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Episode 48. 無敵の二人

「おお!シェナリー殿の...ありがとう。助かったよ!!...本当はきちんとお礼を言わないといけないのだが...」

ジークはお礼もそこそこに魔物の群れに向かっていく。

なにしろ地獄の扉から次々と出てくるのだ。殲滅の手を止めるわけにはいかない。

「わたくしたちも手伝いますわ!!」

スカーレットたちが加勢しようとするが、

「いけない!!この敵は普通の冒険者に勝てる相手ではない!!...腕に自信があるのは知っているが...」

ジークが二人を止めようとする。

どうやら二人が冒険者になったことは聞きかじっているようであったが、貴族の娘を危険な戦闘に巻き込むわけにはいかないと判断したのだろう。

すると、ミランダが、

「あら?ジークさんはスカーレットの強さを知らないんですか??今、シェナリーに常駐している剣士の中では一二を争う腕なんですよ!」

スカーレットの強さを説明すると、ネルソンも、

「それにあの従者!ヒーラーとしては相当の腕前だぜ!!さっきの魔法見たでしょ?!」

そう言って加勢する。

「・・・」

それでも踏ん切りがつかないのか悩むジークだったが、

「そういえば、この間、リッチを倒したんだったな!!シェナリーのマスターに聞いたぜ!!」

ダイアンがジークに聞こえるように、スカーレットに話しかける。すると、

「ほう...剣士でありながらリッチを倒すか...分かった!!すまないが加勢してくださらんか!」

そうスカーレットたちに頼んだ。

「任せてください!!...いきますわよ!!ワカクサ!!」

「はい!お嬢様!!...(アンチ)物理(マテリアル)障壁(フィールド)!!」

スカーレットは魔物に立ち向かい、ワカクサは防御魔法や回復魔法で援護するのだった。すると、

「ちょっと待ってよ~~~!!ボクも仲間に入れて~~~!!」

さっきまで休息を取って魔力を回復していたキャサリンも戻ってくる。

7人は魔物を次々と倒していくのだった。


☆彡彡彡


一方、

「なぜだ!!」

山の山頂で戸惑いの声を上げているのはサタンだった。

今、ローズはサタンの一撃を剣で受け止めていた。

これはおかしい。

サタンは今までの戦いでローズの腕前を見切っていた。

その為、全力ではないが、確実に仕留められるスピードとパワーで攻撃したのだ。

避けることも受けることも出来ないはずだった。

「あれ?今の...」

ローズは自分でも驚いているようだ。

今、自分がした動作を思い返しているようだった。

「くっ!これはまぐれだ!!今度は確実に仕留める!!」

そう言ってサタンが動き出そうとした時。

(あっ!この体の動き、力の溜め方...合理的に考えて真上から斬り下ろすわね!!相当の力だけど、剣の軌道さえ分かれば力を逃がすのは訳ない...)

ローズの頭はオートマティックにサタンの次の一撃を計算していた。

(どうして今まで分からなかったんだろう...そうか...相手に意識が集中して大事なものが見えてなかったんだ...)

ローズは今、目の前で起こっている事実を、ただ事実として受け入れている。

すると不思議なことに、今まで意識できなかった事が見えてくる。

<キン!!>

サタンの本気の一撃をローズが受け止めた。

「なに!!」

驚くサタンを尻目に、

(あれ?サタンの意識に死角が...ここを通して攻撃してやれば...)

ローズは今や、意識すらできない僅かな動き、気配からサタンの意識まで分かる気がした。

<ズバッ!!>

ローズの一撃がサタンに決まる。

「お、お前、何をした!!お前の剣のスピードなら避けるのは簡単なはず...何をした~~~!!」

サタンが怒り狂う。対してあくまで冷静なローズ。

(あらあら!そんなに興奮したら隙が出来ちゃうわよ!!)

<ズバッ!!ズバッ!!ズバッ!!>

ローズの3連撃が見事にサタンに決まった。

「くっ!!」

サタンは警戒したのか、ローズから距離を取る。しかし、

<ズバッ!!>

「なに??」

サタンは背中から斬られる。

そこには誰もいなかったはずで、何が起こったのか一瞬、理解できなかった。

(ここに動くことはあの状況からみれば非常に合理的で確率の高い動作。先回りしてやれば、斬るのは簡単ね!)

