第十一話 「勉強と戦地」
明けましておめでとうございます。時が経つのは早いもので今月で投稿を始めてついに半年。当時から読んでくださっている方も、途中から読んでくださっている方も、今年もご懇意にお願いします。
更新日変えます!コロコロ変えて申し訳ないんですけども、僕も来年度から中学3年になる訳です。中高一貫校だから受験はないけど、行事が大量発生するので(pixivを始めたこともありますしね)不定期投稿とさせていただきます。
さて、ダンジョン攻略の翌日。俺は自室にいた。そこにはアルファさんがいた。それは俺に常識を教えてくれるためだ。勿論、先に抗結核薬、エタンプトールも渡しておいた。それがこの世界での肺炎薬であることも説明した。
「さて、今日からは座学だ。今から私のことはアルファ先生と呼びなさい」
「はいセンセ!」
「よし。今日は国全体のことを教えていこっか。この国、リクサンタナ王国の王はウォルフ・スピカ様だ。彼女はエルフで、この国の王は代々女性のエルフが務めている。これはこの間も言ったよね。そして、陛下を守るのが、近衛兵だ。近衛兵長は王兄が代々務めている。今はロー様だね。そして、副兵長は私が務めている」
「筆頭魔術師の父上が勤めているわけではないんですね」
「そう。実際、実力では多分私の方が上だよ。これは秘密ね。近衛兵のほかに軍は四つの区分があるんだ。魔術団と騎士団、魔術騎士団と精霊騎士団。魔術団には精霊術者も含まれているんだ。尤も、人数がとても少ないけどね。この軍の中で精霊騎士団は一番少なくて百人ほどしかいない。けど、全員粒揃いだ。そして他の魔術団と騎士団、魔術騎士団は精霊騎士団に所属していない兵士全員が所属している。人数減少などによる増兵要請に応じて所属団を変えられるようにね。そして、この三つは全て同列と言うわけではなく、ちゃんと上下関係がある。魔術騎士団は二つの技能を合わせて使うわけだから、一番強い部隊にならなければならない。そしてその他のふたつがその下というわけになる。ただ、個々人の能力がその通りかというとそういうわけでもない。多分、君の父シグマなら魔術騎士序列二位に勝てるだろうしね」
「はいセンセ! 質問です。魔術騎士の一位は誰なんですか?」
「いい質問だ。それはね、私だよ。国内最強戦力。国有数のSSS級冒険者」
「だからですか。ダンジョンで魔物が寄って来なかったのは」
「そういうことだね。じゃあそのままダンジョンについて説明しようか。大雑把なところはギルドで言ったよね。じゃあ次は魔物についてだ。ダンジョンにいる魔物は魔力でできている。死んでも魔力に戻るだけで、また魔物になる。ダンジョンは深い階層に行くほど魔力は濃くなる。そして、その魔物から、たまに魔石というものが落ちる。これはのドロップ率は魔力の濃度に関係していて、魔石は武器とか装備の原料になる」
「ちょっと待ってください。じゃあ俺が戦った時のスケルトンからは落ちなかったんですか?」
俺がそう聞くと、アルファさんは一瞬聞かれたくないことを聞かれたような、そんなやばい顔をして、そして舌をぺろっと出した。
「悪いねぇ。売らせてもらっちゃった」
「いくらですか?」
「一つ小銀貨二枚」
「何個ですか?」
「十」
いやいやいや。大銀貨二枚分かよ。しかもあの量でそれだけ落ちるんだったら深ければ確定で落ちるようになるんじゃないか? そうすりゃ荒稼ぎだ。よーしセリシールに提案してみよーそうしよー。
「結構儲かるもんなんですね」
「ああ。ダンジョンに潜る冒険者の目的の大多数がこれなんだよね。ただ残機が無くなり死ぬ危険もあるわけだから丁度いい塩梅だよ。残機は一ヶ月に一つしか買えないからね」
それからもしばらく話は続いた。世界のことから国のことまで。その国の話の最後。アルファさんはこんなことを話し始めた。
「あと話していないことといえば戦争のことかな」
「戦争?」
「うん。今この国は隣国のツヴィトーク帝国と戦争してるんだよね。でも理由がわからないからこっちから攻め込むわけにもいかないし、最近は国境で膠着状態が続いてるよ」
