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Episode 9. 依頼の報告

「今日は、マリー大活躍だったじゃない!!」

マリーとローズは依頼を終え、家への帰途についていた。

「だ、大活躍って!!」

マリーの顔が真っ赤になる。

「魔物をおびき寄せて、さらに相手を怯ませる声を出すんだもの!!マリーってああいうことも出来たのね!!」

ローズが感心したように頷いている。

「...ローズちゃん、私のこと、嫌いにならないの?」

マリーが心配そうにローズに聞いてくる。目が合わせられないのか下を向いてしまっている。

「なんで?褒めてるんじゃない!!本当に感心したわ!!」

ローズはマリーの問いの意味が分からないようだ。

「だって私、あんなとこで...お、お、おしっこを...」

マリーの顔が真っ赤になる。

「でも、魔物が来るかもしれないからやったんでしょ?しかもあんな大きな音で!あたしまで恥ずかしくなっちゃった!!」

「!!」

ローズは笑うが、マリーは顔を両手で隠してしまっていた。そして、

「...ローズちゃんはいつからあそこにいたの?」

と震える声で聞く。

「えっ?ああ、小屋の外を歩いていたら、どこからか水音が聞こえてきたから不審に思って行ってみたのよ。そしたらマリーがいて...」

マリーが顔を隠した両手の間からローズの様子を窺っている。

「それで?」

「マリーの姿が見えた時はビックリしたけど、すぐに理由が分かったわ!!」

「み、見たんだ...」

ローズは得意げに話しているが、マリーは恥ずかしさでどうにかなりそうだった。

「周りからコボルドの群れがやってきてるんだもの!...でもどうして『おしっこで魔物をおびき寄せられる』って気づいたの?」

「そ、それは...」

ローズの問いにマリーは答えられない。まさか『関係なく、ただおしっこをしていた』などと言えるはずがない。

俯いて真っ赤になっているマリーを見て、ローズは何かに気づいたかのように頷くと、話し出した。

「そっか...きっと昔、偶然、してるとこに魔物が現れて、それで知ったのね...その時は大変だったと思うけど、おかげで今がある!!誇っていいのよ!!」

そしてマリーを励ました。

「全然、誇れないよ~~!!お願いだから今夜のことは忘れて!!」

マリーが懇願するが、ローズは、

「でも、明日、詳しく説明しないといけないし...それにこれを聞いたらマリーの評価もダダ上がりよ!!」

「いや~~~~~!!!ダダ下がりだよ!!お願いだから言わないで!!」

マリーは土下座をしてローズに頼み込んでいた。

「なんでさっきから...あっ!そういうことね!!」

ローズは何かに気づいたようだった。

「分かってくれた?!」

マリーの顔がほころぶが、

「自分だけの秘密にしたいんでしょ~~~!!...確かに魔物を呼び寄せる方法なんて気軽に人に教えるもんじゃないわね!!分かったわ!!そこは誤魔化しとく!!」

ローズはそう言って、意味ありげに微笑んだ。マリーは、

「...うん...それでいいよ...内緒にしといてくれるなら...」

結果として人に知られなければそれで良かった。

「でも、これからも魔物退治の時はよろしくね!!」

とローズが笑いかける。

「えっ!!これからも?!」

マリーの顔から血の気が引くが、

「大きな音でいっぱい出るように、お水たくさん飲んでから行かなきゃね!!」

そう言って機嫌良さそうに笑っていた。

「いや~~~~!!私、もう二度としない~~~!!」

マリーが真っ赤になりながら首を振っているが、

「またまた!そんなこと言っちゃって!!...こんな特技、使わないなんてもったいないわ!!頼りにしてるわよ!!」

「そんな~~~~~!!!」

ローズの言葉にマリーは絶望の淵に落とされるのだった。


それからしばらく歩いていたが、マリーはふとあることに思い至った。

(も、もしかしてローズちゃん...そういうプレイが好きなんじゃ...)

マリーの顔が真っ青になる。

「ん??」

ローズが不思議そうな顔をするが、

(ダメ!!私が正しい道に導いてあげないと!!...と、とりあえず、普通に...してあげて...お、女の子の...良さを...)

今度はマリーの顔が真っ赤になった。

「どうしたの?」

くるくる変わるマリーの様子にローズが心配して聞くと、

「大丈夫!私、頑張るから!!」

力強く答えるマリーに、

「ええ!期待してるわよ!!」

「期待?!」

そう答えたローズの言葉にマリーは卒倒しそうになるのだった。


☆彡彡彡


翌朝、マリーとローズはハンナを伴って、牧場主の家を訪れていた。

「なるほど...コボルドの群れが壁の下に穴を掘って侵入していたとはな...」

牧場主はその調査結果に納得しているようだった。

「そんなことがあったなんて...ギルドとしても何か対策を考えなければいけませんね!」

ハンナも驚いているようだった。

「それでコボルドを退治して、穴も埋めてくれたんだな!!まさか本当に解決してしまうとは...いや、疑って悪かった!!助かったよ!!」

牧場主は笑顔でマリーたちに手を差し出した。

「それは良かったです...」

苦笑いしながらも愛想よく握手をするマリーと、自慢げに両腕を組んでいるローズ。

「さすがジュークさんが気に入っているだけのことはある!!約束通り、盗んだ鶏は先取りの報酬ということにしておこう!」

「ありがとうございます」

牧場主の言葉に頭を下げるマリー。

「まっ!当然よ!!」

ローズは反省していないようだった。

「ただ、勝手に取っていくのはもう勘弁してくれよ!今度はタダじゃ置かないからな!!」

牧場主が釘をさすと、

「大丈夫よ!もう仮免、卒業したし、お肉でもなんでも買えるくらい稼いでやるわ!!今回は...その...悪かったわね...」

ローズが照れくさそうに目を逸らしながら謝った。

「ははは!冒険者はそれくらいじゃないとな!!...まあ、今回の仕事ぶりは気に入った!追加でもう一匹、鶏をやろう!!今夜は豪勢にやるといい!!」

そう言って、牧場主は愉快そうに笑った。

「ホント?!あなたいい人じゃない!!」

人が変わったように笑顔になるローズ。

「でも、いいんですか?」

マリーが遠慮がちに言うが、

「いいってことよ!!俺もあんたたちが気に入った!!また、何かあったら仕事を頼むかもしれねぇ!その時は頼むぜ!!」

牧場主はそう言って大声で笑うのだった。


「では、この依頼はこれで完了ですね!依頼達成ですのでポイントもつけておきます。それと...」

ハンナの言葉にマリーが首を捻る。

「何?」

「壁の下の穴の件は街全体の安全に関わることなので、別に報酬とポイントを用意します。私の一存では決められないので、マスターと相談してから...」

「いいの?!」

ハンナの説明にマリーがうれしそうに声を上げる。

「うん!それと『魔物が穴を掘った』という情報は治安の方たちとも共有しないと...それと山に行ってる調査団がそろそろ帰ってくる頃ね...何もないといいけど...」

ハンナが心配そうに話を続けた。

「そういえば、近くの山で何か起こってるんだよね?『今回の件とも関係あるかも』ってローズちゃんが言ってた。何が起こってるの?」

それを聞いたマリーが尋ねると、

「...知ってるのね...でも私の口からは言えないわ!今回の調査の報告を受けたら、マスターから話があると思うからその時、聞いて!!」

「うん...」

ハンナの言葉に深刻そうな予兆を感じたマリーだったが、この場では頷くことしかできなかった。


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