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Episode 53. 初めての王都

「おはようございま~~~~す!!」

ローズが元気にギルドに飛び込んでくる。

「おはよう...ございます...」

それに対して、マリーは少し、緊張しているようだ。

「ああ、おはよう!!...昨日はよく眠れたかい?」

ジークが二人に聞いてくる。

「「ま、まあ...」」

奇しくも二人の返事は同じだった。

「...そうかい。では、少し早いが王都へ向かおうか?」

それをどう取ったのか、ジークは特に反応することもなく、二人に出発を促したのだった。


「ここが...」

マリーが鍵のかかった扉を見て呟く。

ここは冒険者の間で『開かずの間』と呼ばれている。

何に使われているのか、みな口々に予想しては話のタネにしていた。

<ガチャン!!>

ジークが厳重な錠前を鉄の鍵で開ける。

扉を開くと、そこはがらんどうの空間で、部屋の中央に予想通り、転移石が置かれていた。


「それでは行くよ!二人とも慣れたものだろう...」

そう言うと、ジークが先に転移して消えていく。

「待って!」

ローズたちも慌てて跡を追うのだった。


3人が転移したのは白塗りの立派な部屋。

しかし、部屋には何もなく、殺風景だ。

誰もいない部屋をジークが扉、目がけて歩く。

マリーとローズもついていった。


<ギィィィィ...>

ジークが扉を開けると王城のバルコニーに出た。

扉の前には二人の衛兵がおり、3人を見ると一瞬、身構える。しかし、

「これはジーク様!」

ジークの顔を見ると警戒を解き、笑顔に変わる。

「ご苦労なことだね!!」

ジークが労うと、衛兵の一人が聞いてくる。

「では、そちらのお二人が...」

「ああ、ローズとマリー。今日、新たに英雄に叙されるものだ!!」

ジークが答えると、

「はっ!!ようこそおいでくださいました!!」

二人の衛兵は敬礼をして3人を出迎えた。


3人はバルコニー沿いに歩いていく。そして、

「わぁぁぁ~~~~~!!!」

マリーはそこから見える光景に思わず歓声を上げた。


そこからは王都の様子がはっきりと見渡せた。

白塗りで統一された建物が整然と並んでいる。

そして、シェナリーで見た大通りの3倍はあろうかという、大きな通りがどこまでも続いていた。

おそらく王都の門まで続いているのだろうが、先が見えない。


「すごいわね!!シェナリーも都会だと思ってたけど、比較にもならないわ!!」

ローズも足を止め、王都の様子を眺めている。

「ははは。初めて見る人はみな驚くよ!ここがサンシャイン王国の王都、『サンシャインベル』だ!」

ジークが二人に街を紹介した。

「すごい...一日じゃ歩ききれないよね?!門までだって何時間かかるか...」

マリーが大きさに感心していると、

「ええ!それにすごい人!!お店もたくさんあって...いつかこの街にも冒険に来たいわね!!」

ローズはその賑わいに感動していた。

「そうだね...冒険に...来たいね...」

マリーはそれに答えるが、どこか少し言葉を選んだように聞こえた。

「...さて、行こうか?見物は後でゆっくりしたらいい...」

ジークはそう言うと、急かすように二人を先導し始めた。


それから王宮の中に入っていくと、

「わぁぁぁ~~~~~!!!」

またしてもマリーが歓声を上げる。

「すごい!!この世の楽園みたい...」

ローズも驚いている。


それもそのはず、大理石の床は綺麗に磨き上げられ、埃一つ落ちていない。

左右には美しい美術品や大きな絵画が飾られ、芸術を理解しない者をも魅了する。

広い通路にはところどころに衛兵が立ち、微動だにせずに直立していた。


「王宮は広いからね!!迷わないように気をつけなさい!」

ジークはそう言うと、二人を導くように歩いていく。

<コツッ!コツッ!>

広い空間に靴の音が響き渡った。

「待って!!」

「置いてかれたら本当に迷子になっちゃうわ!!」

マリーとローズは慌ててジークを追いかけるのだった。


10分くらい、歩いただろうか?

