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Episode 7. 仮免卒業!しかし...

「おめでと~~~!!」

それから10日後の冒険の後、マリーとローズはハンナに祝福されていた。

「無事、ローズさんのポイントが千ポイント溜まりました!仮免、卒業です!!」

ハンナの声が弾んでいる。

「やった!!」

「うん!明日からは普通に依頼をこなせるね!」

「ええ!強い魔物、倒しまくってやるわ!!」

すっかりやる気のマリーとローズだったが、

「でもすぐには難しい依頼をこなすことはできないんです」

とハンナに水を差されてしまった。

「そうなの??」

マリーが驚いた様子で尋ねると、

「そうなのよ。依頼には推奨ポイントがあって、パーティのポイント以上の依頼は基本的に受けることができないの!」

ハンナがマリー相手ということもあって普通の調子で説明してくる。

「面倒ね!」

ローズがあからさまにイヤそうな顔をすると、

「すいません。でも、もうオーガを倒しても隠す必要はありませんよ!」

とハンナが言った。

「な、なぜそれを!!」

「バカ!口にしないの!!」

うっかりしゃべってしまったマリーをローズが注意する。

「大丈夫です。でも誤魔化すの苦労したんですから...もうあんなことはやめてくださいね!!」

ハンナに強く注意されてしまった。

「ゴメン...でもなんでそんな事を...」

マリーが聞くと、

「ギルドの情報網を馬鹿にしないでね!魔物の討伐数だって、特に証拠は求めてないでしょ!詳しくはいえないけどしっかり監視してるのよ!!」

ハンナが裏事情を教えてくれる。

「わ、分かった...気をつける...」

マリーはギルドの怖さを思い知ったのだった。


☆彡彡彡


その夜、

「「かんぱ~~~~い!!」」

食卓を囲んでマリーとローズが果実酒で乾杯をしていた。

食卓にはチキンの丸焼きと野菜の添え物。

それにパンやチーズが豊富に並んでいる。

「美味しい!!チキンなんていつ以来かな?!」

マリーが舌鼓を打つ。

「やっぱり、お肉がないとね!!今までよく我慢したものだわ!」

ローズも大満足のようだ。

わいわい言いながら夕食を済ませると、マリーがローズに聞いた。

「でも、鶏なんてどこから調達してきたの?高かったでしょ!」

しかし、その答えは驚くべきものだった。

「え、ああ...ちょっと街外れの牧場から...一匹くらいいなくなっても魔物か何かのせいにされるわよ!最近、多いらしいしね!」

「そ、それって...」

マリーが慌てだす。

「大丈夫、大丈夫!黙ってりゃバレないわよ!!」

ローズは言うが、

「そんなのダメだよ~~~!!今更戻せないし...弁償を...」

そう言って、財布を取り出すマリー。

「...足りない...どうしよう?!」

「だから黙って...」

「そういう訳にはいかないよ!!」

マリーに押し切られ、二人は牧場主へ謝りに行くことになったのだった。


☆彡彡彡


「ごめんなさい!!きっと弁償はしますので許してください!!」

マリーは牧場主に平謝りしていたが、

「いいや、信用できねぇなぁ!!最近、魔物の被害がひどいと思っていたが実はあんたらじゃねぇのか?!」

牧場主の怒りは収まらないどころか、あらぬ疑いまでかけられてしまった。


この世界の牧畜は、昼間は外で放牧をし、夜は街の外壁内で小屋に入れている。

なので夜に魔物に襲われることはないはずだが、最近、ちょくちょく被害報告が出ていた。

また、昼は外で放牧している為、当然、魔物に襲われる可能性がある。

その為、場合によっては冒険者等を雇うのだが、その為、この世界では肉は庶民にはなかなか手の出ない贅沢品になっていた。


「そんなことしてないわよ!!謝ってるのに失礼ね!!一匹くらいでケチケチと...」

するとさっきまで形だけは謝っていたローズまで怒りだしてしまう。

「なんだと!!もう許せねぇ!!衛兵に突き出してやる!!」

「それだけは!!」

ついに堪忍袋の緒が切れた牧場主にマリーが泣きつくが、

