Episode 30. アンデッド退治
「ピュアリファイ!!」
ワカクサが浄化魔法を唱える。
多くのアンデッドが光となって消えていった。
「すごい!!全くダメージを与えてない魔物まで...」
マリーはレベル10の浄化魔法の威力に目を見張る。
「低レベルのアンデッドならダメージを与える必要すらありません。もちろん、高レベルの魔物になるほど、浄化は難しくなりますが、それでも4分の1まで体力を減らせば大抵、浄化できます」
ワカクサがいつものように淡々とした表情で説明してくれる。
「よっと!」
<スバン!!>
ローズの一撃でスケルトンがバラバラになる。
しかし、バラバラになった骨が元通りにくっつき、元に戻ってしまった。
「そんなにダメージを与えてはいけませんわ!!ワカクサが浄化してくれますから、軽くでいいのです!」
スカーレットがそう言いながら、ゾンビを軽く撫で斬った。
「グワ~~~!!」
斬られたゾンビが襲いかかってくるが、
「ピュアリファイ!!」
ワカクサの魔法でゾンビが消え失せる。
「難しいわね!これでも手を抜いてるんだけど...」
ローズはちょうどいい手加減に苦労していた。
「ここはわたくしたちに任せて、奥の屋敷跡を見てきてくださる?」
スカーレットがそんなローズを見て言う。
「悪いわね!やっぱりついてきてもらって正解だったわ!!...マリー!行きましょう!!」
「うん!!」
ローズがマリーを伴って集落の奥へと走る。
「もし、強力なアンデッドがいたら無理をしてはいけませんわよ!!わたくしたちもすぐに向かいますから、それまで攻撃は控えてくださいましね!!」
スカーレットがローズの背中に向かって叫ぶと、
「分かってるわ!!あたしにはアンデッド退治は向いてないみたい!!頼りにしてるわよ!!」
ローズは走りながら振り返り、にっこり笑って去っていった。
「手を抜いてあれですか...全く、上には上がいますわね...」
スカーレットはそう言って、寂しそうな顔をした。
「お嬢様にはお嬢様の良さがあります。私は分かっていますのでお気を落とさずに...」
その様子を見たワカクサが元気づける。
「分かってますわ!!雑魚アンデッドはさっさと倒して、あの子たちを追いかけますわよ!!」
「はい!お任せください!!...ピュアリファイ!!」
スカーレットとワカクサはみるみるうちにアンデッドを片付けていった。
☆彡彡彡
「何もいないみたいだね!」
トロルロードの屋敷だった場所に入ったマリーたちはがらんどうになった空間を見つめていた。
「・・・」
しかし、ローズはトロルロードの死体があったはずの場所を見つめている。
「どうしたの?」
マリーが聞くと、
「おかしいわ!あれから1週間くらいしか経っていないのにもう骨だけになってるなんて...」
ローズの言葉にマリーが見ると、そこには骨しか残っていなかった。
しかも、トロルロードの骨にしては骨格がおかしな気がする。
「確かにおかしいね!でも何の変哲もない骨だよ!!」
マリーが近づいて手に取ろうとする。
「ダメ!!不用意に近づいちゃ!!」
ローズが叫ぶ。
「えっ?!」
思わず後ろを振り返ったマリーの後ろで骨が動き出し、形を作り出した。
<カチャ!カチャ!カチャ!>
「危ない!!」
ローズがマリーに飛びつき、抱きしめるとそのまま横っ飛びで骨から距離を取った。
<ズシ~~~~ン!!>
ちょうどマリーがいた場所で、重い何かで踏みつけたような音がする。
<ズザザ~~~~!!>
ローズがマリーを庇いながら、背中で着地する。
勢いでしばらく滑っていく音が響いた。
「大丈夫?!ローズちゃん!!」
マリーが心配するが、
「あたしなら大丈夫よ!!さすが魔法の防具ね!これくらいじゃ怪我もしないわ!!」
ローズは安心させるようににっこり笑う。しかし、
「あっ!!」
ローズが思わず声を上げる。マリーがローズのドレスを捲り上げ、背中を確かめたのだ。
