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Episode 40. ジークの稽古

<キンッ!!...キンッ!!>

サクラノの門の近くで剣のぶつかり合う音が聞こえている。

通りがかりの人が不思議そうにその様子を眺めていた。


「もっと体の力を抜いて!!」

ジークの言葉にローズが肩の力を抜き、リラックスしようとする。その瞬間、

<キィィィィ~~~ン!!>

「あっ!!」

ローズの剣が弾き飛ばされてしまった。

「力を抜くというのはリラックスするのとは違う!!(ごう)の剣を振るっている状態から意識的な力みだけを取り除くんだ!!」

「はい!!」

ジークの言葉に再び剣を拾い上げたローズが、また向かっていく。

「まだ硬い!!」

「はい!!」

二人の剣戟が続く。その様子を見ながらマリーは考えていた。

(見えないなぁ...さすが、ローズちゃん...)

マリーが見つめているのはローズのドレスのスカートの裾。

さっきから一生懸命、中を見ようとしているが、ギリギリの所で下着が見えない。

(どうしたらあんな動きが出来るんだろ...)

マリーは不思議で仕方がなかった。

ローズのドレスの裾は本当に短い。

そのスラリと伸びた太ももがハッキリ見えているほどだ。

しかし、今まで一度も下着が見えたことはなかった。

(この様子じゃ、ミランダさんとの試合の時も大丈夫だったよね!!でも、意識を失ってる間に見られたかも!!)

マリーはローズの純潔が守られていることは確認できたが、下着を見られたかまでは分からなかった。

(もし見られてたら...で、でも私が選んだ可愛い下着だし、ローズちゃんに恥はかかせてないはず!!...でも他の人に見られるのは微妙だなぁ...)

そんな事を考えていると、稽古が終わったようだった。


「ふう...マリー、付き合わせてゴメンね!!...でもそんな一生懸命に見て...マリーも剣に興味があるの?」

ローズがマリーに近寄り、声をかけてくる。

「ううん!私が興味があるのはローズちゃんの下...ってなんでもない!!そ、そう!!『二人の動きがすごいなぁ』って見とれてたの!!」

マリーは何か言おうとしたが、慌てて言い直した。

「すごいのはジークさんよ!あたし、全然、歯が立たなかった...」

ローズが悲しそうな顔をする。

「そんなことはない!!私はとても高度な事を言っている。1日、2日どころか、人によっては何年もかかるような難しい事だ!!しかしローズ君は既に何かをつかもうとしている!正直、驚きだ!!」

ローズの後ろからジークの声が聞こえてきた。

「そ、そうですか?」

そう言われてローズは少しうれしそうな顔をする。

「ローズ君の剛の剣はもはや完成に近づきつつある。そして今や(じゅう)の剣もつかみつつある。後は実戦を重ねれば少しずつ分かってくるだろう...後は時間の問題だ!!」

