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Episode 5. 初めての冒険を終えて

<シャ~~~~~~!!>

浴室の中からシャワーの音が聞こえる。

湯船に入る前に体を洗っているようだ。

(ローズちゃんのシルエット...綺麗...)

その前でその様子を眺めているマリー。もちろん、覗きに来たわけではない。

(い、いつまでも見てないで洗濯しないと!!)

マリーはローズの革製のドレスを取った。


ちなみにこの世界では魔道具が発展しているので、縫製のレベルが高い。

下着も洋服も可愛いのがたくさん店に並んでいる。

ただ、冒険用のは丈夫さが求められるので少し無骨だった。

マリーのローブも紺一色で分厚いし、ローズのドレスも革製だ。

ローズは素早さを重視するので重い防具はつけない。革製のドレスで魔物の攻撃を避ける様は実に華麗だった。

そのドレスも、茶色一色だ。ただ、袖と裾の先の部分の色が少し薄くなっており、多少のオシャレさを感じさせた。


(これも今日一日で大分汚れたね!この魔道具、革製品も洗えるのかな...)

マリーは洗濯用の魔道具-洗濯機-の説明書を確認する。

これはなかなか便利で、魔力を追加してやれば乾燥までしてくれる。

夜に洗って、朝に着ていくことも可能だった。

(うん!できるみたい!!ローズちゃんにはいつも綺麗な服で戦って欲しい!!)

そしてドレスを洗濯機に入れる。

(私のローブも一緒に...)

マリーは自分のローブを脱ごうとするが、

(うわっ!汗くさい!!やっぱり別に洗おう!!)

脱ぐのをやめて後で別に洗うことにした。

(下着は...別の方がいいよね!)

そう思うと洗濯機に魔力を流し込むのだった。

<ゴゴゴゴゴ...>

洗濯機が動き出す。

それを確認すると、今度はローズの下着を手に取る。

(...ローズちゃんの下着...って変なこと考えてないからね!!一応、汚れ具合を確認するだけ!!)

マリーは言い訳をしながらローズの下着を広げる。

「うわっ!」

思わず声が出てしまった。


この世界では、よほど長くない限り、冒険中は下着を含め服は変えない。

その分、荷物になるし、汚れた下着を持ち歩くのもなんだからだ。

その為、1週間、2週間、同じ下着を着けることもある。

また、洗濯機のような魔道具も珍しい為、洗濯で落とせる汚れのレベルも低かった。


(これ、そろそろ替えた方がいいかも...においは...)

マリーはローズの下着に鼻を近づける。

「うっ!」

思わず顔を顰めてしまった。

(すごいことになってる...もちろん、イヤじゃないよ!!でもローズちゃんには清潔でいてもらわないと!!)

そう考えると、桶に水を入れ、汚れ落としの薬を混ぜる。

そこにローズの下着をつけておいた。

(どこまで落ちるかな...場合によっては捨てないと...そうだ!ローズちゃんの着替え!!)

ローズは着替えを持ってきていないので、風呂から出ると着る服がない。

マリーはローズの部屋へと向かった。


「えっと、タンスはこれだね!」

そう言うと、マリーはローズの服を一通りチェックした。下着も含めて...