「ホントだ!怪我してない!!良かった!!」
マリーが一安心する。
「あの...もういいかしら...」
ローズが真っ赤になりながら恥ずかしそうな声で聞いてきた。
マリーが気づくと、ドレスを後ろから高く捲り上げ、下着が丸見えになっていた。
「ゴ、ゴ、ゴメン!!」
マリーが顔を赤くしながら慌ててドレスを戻す。
「気にしてないわよ!マリーはあたしが心配で見てくれたのよね?」
ローズがまだ赤いままの顔で聞くと、
「も、も、もちろんだよ!!し、下着を見ちゃったのは不可抗力で...」
マリーはしどろもどろになってしまう。
「ふふ。あたしはマリーが心配で全部、見ちゃったものね!そのくらいいいわよ!」
ローズがその様子を可愛く思い、ついトロルロードを倒した後のことを話してしまう。すると、
「あっ!!」
マリーはその時のことを思い出して、真っ赤になってしまった。
その時、
<ズシ~~~~ン!!>
また、何かが踏みつける音。
しかし、ローズはマリーを抱きかかえると、サッと避ける。今度は余裕があったようで慌てた様子はない。
「その話は後よ!!コイツは...」
ローズが踏みつけてきた骨の塊に目を向ける。マリーも同時にそれを見つめていた。
「ドラゴスケルトン...」
ローズが巨大な魔物の名前を呼ぶ。
その魔物は骨だけでできているが、紛うことなきドラゴンの形をしていた。
「ドラゴスケルトン...これが...」
マリーが怯えた顔で魔物を見つめる。
それもそのはず、ドラゴスケルトンは本物のドラゴンと同じだけの身体能力を持つ。
ブレスは吐けないが、その代わり、体が骨だけで出来ている為、防御力が非常に高い。
特に斬撃や刺突には強い耐性があった。
「まさか、アンデッドの最上位種に出会うとはね...」
ローズもさすがに焦っているのか、額に汗が流れている。
「ど、どうするの?私の魔法じゃ...」
マリーがローズに聞くが、
「一旦、撤退よ!!スカーレットたちと合流しましょ!」
「うん!!」
ローズの言葉にマリーは同意し、二人で出口に走った。しかし、
<バキバキバキ!!>
出口が崩壊する。
ドラゴスケルトンがその長い尻尾で出入口を破壊したのだ。
「くっ!!逃がさない気ね!!そこまでいうならやってやろうじゃない!!」
ローズは逆に闘志に火がついたようだった。
ドラゴスケルトン目がけてジャンプすると、重い一撃を食らわす。
<バキ~~~~~ン!!>
「くっ!!」
思わず、ローズの顔が歪む。
骨が硬くて思うようにダメージを与えられないようだった。
「仕方ないわね!!スカーレットたちが来るまで凌ぐわよ!!」
そう言うと、ローズはマリーに攻撃が行かないように、積極的に斬りかかっていくのだった。
☆彡彡彡
<バキバキバキ!!>
目の前でトロルロードの屋敷の入口が崩壊する。
「くっ!!中で何が起こっていますの?!これはただ事ではありませんことよ!!」
スカーレットがその様子を見ながら叫んでいた。
「これはかなり強力なアンデッドがローズさんたちと交戦しているようですね。真っ先に思い浮かぶのは...ドラゴスケルトン!」
ワカクサが答える。
「ドラゴスケルトン?!バカみたいに硬い上に、斬撃に耐性がある。しかも驚くほどの体力を持っている...レベル1の浄化魔法で浄化できるまで体力を削るのは...」
「ええ。いくらローズさんでも難しいかと...」
スカーレットの言葉をワカクサが引き取った。
「とにかく助太刀しますわよ!!入口をこじ開けて...」
スカーレットが崩れた入口に向けて剣を振り上げた時、
「!!対魔法障壁!」
何かに気づいたワカクサが防御魔法を唱える。その瞬間、
「ファイアウォール!!」
<ゴォォ~~~~~!!>
無機質な声と共に、辺りを火炎が覆い尽くした。
「まさか!!」
スカーレットが振り向くとそこにいたのは...スケルトン系の魔法使いの最上位種・リッチだった。