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Episode 43. 嵐の夜

<ビュォォォォ~~~~~~!!>

その日の夜は大嵐となった。

夕方までは晴れていて、穏やかな天気だったのに、突然の変化だ。

<ピカッ!!>

窓の外が真っ白に染まる。直後、

<ゴロゴロゴロゴロ...>

大音量の雷鳴がいつまでも轟く。

「キャ~~~~~!!!」

そして、マリーの声が家中に響いた。


この辺りは気候が穏やかで嵐は滅多にない。

雷なども年に1回あるかどうかだ。

マリーが怖がるのも仕方のない事だった。


しばらくして、

<トントン!>

マリーの部屋のドアがノックされる。

「マリー!大丈夫?」

ローズの声だ。心配で様子を見にきたのだろう。

「ローズちゃん...」

ドアの向こうから聞こえるマリーの声は震えていた。

それを聞いたローズは、

「入るわよ!」

そう言うと、返事も聞かずにマリーの部屋に入ってきた。


ローズが見ると、マリーはベッドの布団に潜り込み、ブルブルと震えていた。

ローズはそっとベッドに腰かける。

「雷がやむまでここにいてあげる!!何があってもあたしが守ってあげるから安心して!!」

布団の中のマリーに優しく声をかける。

「ローズちゃん...」

マリーがそっと布団から顔を出した。その瞬間、

「うっ!!」(可愛い!!)

ローズは心臓が止まりそうになった。

潤んだ目。恐怖で心拍数が上がり紅潮した頬。

そして何より、ローズを見つめる瞳。

うれしさと何か別の感情が入り交じった瞳だ。

(危ないわ!!この顔を他の人に見られたら、きっとマリーは...あたしで良かった!!マリーの純潔を守る為にも、あたしが常に側にいなきゃ!!)

ローズは自分の中に生まれてくる感情を必死に抑えながら、そう思うのだった。

「大丈夫...大丈夫だから...」(あたしはマリーを襲ったりしない...じゃなくて、雷よ!!何考えてるのかしら!あたし!!)

ローズはマリーに優しく語りかけながら、心の中で自分にツッコんでいた。

「なかなか、やまないね...」

マリーが呟く。

先程のような大きな雷は1回きりのようだったが、その後も時折、小さい雷が鳴っていた。

「大丈夫よ!!あたしがずっとここにいるから...」

ローズが安心させるように言うと、

「...一緒に...寝て...」

マリーが小さい声で囁いた。

恥ずかしさからか顔が真っ赤になっている。

「うん。いいわよ!...って、えぇぇぇ~~~~~!!!」

大声を出したのはローズだった。

「...嫌?」

マリーが聞くが、

「い、嫌じゃないけど...でも...」

ローズがあたふたしながら葛藤した顔をしている。

「すぐにやみそうにないし、そこじゃ寒いでしょ?それにローズちゃんも寝なきゃ疲れが取れないよ!!...私は...ローズちゃんが隣にいたら大丈夫だから...」

マリーはそう言って、もう一度、頬を染めた。

「で、でも...」(あたし、そんな事したら正気でいられる自信がない...下手したら...マリーの...純潔を...)