とある扉の前に辿り着くと、ジークが口を開いた。

「ここが打ち合わせの部屋だ!午前中はここで過ごすことになる!」

そう言うと、衛兵に目くばせする。

<ギィィィィ...>

衛兵は分かっているのか、部屋の扉を開いた。


中は執務室になっており、大きな机に数人の担当官が座っていた。

どうやら3人を待っていたようだ。

「ああ!待たせたようだね!」

ジークが担当官に声をかけると、

「いいえ!まだ時間前です!私たちも今、来たばかりですのでお気になさらず...で、そちらのお二方が...」

担当官はそう答え、マリーたちの方を見た。

「はい!あたしがローズです!!よろしくお願いします!!」

元気よく挨拶するローズ。それを見て、

「わ、私がマリーです...よろしく...お願いします...」

マリーも緊張しながらも挨拶をした。

「そんなに緊張なさらずに!英雄を目の前にして緊張しているのはこちらですので...」

その様子を見た、担当官が笑顔でそう言った。

「あ、ありがとうございます...」

少し、ホッとした表情に変わったマリーを見て、

(まあ!あいつ、マリーの前でいい格好して...マリーもそんな顔するんじゃないわよ!!)

ローズが勝手に嫉妬していた。

「では、私たちも座ろうか?」

そう言って席に着いたジークを見て、

「「はい」」

二人も空いている席に座ったのだった。


向かい合わせに座っているマリーたちと担当官たち。

簡単な挨拶の後、

「失礼とは思いますが、時間が限られておりますので早速、本題に...」

担当官の言葉と共に打ち合わせが始まる。

「まずは『英雄の証』のデザインについてですが、どういったものがご希望でしょうか?」

担当官はまず、英雄の証について質問してくる。

「あ、あの...二人でお揃いの指輪にしようと思うのですが...」

マリーが答えると、

「指輪ですね!!それでしたらシンプルな銀の指輪に王国の紋章の飾りが入ったものなど、いかがでしょうか?」

担当官が指輪の作りを提案してくる。

どうやら、指輪は珍しくない証のようだ。

過去にも作ったことがあるのだろう。

「あたしはそれでいいけど...マリーは?」

ローズがマリーに聞く。

「私もそれでいい...問題は...」

((どの指のサイズで作るかだよね...))

二人は顔を見合わせる。

目が合った瞬間、赤くなって顔を背けてしまった。

((左手の薬指とか言ったら...引かれちゃうかも...))

二人とも自分からは言い出せずにいると、担当官が話し出した。

「分かりました!そのデザインなら比較的、早く作れます!!サイズは...」

((ドキッ!!))

二人の顔が緊張で硬くなるが、

「...魔法でどの指にもフィットしますのでご安心ください!」

「「・・・」」

担当官の言葉に二人は気が抜けたように机にうっ伏してしまった。

「どうされましたか?何かご不満でも?」

担当官が心配げに聞いてくるが、

「「な、なんでもありません!!」」

二人は揃って愛想笑いをしたのだった。


「??...何もなければ、次にお二人の『二つ名』ですが...」

不思議に思いつつも次の議題に入った担当官の言葉に、

「「あっ!!」」

二人は学校で宿題を忘れた学生のような声を出した。

「どうされましたか?」

また担当官に聞かれてしまう。

((き、昨日、考え事してたら忘れちゃってた...))

しかし、そんなことは言えない。二人はとりあえず誤魔化そうとする。

「「な、なんでもありません!!」」

また声を揃える二人。

「本当に息がピッタリですね!!さすが英雄のペア!!」

担当官は感心したようにそう言った。

「「ははは...」」

また愛想笑いをする二人。

((ど、どうしよう!!今のうちに考えないと!!))

どんな強敵との戦いよりも頭を働かせるのだった。


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