ローズはただ、あるがままに動く。サタンはもはや『敵』ではない。

さらに連撃を加えようとして、

(あっ!さすがにこれ以上はヤバいわね!!少し距離を取ってと...)

サタンは振り向くと思いきや、剣を後ろに突き出してきた。

しかし、そこにローズはいない。

「「・・・」」

距離を取った二人はしばらく動くことはなかった。

(さすがね!冷静になったら隙がないわね!まあ、のんびり相手の出方を待ちましょうか!)

ローズはリラックスしながらサタンの次の手を待つ。

「くっ!くっ!く!何が起きたのかは知らんが、なかなかやるではないか!!しかし、このくらいのダメージ、我には効かぬ!!」

サタンはドラゴンでさえ、致命傷になりそうなダメージを受けても効いている様子はない。

とてつもない生命力だ。そして、

(ふむ...回復でもするか...こやつに今までの攻撃は意味がなかった事を見せつけてやろう!)

サタンはニヤリと笑うと、無詠唱で回復魔法をかけようとする。しかし、

「なに?!」

サタンは驚愕に目を見開く。回復魔法の発動に失敗したのだ。

そしてマリーの方を見やる。

マリーはサタン目がけ、両手を差し出し、何かを考えるような仕草をしていた。

「まさか『魔力干渉』!!...バカな!!あれは詠唱しないと魔法を発動できない人間には到底、不可能な技!!しかし...」

サタンはもう一度、回復魔法を発動しようとする。

「!!!」

自分の魔力の流れが突如、乱され、魔法が不発に終わった。

「こんなもの!!」

サタンはマリーから流れてくる魔力を振り払おうとする。

しかし、ローズがその隙を与えてはくれなかった。

<ズバ~~~~ン!!!>

上段に大きく振りかぶった剣が重力と筋力、そして技の力で激しくサタンを切り裂く。

隙だらけの剣だが、マリーの魔力に集中していたサタンには気づくはずもなかった。

「ぐわぁぁ~~~~~!!」

サタンが初めて、苦しみの声を出す。

(早く回復を!!)

サタンは焦るが、また発動に失敗する。

「チッ!!」

舌打ちをしてマリーを睨むサタン。

しかしマリーは、

(分かる!!分かるよ!!魔力の流れが...なんで今まで気づかなかったんだろう...そっか...結果としての『魔法』にばかり目が行っていたから...大事なのは原因だったんだ...)

サタンを気にする様子はない。もはや『敵』ではないサタンを恐れる必要はないのだ。

(今まで、相手を倒そうと、結果にばかり目が行ってた...それをやめて全てをあるがままに見れば...魔力の流れも見えてくる!!)

マリーは全集中力をもって、サタンの魔力の流れに干渉する。

「くっ!!」

魔力干渉を振り払おうとするサタン。すると、

<ズババ!!>

ローズの剣が来る。

気がつけばサタンは追い込まれていた。

魔法は一切、使えない。

全てマリーに邪魔されるし、干渉を振り払おうとすれば大きな隙ができ、ローズに大ダメージを食らってしまう。

かと言って、剣で攻撃も出来ない。

不思議なことに、斬りかかろうとすると、それがまるで分かっていたかのようにローズに受けられ、反撃を食らってしまう。

全集中力を使い、相手の動きに気をつけていれば攻撃してこないが、自分は精神力をすり減らすのに対し、相手はリラックスしていて疲れた様子はない。

「エアボール!!」

そしてたまにマリーから飛んでくる、圧縮された空気の球。

受けてもダメージはないが、そのちょっとした現象がサタンの置かれた状況を変える。

避けても、圧力に耐えても、何もせずに空圧で体が僅かに動いても、その意識の隙間をついてローズが攻撃してきた。

徐々に消耗していくサタン。

そしてついに、

「もうやめだ!!」

サタンが諦めた。

「どうせ、数千年も経てば状況が変わるだろう...それまで地獄で力を蓄えさせてもらうとするか!」

そして、サタンの足元に黒い穴が開いたかと思うと、吸い込まれるようにサタンが消えていった。


それと同時に、今まで止まっていた古代文明の装置が動き出す。

その紋章が青く光り出し、その場を覆っていた禍々しい気配が消えた。


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