表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/59

Episode 50. サクラノに戻って

「ジーク殿!!」

マリーたちがサクラノの街に戻ってくると、門から立派な鎧をつけた、いかめしい中年の男性が飛び出してきた。

「誰?」

ローズが思わず口にするが、

「こら!!この方は王国の騎士団長だ!!気安く呼ぶんじゃない!!」

ジークがローズをたしなめた。

「えっ?!ごめんなさい!あたし、知らなくて...でもなんでサクラノに?」

ローズが謝りながらも戸惑っていると、

「おや?もしやこの方が...いや、それよりも山の様子はどうでしたか?!」

騎士団長が一瞬、ローズの顔を見た気がしたが、すぐにジークに向き直り、真剣な顔で聞いてくる。

「ああ!やはりサタンが降臨していた...」

「では!!」

ジークの言葉に騎士団長の顔が青ざめるが、

「ははは。焦らなくてもいい!!サタンは地獄に戻った!サタンが呼び寄せた魔物も全て掃討した!!おそらく数千年は平和が続くだろう...」

ジークの説明に、

「おお!!さすがジーク殿!!」

騎士団長が感心するが、

「勘違いしてはいけないよ!サタンを追い払ったのは私ではない!」

「では誰が?...」

ジークの言葉に戸惑う騎士団長。すると、ジークが説明を続けた。

「こちらにいるローズとマリーだ!!二人は確かにサタンを撃退した!!私が保証しよう!!」

そう言って、マリーとローズを紹介するように、手を差し出す。

「まさか!!こちらの少女二人だけで?!」

騎士団長は信じられない様子だったが、

「本当です。私からも保証します!」

ミランダがそう言うと、

「これはミランダ殿。お二人がそう言うのであれば...これは若き英雄の誕生だ!!すぐに城に戻り報告せねば!!」

騎士団長が興奮した様子で話す。

「えっ?!お城ってここから遠いんじゃ...」

ローズが相変わらず要領を得ない顔をしているが、

「ああ!よろしく頼む!私もすぐに向かいたいところだが、生憎、今日は皆、疲れてしまっていてね!...明日まで待ってもらえるだろうか?」

ジークはローズを無視して話を進める。

「分かりました!!とりあえず『脅威は去った』と報告しておきます!!...しかし、いきなりこの少女が飛び込んできた時は驚きましたぞ!!」

騎士団長が横を向く。そこにはいつの間にかハンナの姿があった。

「ハンナ!!」

マリーがうれしそうに叫ぶが、

「ははは。うまく伝えられたようだね!ご苦労さん!」

ジークがハンナを労う。

「いえ!マスターが預けてくれたこれのおかげで信じてもらえました!」

ハンナがジークに何かを返す。

ジークの手の中にあったのは、王国の紋章の入ったカフスボタンだった。

「これは?」

マリーが不思議そうに聞くと、

「これはマスターの『英雄の証』よ!!国に英雄と認められた人にはそれを証明するものが下賜されるの!!ミランダさんも持ってるはずよ!!」

ハンナが説明をしてくれる。

「へぇ!ミランダさんもカフスボタンを?!」

マリーが聞くが、

「『英雄の証』は人によって違うわ!!私はこの髪飾りをお願いしたの!!」

ミランダはそう言って、いつもつけている髪飾りを外して見せてくれる。

それは近くで見ると美しい装飾が施されており、いっそう輝いて見えた。

「すごい...」

見とれているマリーたちに、

「あなたたちにも下賜されると思うから何がいいか考えておくといいわ!!」

ミランダはそう続けた。

「えっ!!私が?!」

マリーが驚くが、

「そりゃそうよ!!サタンから世界を救ったんだもの!!マリーとローズが英雄に叙されるのは間違いないわ!!ねっ!騎士団長様!!」

ミランダが騎士団長に聞くが、

「おそらく間違いないでしょう!...しかし、私の口から断言は...」

歯切れの悪い言葉が返ってくる。

「ははは。騎士団長殿を困らせてはいけないよ!まあ、『そうなるかもしれない』ということだ!!期待半分に待っていてくれたまえ!!」

ジークがそう言って笑った。

「では、私はこれで...」

「よろしく頼んだよ!」

一礼して踵を返した騎士団長にジークが言葉をかけた。

一度、振り向き、軽く頭を下げると、騎士団長が街の中に戻っていく。

「よし!!みんな疲れただろう!!今日はおのおの戻って休むといい!!スカーレット君たちは...」

ジークがスカーレットの宿の心配をするが、

「わたくしたちはいつもお父様が泊まっている宿を使用させていただきます!」

とスカーレットが答えると、

「うむ!それでは...」

「ちょっと待ってよ!!」

ジークの解散の言葉をローズが邪魔をする。

「何?ローズちゃん?」

マリーが他の人を気にした様子でローズに尋ねると、

