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Episode 28. ローズの失敗

「トロルロード、倒してきたわよ!!」

ローズたちが意気揚々とギルドに戻ってくる。

「おう!ご苦労さん!!」

カウンターの近くを通りかかったマスターがそれに答えた。

「まっ!あたしにかかれば余裕よ!!」

「すごかったんだよ!!重い一撃でトロルロードの分厚い脂肪を物ともせずに!!」

誇らしげなローズと、興奮してその様子を話すマリー。


すると、

「ほ、本当に倒したんですの?!」

聞き覚えのある声が聞こえてきた。

振り向くとそこにはスカーレットと傍に控えるワカクサがいた。

「ええ!部下のトロル13匹と一緒に葬ってやったわ!!これで周りの街も安心ね!!」

ローズが得意げに答える。

「トロル13匹まで?!...も、もちろんわたくしもそれくらい退治できますけど、今回はあなたの腕を試しただけですわ!!なかなかやりますわね!!」

そうは言ったものの、スカーレットの目は驚きに見開かれていた。

「お嬢様、ウソはいけません」

「ワカクサは黙ってて!!」

冷静に忠告するワカクサをスカーレットは大声で叱った。


「はっ、はっ、は!俺の見込んだ通りだったな!!トロルロードに加え、トロル13匹か!!こりゃ結構な報酬になるぜ!!楽しみにしてな!!」

その様子を楽しげに見ていたマスターが、マリーたちに声をかける。

「ホント?!金貨100枚とか?!」

「ローズちゃん!!」

目を輝かせて尋ねるローズをマリーが恥ずかしそうに止める。

「はっ、はっ、は!さすがにそこまではいかねぇよ!!ドラゴン退治じゃそれだけ貰ったか??しかし、トロルは金にならねぇからな!!」

マスターはそう答える。

ドラゴンの素材は高く売れるが、トロルは買い手がつかないということだろう。

「まあ、それでも冒険者になって早々、ドラゴンを倒したかと思えば、今度は普通は剣が通らねぇトロルロードをあっさり斬り捨てちまったか!!大した嬢ちゃんたちだ!!」

マスターはそう言って、楽しそうに笑った。


「まあ!あの子たち、ドラゴンとトロルロードを倒したそうよ!!」

「まだ、若いのに大したもんだ!!」

「すげぇな!!将来、ミランダたちの後を継いで、王国一の冒険者パーティになるんじゃねぇのか?!」

周りでそれを聞いていた冒険者たちが感心したように話し合っている。


「わ、私は何も...ローズちゃんが倒すのを見てただけで...」

その様子に恥ずかしく思ったのか、マリーが赤くなって言うが、

「何言ってるの?!マリーがいなかったらあんなにたくさんのトロルも、トロルロードも倒せなかったわ!!もっと胸を張りなさい!!」

ローズはそう言って、皆に紹介するようにマリーの肩を掴んで前に押し出す。

「ちょ!ローズちゃん!!やめて!!恥ずかしい...」

マリーは慌ててローズの陰に隠れてしまった。

「もう!!マリーったら!!」

ローズは呆れるが、

「はっ、はっ、は!そっちの嬢ちゃんはお前と違って謙虚なんだな!!」

「うるさいわね!!」

マスターの言葉にローズが食ってかかる。

「まあ、反対の性格なのが上手くいってる理由なんだろうな!!自信がありすぎるのも、なさすぎるのも冒険者失格だ!!」

「・・・」

マスターにそう言われて、ローズは黙ってしまった。

するとマスターはマリーに向き直って言う。

「あのな、嬢ちゃん。確かに倒したのはローズかもしれねぇ!だが、嬢ちゃんは聞いた感じじゃサポート役の魔法使いだろ?サポートの善し悪しで、アタッカーの力は10倍変わるって言われてるんだぜ!!」

「そうよ!!二人でパーティを組んでから、その前よりも格段に戦いやすくなったわ!!大体、今までの戦いでマリーが役に立たなかったことってある?マリーがいなければ、負けて人生が変わってたわよ!!」