「こ、これはローズちゃんのお世話をする為、必要なことなの!!決してやましい気持ちで調べているわけでは...」

言い訳をしながら湯上りの服を選ぶ。

「これなんか楽そうでいいよね!可愛いしローズちゃんに似合いそう!」

水色のタンクトップとショートパンツを選んだ。

「寒くなったら何か上から羽織ったらいいよね!後は下着を...」

しかし、ローズの下着はどれも汚れがこびりついていた。

「う~~~~ん...これが一番、マシかな...」

その中で一番、綺麗なものを選ぶ。

「でもこんなのじゃダメ!!新しいのが必要だよね!!う~~~~ん...」

そう思ったマリーはどうするべきか考える。

「そうだ!今日の冒険である程度、報酬もらったし、明日はお買い物したらどうかな?後でローズちゃんに聞いてみよう!!」

名案が浮かんでご機嫌のマリーは、服と下着を持って風呂場へと戻るのだった。



<トントン...>

ローズが風呂に入っている間にマリーは夕食の下ごしらえをしていた。

「よし!風呂に入っている間にこれを煮込んでおこ!」

具材を煮込み始めたところで、ローズが風呂から上がってきた。

「あら。夕食の準備?」

台所のマリーに声をかける。

「うん!ローズちゃん、上がったんだ!じゃあ、私も入るね!その間煮込んでおけば、上がってすぐに夕食にできるから!!」

マリーが簡単にその場を片付ける。

「この服。マリーが選んでくれたの?それに...下着も...」

ローズが少し恥ずかしそうに聞いてくる。

「うん...ダメだった?」

マリーが心配そうにしていると、

「ううん!『あたしが着ようとしてたのよく分かったな』って感心してたの!」

ローズは笑ってそう言った。

「そう!良かった!気に入ってくれて...とっても似合ってるよ!!可愛い!!」

マリーが安心して微笑みながら言うと、

「ありがとう。それで...あたしが着てた服は...」

「あっ!着てた服は汚れてたから洗濯してるよ!大丈夫!明日には乾いてるから!!」

ローズの問いにマリーが答えると、

「...下着も?」

また少し頬を染めながらローズが言った。

「う、うん...」

マリーはまた不安になる。しかし、ローズは、

「ううん!いいの!これから洗濯は任せるわよ!」

「うん!」

気にした様子のないローズの言葉に、マリーは笑顔で頷いた。


ローズが自分の部屋に戻ると、マリーも一度、自分の部屋に行く。

「えっと、着替えは...」

まず下着を選び出した。

「...このお気に入りのピンクにしよ!ローズちゃん、気に入ってくれるといいけど...って見せるわけじゃないんだけどね!」

そう言って一人、苦笑いをした。

「服は...上はこのピンクのキャミソールにしよっかな!...その...胸が...目立つし...」

マリーの顔が赤くなる。

「それに合わせるのは...この赤のミニスカートにしよ!!」

そう言ったもののそのスカートを広げたまま、しばらく考え込んでいる。

「これ...小さい時のだから丈が短いんだよね...み、見えちゃうかも...」

しかし、決心がついたようだった。

「そ、その気にさせるのもお嫁さんの大事な仕事だよね!今日こそはお呼ばれするといいなぁ...」

そう言って頬を染めると、マリーは着替えを握りしめ、風呂場へと向かった。



「ローズちゃん!ご飯できたよ~~~!!」

風呂から上がったマリーは夕食の準備を済ませ、ローズに声をかけた。

「今、行くわ!」

部屋から出てきたローズが食卓の前に立っているマリーに気づく。何か言って欲しそうだ。

「あら。ピンクに赤で可愛い部屋着ね!」

「えへへ...」

どうやら正解だったらしく、その言葉にマリーはうれしそうに頬を緩める。

ローズが席に着くとマリーも座った。

食卓にはパンと野菜のシチュー、ハムを薄く切ったものが載っている。

「わぁ!美味しそう!!やっぱりマリーに来てもらって良かったわ!!後はもう少しお肉があれば...」

ローズはその食事に目を輝かせたが、やはり肉が少ないのが不満なようだった。

「ゴメンね...今は報酬も少ないし...仮免卒業したらもっと稼ごうね!!」

申し訳なさそうなマリー。するとローズは、

「そうね!今日は魔物を22匹、素材を10個で32ポイントついたわ!!この分だと10日もあれば仮免卒業できる!!」

とやる気になっていた。

「そうだね!でも明日は買い物が必要だと私は思うんだ!」

しかし、マリーは慎重に当初の計画を進める。

「買い物?何かすぐに必要なものがあるの?」

ローズはあまり乗り気ではないようだ。それより冒険に出てポイントを溜めたいらしい。

「あの...その...私の下着...全部汚れちゃってて...新しいのに買い替えないとなって...」

マリーは恥ずかしそうに言う。自分の下着にすり替えているのは、さすがに『ローズちゃんの下着が汚れてるから』とは言えないからだろう。

「もう!冒険に出たらそうもいってられないわよ!!...でもそれなら仕方ないか。マリーも女の子なのね!」

ローズはなんだかんだ言って了解してくれたようだ。

「うん!...それと...一緒にローズちゃんも下着、買わない?可愛いお店知ってるんだ!!」

マリーがそれとなくローズに買い替えを迫る。

「でも、どうせすぐ汚れるし...」

ローズは顎に人差し指を当て、考えている。

「大丈夫!!私が綺麗にしておくから!!洗濯用の魔道具、便利なんだよ!!だから可愛いの買おう!!」

なおもマリーが勧めると、

「...それなら悪くないかもね!あたしも実は可愛いの着けたいと思ってたの!マリーが綺麗にしておいてくれるなら...」

とローズも首を縦に振ってくれた。

「うん!!」

うれしそうに顔をほころばせるマリー。

こうして、二人は翌日、下着を買いにいくことにしたのだった。


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