一応セリシールの話で戦争中なのは知ってたが、向こうから攻めて来てんのか。攻めてこないのはもしかしてアルファさんが抑止力になっていたりして。
「ただ向こうの軍がおかしいんだよね。全員幼い半獣人なんだ」
「は? まさか殺してないだろうな?」
俺はその頭のおかしい事実に、思わずタメ口になってしまう。多分、魔力も大量に放出されていると思う。するとそれに対抗するようにアルファさんも魔力を放出してきた。そして口を開きかけたその時、アルファさんの服のポケットが赤く光った。
「出動要請か。丁度いいや。カストル君も一緒に来て。今から戦地にいきます。そして、状況を見てもらう。言うなれば現地学習だ。私はそこで君が何をしようと、看過しないからね」
アルファさんは遠回しに好きなようにしろと言ってくれている。ならやってやるよ。
「いくよ」
アルファさんはそう言って窓から飛び出した。アルファさんが落ちてしまうと危惧したがそれは杞憂に終わった。アルファさんは宙に浮いていたのだ。まあつまりは風魔法なのだが、洗練された魔法のため、俺がパッと見様見真似でできるようなものではないというのは一目で分かった。
ならば俺は俺の方法で飛ばせてもらおう。俺は異様に尖ったスパイクシューズを作成し、それに履き替える。そして、窓から飛び出した。落ちる寸前、俺は足から水魔法を発動し、氷を生成した。そして、リミッターを解除し、それを砕きながら軽く飛び跳ねた。それを繰り返すと、まるで空中を歩くように移動することができた。それの原理はすぐにアルファさんにバレ、心配された。
「それ下の人大丈夫なの?」
「問題ないですよ。粉々に砕いてるので当たっても感じませんよ。感じてもすぐに溶けるのでちょっとした雪みたいなものです」
「私も今度試してみようかな」
「いやいや風で飛べる方がいいでしょ。そっちの方が楽ですよ」
「そっか。着いてきて」
そう言ってアルファさんは飛んでいった。俺も遅れるわけにはいかない。俺は走り出した。
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俺たちが戦地に着いた頃、荒れた土地は動乱に包まれていた。兵士、魔術騎士団員の目線の先には 謎の怪物がいた。仮面をつけた三つの頭、一つにはツノが、一つにはケモミミが生えていた。そして六本の片手剣を握る六本の手。足には何も履いておらず、これも六本だった。その背中には蝙蝠のような羽が生えていた。なんだこいつ。魔物っぽいっちゃ魔物っぽいが、そんなちゃちなもんじゃないようにも見える。こここそ鑑定の出番か。
鑑定したけど名前が文字化けしてて読めねぇ。でも長さ的に名前なしってわけじゃないんだな。鬼人と半獣人と吸血鬼の突然変異種。状態異常に突然変異があるから人工的なミュータントだな。
「なら解除もできるよなぁ!」
俺は言いながらミュータントに突っ込み、その体に触れる。そして解除を発動するが、その体が治っていくことはなかった。俺が呆然としてその場に静止していると痺れを切らしたようにミュータントが切り掛かってきた。
「チッ」
俺はやむを得ず、ミュータントから離れた。そして少し離れた地面に着地すると、アルファさんが隣に来た。
「どうしたの?」
「解除で直そうとしましたが効きませんでした。普通の状態異常なら解除が効いていいはずです。ここから考えられる可能性は二つ。単純に解除が効かない状態異常かもしくは」
「解除は一度変化してしまった物には効かないか、だね?」
「ええ。まじでエスパーかと疑うくらい察する能力高いですね。どうにかできないもんっすかね」
俺が思考を巡らせていると、ミュータントが突如、声を発した。
「О, пожалуйста. Убей меня」
これは、露西亜語か? なんでこの世界に露西亜語があるんだ。訳がわからねぇ。
「お願い、殺して、、か」
「何言ってるの?」
「ミュータントが言った言葉ですよ」
「私には雄叫びにしか聞こえなかったけど。良く判ったね」