「それはそうだけど...」

ローズにもそう言われ、マリーは口ごもってしまう。

「まあ、嬢ちゃんのその性格がわりぃとは言わねぇ!でももっと自信持ちな!!そっちの方が見てて気持ちいいぜ!!」

マスターの言葉にマリーはコクっと頷いた。すると、マスターは、

「よし!!それじゃ依頼完了といくか!!おい!お前、計算してやれ!!」

「分かりました」

マスターの言葉に以前も見た、年配の受付嬢が答える。すると、その受付嬢が確認するように言った。

「あっ!分かっているとは思いますが、トロルロードの集落は火をつけて燃やし尽くしてきてくれましたよね?!」

「「えっっっ!!」」

マリーとローズが『初耳』だと言わんばかりに驚く。申し合わせたように声も揃っていた。

「ちょっとあなたたち、そんな事も知らないんですの?!強力な魔物を大量に倒した場所は、アンデッドが発生する確率が高くなりますから、火をつけて全部燃やすのですわ!!...今回ほどの規模ともなれば...」

スカーレットが慌てて叫ぶ。

「ちっ!!しまった!!言っとくべきだったか...この嬢ちゃんたちはまだ冒険者になって一か月ちょっとだ!まだ知らねぇ常識がたくさんある!!」

マスターが『しまった』とばかりに舌打ちした。

「えっ!!まさか今年、冒険者学校を出たばっかり?!それでなんでドラゴンなんて倒させてもらえるんですの?!」

スカーレットが驚愕の事実に驚いていた。

「それより、アンデッド対策だ!!嬢ちゃんたち!わりぃがもう一度戻って、火をつけてきてくれ!!アンデッドが発生していたら退治も頼む!!報酬はそれからだ!!」

マスターに言われたマリーは、

「ごめんなさい!すぐに向かいます!!ローズちゃん、行こ!!」

そう言って、ローズを誘うが、ローズは自らの失敗に落ち込み、つい、口走ってしまう。

「しまったわ...あたしとしたことがそんなことにも気づかないなんて...ちょっと、マリーのを見て舞い上がりすぎてたかしら...」

「ローズちゃん!!」

その言葉に反応して、マリーが真っ赤になる。

「あっ!!ゴメン!!あの...変な意味じゃないから誤解しないでね!!」

ローズも自分の言った意味に気づいたのか、赤くなると、周りにアピールするようにそう言った。

「変な意味ってどういう意味だよ...」

マスターが呆れているが、

「それじゃ行きましょ!!」

「うん!!」

ローズとマリーは慌ててその場を去っていこうとする。その時、


「ちょっと待ちなさい!!」

スカーレットが二人を引き留めた。

「なに?」

足を止めたローズが聞くと、

「そこのあなた!マリーといったかしら...浄化魔法は使えて??」

スカーレットがそう聞く。

「あっ、一応、使えるよ!レベル1だけど...」

マリーが答えると、

「レベル1?!それじゃ、強いアンデッドが出てきたらどうするんですの?!」

スカーレットが呆れたように言う。


『ピュアリファイ』―浄化魔法にはレベルがある。

アンデッドを倒す為にはある程度、体力を削る必要があるが、浄化魔法のレベルが高くなるほど、より高い体力でも浄化できる。

マリーのようにレベル1だと、瀕死の状態にしないと浄化できない。

かといって、ダメージを与えすぎて、0にしてしまうと、再び体力満タンで蘇ってしまう。

アンデッドと戦う際は、浄化魔法のレベルが物を言うといっても良かった。


「大丈夫よ!!あたしが瀕死で寸止めするから!!」

ローズが言うが、

「高レベルのアンデッドはそんな簡単じゃありませんわよ!!冒険者になってまだ一か月じゃ、アンデッドと戦うのも初めてじゃなくて?!」

スカーレットはローズの認識にダメ出しをする。

「でも、あたしの失態だからあたしが取り戻すわ!!苦戦しても、必ず倒してくるから待ってて!!」

ローズの言葉に、スカーレットは思わぬ提案をしてきた。

「わたくしたちも行きますわ!!このワカクサは一流のヒーラー。浄化魔法もレベル10になっていますのよ!!トドメはワカクサに任せればずっと楽になりますわ!!」

「えっ?!...でも...」

ローズは躊躇するが、

「もちろん、謝礼などは必要ございません!!この街の守護者の娘として当然の義務を果たすだけですわ!!『ダメ』だと言われてもついていきます!!」

スカーレットは何が何でもついてくる気のようだった。

「まあ、連れてってやれよ!どう考えてもそっちの方がいいし、お嬢様も行きたくて言ってるだけだ!気にするこたぁねぇ!!」

そのマスターの言葉に、

「じゃあ、一緒に退治してくれる?ただ、一つ条件があるの!」

ローズは話を持ちかけた。


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