ローズが考え事をしながら迷っていると、

「...ならいいよ!もう大きな雷は来そうにないし、私は大丈夫だから...ローズちゃんは自分の部屋で寝て!」

健気にもマリーはそう言ってくれた。

しかし、ローズはマリーの肩が小刻みに震えているのを見逃さなかった。

「分かった...マリーがそれで安心できるのなら...一緒に...寝よ!!」

ローズはそう言うしかないのだった。

「うん...」

マリーがうれしさと恥ずかしさの交じったような微妙な顔で布団を捲る。すると、

「えっ!!マリー!いつもこの格好で寝てるの?!」

ローズは驚きに目を見開いてしまう。

何故ならマリーが着ているのは薄いネグリジェのみ。透けて見える下には何もつけていなかった。

「う、うん...下着は締め付けるから寝る時は気になって...外してるんだ...」

そう言うと、マリーは真っ赤になった。

「...変かな...私、変態なのかな?」

マリーが不安そうな顔をする。

「ううん!そんな事ない!!ちょっとビックリしただけ!!いつも一人で寝てるんだものね!!楽な格好で寝るのが一番、疲れが取れていいわ!!」

そう言ってローズは微笑みかける。続けて、

「で、でも、あたしが一緒に寝たら...その...触っちゃうかも...」

ローズはそう言ったが、自分の言った意味を思い返すと、問題発言のような気がして、急いで言い訳をする。

「ってワザとじゃないわよ!!寝返りとか打つじゃない?!」

「...ローズちゃんなら...いいよ...」

マリーはそう言って頬を染めるが、

「ダメよ!!マリーは結婚するまで綺麗な体でいなきゃ!!...だ、大丈夫!!マリーの体には指一本、触れないから!!」

ローズはそう言うと、慎重にマリーのベッドに潜り込んだ。

(ど、どういう意味だろ?『結婚するまでしてくれない』ってことかな...それとも...)

マリーが少し、へこんでいると、ローズが反対側を向いていることに気づく。

「どうしてそっち向いてるの?私の顔...見るのイヤ?」

マリーは更に落ち込みながらそう言うと、

「で、でも...」

ローズは何かに葛藤しているようだ。

「ローズちゃんの顔、見たいな...そうじゃないと...安心できない...」

そう呟くマリーに、

「・・・」

ローズは無言で体を半回転させ、マリーの方を向いた。

「これで...いい?」

ローズの言葉に、

「うん!!安心して眠れそう!!」

マリーは最高の笑顔で微笑んだ。

「うっ!!」

ローズは危うく尊死するところだったが、何とか自分の心臓を再び動かすことに成功した。

(いけない!!可愛い!!可愛すぎる!!至近距離で見るマリーの顔って、こんなに可愛いの?!これで正気を保っていられる人なんていないわ!!...絶対にマリーを他の人に近づけすぎないようにしないと!!)

ローズは改めて心に誓うのだった。

「ローズちゃんの顔、綺麗...きめ細やかで、ツヤツヤしてて...」

マリーがそう言ってくるが、

(それはマリーの方よ!!どうしてそんな綺麗な造形美がこの世に存在するの?!あたし、明日の朝まで正気を保っていられるかしら...ってダメ!!何が何でも保たないと!!マリーの純潔はあたしが守るって決めたんだから!!)

ローズは自分を必死で律しながらも、マリーに笑顔で答えるのだった。

「マリーもよ!!...さあ、もう目をつむって寝なさい!!あたしがずっとここにいるから...」

「...うん...」

ローズの言葉にマリーが目を閉じる。安心したのかさっきまでの震えは止まっていた。

(ふふふ。安心してくれたようね!良かった!...でも問題はあたしだわ!!目の前には女神様のような可愛い顔!!そして少し、気を抜くと...)

ローズは危うく、マリーの胸に触ってしまいそうになる。

(目の前に人参をぶら下げられた馬ってこういう気分なのかしら...とにかく、何が何でもマリーの純潔は守ってみせるわよ!!)

安らかに寝息を立て始めたマリー。その前で、

(本当に可愛い顔...それに...可愛い唇...ピンク色で...柔らかそう...)

気がつくと、自分の唇がマリーに近づいている。

(ダメ!何してるの!!)

何とか堪える。

「ううん...」

<パタッ!>

マリーが寝返りを打つ。

(あ、危なかった!!避けなければ今頃...)

ローズは結局、朝まで一睡も出来なかったのだった。


☆彡彡彡


一方、

<ゴロゴロゴロゴロ...>

大きな雷が落ちたその時。

ギルドの2階の自室からドラゴンのいた山の山頂を見上げているジークがいた。

「...これは...まさか古文書に書かれた...私の勘違いであってくれればいいが...」

そう呟きながらいつまでも山頂を見続けているジーク。

<ピカッ!>

また稲光が光る。

その光は、眉間に皺を寄せ、不安を隠せない様子のジークの姿を、ありありと浮かび上がらせるのだった...


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