ジークは感心したように頷きながら言う。実際、ローズの天才ぶりに驚いているようだった。

「今日はありがとうございました!!おかげであたしの中でもやもやしていたものが少し形になった気がします!!」

ローズはそう言って頭を下げた。

「それは良かった!また、時間があったら見てあげよう!それまでは魔物相手に訓練するといい!!」

「はい!!よろしくお願いします!!」

ジークの言葉にローズは再び、深々と頭を下げた。


☆彡彡彡


それから1週間後。

<キンッ!!...キンッ!!>

ローズがジークと稽古をしていると、

「あっ!!ジークさん!!...なんでローズなんかと!!」

どこかで聞いた声が聞こえてきた。

「おお!ミランダ君じゃないか!!サクラノに来てたのかね?」

「ミランダさんじゃない!!『別の街に行った』って聞いてたけど、なんでサクラノなんかに?」

ジークとローズが同時に質問する。が、

「そんなのジークさんに会いにきたに決まってるじゃないですか~~~~!...分かってるく・せ・に♡」

ミランダはローズを無視すると、ジークの側に寄り、色っぽい仕草で甘い声を出す。

「「・・・」」

唖然とするマリーとローズ。

「ミランダさんってあんなキャラだったっけ...」

ふとマリーが呟くと、

「ああ~~~。ミランダは10年前にジークさんに剣を教えてもらってから、ずっとゾッコンなんだよ...」

とキャサリンが教えてくれた。

「はっはっは!ミランダ君は相変わらずだね!!あんまりおじさんをからかうもんじゃないよ!」

ジークが顔色一つ変えずにそうやってあしらうと、

「え~~~~!!ミランダは本気です~~!!ジークさんこそ、その類まれな才能を次の世代に残さないと...私とならきっと優秀な子孫が残せますよ!!」

ミランダはそう言って、頬を染めた。

「ミランダねぇ...」

ローズは自分のことを名前で読んだミランダに呆れているが、マリーはというと、

(あ、あんなふうに迫ったらローズちゃんも...「わ、私となら優秀な子孫を...」やっぱり言えない!!)

何故か、一人、真っ赤になっていた。

「やれやれ...私はもう年だよ。ミランダ君もいい加減に相手を見つけたらどうだい??冒険者をやっていると、顔も広いだろう!!」

ジークが困ったようにそう言うと、

「私の想い人はジークさん、ただ一人です!!あの日、私に剣を教えてくれなかったら今の私は...」

ミランダは潤んだ目でジークを見つめる。

「困ったね!まさか、こんなことになるとは...とにかく、悪いが君とは付き合えない!別の人を探すんだね!」

それでもジークは頑なにミランダの求愛を拒んだのだった。

「...そうですか...でも私の気持ちは変わりません!!これからも会いに来ますね!!それくらいいいでしょう?」

ミランダはそれを聞いて悲しそうな顔をするが、ジークに向き直ると笑ってそう言った。

「・・・」

ジークがどう答えるべきか考えていると、

「それと今日、来たのには別の理由もあるんです!!」

と突然、ミランダが話題を変えた。

「別の理由??」

ジークが問い返すと、

「はい。久しぶりにジークさんに剣を習いたいと思いまして...じつは私、剣の上達が思うように進まなくて焦ってるんです...この間も...」

ミランダはそう言って、ローズの方を見た。

「あ、あれはまぐれで!!」

急に話を振られたローズは焦るが、

「あら?まぐれも実力のうちよ!!あなたは格下の魔物にまぐれで負けたら、『あれはまぐれです!』ってみんなに言うのかしら?」

「それは...」

ミランダの問いにローズは答えられない。

まぐれでも負けは負けだ。

それを素直に認めるのがカッコいい剣士だとローズは思っている。

よって、ミランダの言葉を肯定することなど出来なかった。

その様子を見たミランダは言葉を続ける。

「あれだけの大舞台であなたは私と引き分けた...あなたはそれだけのものを持っている...もちろん、いつかは抜かれる日が来るかもしれない。でも、まだまだ私はナンバーワンでいたいの!!」

ローズを見つめながらそう口にしたミランダは、今度はジークの方に向き直る。

「お願いします!!私に剣の稽古をつけてください!!」

そして、深く頭を下げるのだった。

「若いな...」

そう呟いたジークだったが、

「いいだろう!!かかってきたまえ!!」

そうミランダに答えた。そして、

「ローズ君はすまないが、しばらく自分で練習していてくれるか?」

と申し訳なさそうにローズに頼む。すると、ローズは、

「あたしも二人の稽古を見させてもらっていいですか?参考にしたいんです!!」

そうジークにお願いするのだった。

「...好きにしなさい...」

そのジークの言葉に、

「本当?!じゃあボクも!!」

「こりゃあ、楽しみだ。ジークさんの剣なんてそう見られるもんじゃない!!」

「俺も是非、見学させてもらおう!!」

キャサリン、ネルソン、ダイアンたち、ミランダのパーティメンバーも集まってきた。

「じゃあ、私も...」

マリーはそう言って、そっとローズの隣に座ったのだった。


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