのこと全員黙らせりゃいい。


「なら提案があります。私もダンジョンに潜らせてください。それも含めて、、いやそれの結果だけで俺たちの評価をしてください。スキルなんて考えなくていいです。モモもそれでいい?」


「ボクはカストルさんに従いますよ」


「わかった。それでいいよ。ただし、100階層のボスだけは気をつけてね。次元が違うから」


「わかりました」


そう言って俺たちは教室を出発し、ダンジョン攻略に挑むのだった。

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