「どうして、お城とこんなに早く連絡が取れるのよ!!これじゃまるで...あっ!!」

ローズは何かに気づいたようだった。

「そういうことだ!分かったかね?」

ジークが目くばせをする。

「えっ?!もしかしてみんな分かって...」

ローズが言うと、

「そりゃねぇ...他に説明がつかないし...」

キャサリンが代表して口にしたが、みんな当然だと言わんばかりだ。

「スカーレットも?!」

ローズが聞くと、

「ええ。お父様も一つ持っておりますし、大体の事情は...それにしてもローズが知っていたなんてそちらの方が驚きですわ!!」

スカーレットがそう言う。

「ま、まあ、あたしは...」

ローズが口を濁すが、

「ふふふ。黙っていますから心配はいりませんわ!!ワカクサも分かってますわね!」

「はい...なるほど...あの時、泉に寄らなかったのは...」

スカーレットの言葉にワカクサは何か納得の顔をしていた。

「ではそういうことだ!...ローズ君とマリー君には追って連絡があるだろうから、サクラノに留まるように!...それと私は明日、ギルドを留守にするからミランダ君、ハンナ君を手伝ってあげてくれるか?」

「はい!!ジークさんの為なら喜んで!!」

「ははは...」

ミランダの猫なで声にハンナが苦笑いをしていた。


☆彡彡彡


<シャ~~~~~~!!>

その日の夜。マリーは浴室の前に立っていた。

中からはシャワーの音が聞こえている。

「ゴクリ!」

マリーが唾を飲み込む。

下着姿のマリーがブラを外す。

そして、最後の一枚をスッと下ろした。

(だ、だ、大丈夫!!普通に入って、『疲れてるでしょ!背中流してあげる!!』って言うだけ!!な、何も変なことはないよ!!私たちは冒険者仲間なんだから!!)

マリーは頭の中で一生懸命、理由を探していた。

『一緒にお風呂に入る』

ローズが死ぬかもという恐怖を乗り越えたマリーは、ついにその勇気を出そうとしていた。

マリーの手がドアの取っ手に迫る。

<ドクン...ドクン...>

心臓の鼓動がやけに耳につく。

握った。

しかし、開ける勇気が出ない。

(やっぱりダメ!!)

マリーは手を離してしまう。

(ローズちゃん!ローズちゃんは私が入ってきたらうれしい?それとも...イヤ?)

もし、ほんの少しでもノーサインを感じてしまったら...マリーはそう思うと最後の勇気が出なかった。

浴室の入口で固まること数分。

(いくよ!!)

そう決心し、右手を伸ばした時!

(!!)

鼻に感じる微かなにおい。

(ま、まさか!!)

マリーは自分のわきに鼻を近づける。

(うっ!!)

危うく声が出そうになるのをなんとか堪えることができた。

(こ、こんなにおいさせてるなんて...今日、いっぱい汗かいたから...こんなんじゃローズちゃんに嫌われる!!)

そして対処法を考える。

(そ、そうだ!!体を洗ってから...って『背中流してあげる!』って言って自分の体、洗うの変でしょ!!もう!どうしてこんな時に...)

マリーは落ち込みながら下着を手に取ると、ローブも拾い上げ、フラフラとその場を後にするのだった。



一方、浴室の中では、

(あ、あの影!もしかしてマリー?!...何もつけてないような...も、もしかして入ってくるの?!ど、どうしよう!!マリーの純潔が!!)

ローズは慌てるが、

(だ、だ、大丈夫よ!!仲のいい女の子が一緒にお風呂とか普通だわ!!...あ、洗いっこだって...別に変なことじゃ...大丈夫!マリーを汚す行為ではないわ!!)

必死で言い訳を考え出した。

(は、入ってきたら何て言おう...やっぱり『綺麗ね!』かしら...で、でもいかにも体を見てるようで...や、やっぱり『あっ、マリーも早く体を洗いたかったの??』の方がナチュラルかしら...でも...)

一生懸命、最初のリアクションを考える。

(そしてマリーを綺麗にしてあげなくちゃ!!今日は頑張ったもんね!!...だ、大事なところも...も、もちろん、やましいことは考えてないわよ!!そこは清潔にしないといけないの!!)

またしても言い訳をしているローズ。しかし、

(あ、あたし、臭くないわよね!!シャワーは浴びたけど...)

ふと、わきのにおいを嗅いでみる。少し、不安になってきた。

(ちょ、ちょっと待って!!すぐに綺麗にするから!!)

急いで体を洗い出すローズ。

(こ、ここは特に丁寧に...)

赤くなりながらデリケートな部分を洗っていると、

(あっ!!)

マリーの人影が去っていってしまった。

(...そうよね...マリーが一緒にお風呂なんて...ないよね...)

ブルーになりながら浴槽に入り、深く沈み込むローズだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