「向こうの世界の言語だったんすよ。勉強しといて良かったですよ」
死ぬことがあのミュータントの願いか。死を願うってことは自ら望んだ変化ではなかったんだろうな。望んでたとしても、こんな結末は望んでねぇか。
「アルファさん。伝言頼みます。もしあのミュータントに攻撃を仕掛けようとする団員がいたら言ってください。『あのミュータントは公爵シグマ・アークトゥルスの息子にして、B級冒険者のカストル・アークトゥルスが討伐する』、って」
「判った。呉々も死なないように。武運を!」
俺はその言葉を背に、ミュータントに向かって駆け出す。そして、昨日から格納庫に入れておいた日本刀を取り出す。その勢いのまま、ツノを思いっきり切りつけた。しかし、それは鉄柱と叩いたような感覚で、ダメージを与えられている様子は全くなかった。
鬼ならツノが弱点だろ! 威力が足りねぇのか? できればツノは傷つける程度に留めておきたい。鬼にとってツノはマジで大事だろう。だから折ったり切ったりしたくない。それにできれば生かしてやりたい。ただ、殺さなければ助けることはできないのだろう。こいつを作った奴はイカれてやがる。
俺が次の攻撃に移ろうとした時、ミュータントの剣が全て俺に降りかかってきた。それを全て受け止めることは当然できず、左肩を少し切りつけられてしまった。これくらいなんてこたぁねぇ。このまま反撃に! しかし、その時俺は吐血してしまった。内臓を切りつけられた憶えはない。ならなんで吐血をしてるんだ? 俺が頭の中でぐるぐる考えていると、その吐血はすぐに治った。なんだったんだ一体。
俺が受けた攻撃は一回。左肩を剣で切りつけられた時だ。この時になんらかの影響を受け吐血したのだろう。しかし、ミュータントにはスキルが一つもなかった。ということは。
病魔刀
能力 傷を与えた相手に死に至らしめる病を与える。
俺が持ってる刀に鑑定をかけると、その刀、病魔刀がスキルを持っていることが判明した。本人になければ得物をうたがえ。異世界の常套句だ。その能力は、傷を与えた相手に死に至らしめる病を与える。つまり今俺は病にかかってんのか? 俺はミュータントの攻撃を避けながらステータスを確認する。
しかし、状態異常がない。それにスキルの欄に健康体が増えてやがる。どういうことだ? 健康体って王妹が持ってたスキルだよな。俺は健康体は持っていないはずだ。あの女神がお節介焼いて俺に健康体を与えた可能性が高いか。ありがたいっちゃありがたいな。
その時、俺の頭上に六本の剣が一気に降り注いでくる。避けられるようなタイミングではない。ならば跳ね返すのみ! 俺は治癒して置いた左手にもう一本の刀を光魔法で作成し、二本で攻撃を受け止める。
「ウオォォォォ!」
俺は足に力を入れるとともに、雄叫びをあげた。このままじゃあ押され負けてしまう。そう思った俺は右手の刀にも魔力を込める。しかし、刀にヒビが入ってしまう。頼む。もってくれ。これ以上! 苦しい思いをさせたくないんだよ! 俺がそう念じると、二つの刀が青白く光り、力が増していく感覚がした。俺はその勢いのまま、六つの剣を全て弾き飛ばした。すると、ミュータントは少しよろけた。その隙を逃す俺ではなく、一気に懐に潜り込み、二つの刀で交差させ、三つの首の頸動脈を一度に切りつけた。ミュータントはその場に倒れ込む。そして、俺の日本刀も砕けでしまった。お疲れ。二日の付き合いだけど、結構助かったよ。しかしいいな、この技。刀の残像が月っぽく見えるから、「ブルールナ」とでも名付けよう。
俺は光の刀を消し、ミュータントに向かって跪く。そして、手を合わせた。戦争のために生まれた哀れな生命体よ。安らかに眠れ。
俺がそう念じると、ミュータントが突如として青く光りだした。俺はその眩しさに思わず目を瞑ってしまう。しばらくして、光が落ち着き、目を開けられるようになった時、俺の目に飛び込んできたのは、三つの少女の遺体だった。
そろそろカストルの誕生日! 結構大変なシーンになっていますが、カストルくんには頑張ってもらいましょう。