「さっきから聞いてりゃこいつの態度はなんだ?!こっちがどれだけ苦労して家畜を育ててると思ってるんだ!!絶対、許せねぇ!!」

牧場主は許してくれそうにない。

「そこをなんとか!」

マリーが必死に説得しようとしていると、

「どうしたんだい?穏やかじゃないね?」

どこかで聞いたことのある、穏やかな男性の声が聞こえてきた。

「あっ、ジュークさん!聞いて下さい!この女どもが私の大切な鶏を盗んだんです!!」

牧場主がジュークと呼ばれた初老の男性に訴えかけると同時に、その男性を見たマリーが驚きの声を上げた。

「マスター!!」


☆彡彡彡


「なるほど...」

顎に手を当て考え込むマスター。

「こいつら、冒険者っていうじゃないですか!こんな奴らさっさと資格取り上げて...」

怒り心頭の牧場主。

「そんな!!それだけは勘弁して下さい!!」

涙目で懇願するマリー。

「あ~~!鬱陶しいわねぇ!マスター。なんとかならないの?!」

面倒そうに顔を顰めるローズ。

それぞれがそれぞれの感想を漏らす。


すると、

「まずはローズ君。謝りたまえ」

マスターがローズを見つめて言う。

「だからさっきから謝って...」

「心から謝りたまえ!!」

ローズが頬を膨らますが、マスターが厳しく言い放った。

「!!」

その語気はいつもの穏やかな物腰からは想像もできない鋭いものだった。

裏組織の幹部に恫喝されても物おじしないローズも一瞬、体が震えるのを止めることができなかった。

「...悪かったわ...」

「なんだ、その態度は!!やっぱりこいつ...」

ふてくされたように謝るローズに業を煮やした牧場主が、マスターに訴えようとすると、

「ローズ君。このまま冒険者資格剥奪となったら、君だけじゃなくマリー君も生活に困ることになるんだよ?それでもいいのかい?」

「・・・」

マスターは言い聞かせるようにローズに説教をする。

マリーの名前を出されてはローズも反論できなかった。そして、

「この度は申し訳ありませんでした。鶏のお金は2倍にして返します」

そう言って牧場主に深く頭を下げたのだった。

「し、しかし...」

それでも納得できない様子の牧場主にマスターが言った。

「この度はすまなかった。私からも謝ろう」

「別にジュークさんは...」

牧場主がマスターは関係ないとばかりに話をしようとするが、マスターは急に話を変えた。

「時に最近、魔物の被害が増えているそうじゃないか。私も気になって見に来たんだ」

「そ、そうなんですよ!『夜にすばしっこい影を見た』っていう人もいて...とにかくこのままじゃ商売上がったりだ!!」

牧場主が肩を竦める。

「そこで相談なんだが、この二人に解決を依頼するというのはどうだろう?」

「えっ!こいつらにですか?」

マスターの言葉に牧場主は露骨にイヤそうな顔をする。

「この二人は今日、仮免を卒業したばかりの新人だが、この10日間の魔物討伐数は当ギルドナンバーワンだ!腕は私が保証しよう!」

「今日、仮免卒業ですかい?大丈夫ですかね?それに人の家畜を盗むようなヤツですよ?」

マスターの説明を聞いても、牧場主は信用してくれていないようだった。

「もちろん、通常の条件ではない。解決できれば、盗まれた鶏をその報酬とする。解決できなければ二人は衛兵に突き出すなり、訴えるなりすればいい。私は関与しない」

「えっ!!私たちだけで?!」

マスターの条件にマリーが不安そうな顔をするが、

「ま、まあ、他ならぬジュークさんの頼みだ。いいだろう。おい!3日やる!それまでに解決できなかったら衛兵に突き出してやる!!精々頑張ることだな!!」

牧場主はマリーとローズにそう言い放った。

「面白いじゃない!やってやろうじゃないの!!」

ローズも不敵な笑みを浮かべて、牧場主に対峙する。

「よし!決まりだな!!では頼んだよ!ローズ君!マリー君!」

そう言い残すとマスターはその場を去っていった。

「マリー!今夜から寝ずの番よ!!」

「ローズちゃん!待ってよ~~~!!」

こうして二人の初依頼が始まったのだった。


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