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Episode 25. トロルロードの集落

「わぁ!なかなか立派な集落だね!魔物もこんなの作れるんだ...」

「そうね!あたしも初めて見たわ!!」

マリーとローズがトロルロードの拠点を見ながら囁き合っている。

二人は3日かけて北へと歩き、ついにトロルロードが住んでいるという丘に辿り着いたのだった。


そこは小さな村とも言えるほど完成されたものだった。

全て木を切り倒し、無造作に枝を払って丸太にしたものを組み上げただけのものだが、一応の体裁は整っていた。

まず、集落の周りを塀がぐるりと囲っている。

門のような入口があり、そこに2匹のトロルが見張りをしていた。

塀の中には家が見える。

丸太小屋のようなものだが、どれもトロルのサイズで作られている為とても大きい。

そして一番奥に一際、高い建物が建てられている。

作りも立派でおそらくトロルロードが住んでいるのだろう。


「これは思った以上に組織された集団ね!!何も考えずに突撃したら倒すのに苦労するかも...」

ローズがどう攻略するべきか考え込む。

「1匹ずつ倒すのが基本だけど...」

マリーが冒険者学校で習った事を思い出していると、

「そうね!まずは門番の2匹を倒しましょう!!そして中に忍び込んで個別に行動しているトロルを順に倒していくべきね!!」

ローズが戦略を立てる。

「でも、門番のトロルはどちらかを倒してる間に仲間を呼ばれるんじゃ...」

マリーが問題点を指摘すると、

「そこなんだけど...マリーはこんな事は出来るかしら?」

二人は何やら相談しだした。


☆彡彡彡


「ガサガサ...」

トロルロードの集落の近くの木々が不自然に揺れる。

「ギ?!」

門番のトロルがそれに気づいたようだ。

「ギギ?」

「ギ!!」

2匹のトロルは何やら相談していたようだが、やがて1匹のトロルが様子を見にいくことにしたようだ。

もう1匹のトロルに背中を向けて歩き出す。その時、歩き出したトロルの背後から音が聞こえた。

<スバッ!!>

「ギャ!!」

静かな斬撃の音と共に、トロルの短い悲鳴。

突然の事に何も分からないまま事切れたようだった。

そして、その巨体がゆっくりと倒れ出す。

そのまま地面に激突するかと思われたが、地面の周辺で、見えないクッションにもたれかかったかのようにゆっくりと落下速度が落ちる。

<ズズン...>

その巨体には似合わない、僅かな音と共にトロルが地面に崩れ落ちた。

「ギギッ?!」

その音と気配に背中を向けていたトロルが振り返る。

彼が見たのは...

剣を大きく振りかぶったローズの姿だった。

<スバッ!!>

「ギャ!!」

・・・

<ズズン...>

先程と全く同じ光景が繰り広げられる。

2匹のトロルは集落の中に気づかれることなく事切れてしまった。


「やったわね!!」

ローズがマリーに語りかける。

「ローズちゃん、すごい!!トロルを一刀両断なんて!!」

自分の数倍はある生命力の強い魔物を一撃で葬り去ったローズの剣技にマリーが称賛の声を上げる。

「ドラゴンとの戦闘でかなり成長したもの。これくらいなんてことないわ!!」

そう謙遜したローズだったが続いてマリーの魔法を褒め始めた。

「でもマリーの『エアボール』、なかなか便利ね!!これ使えるのマリーだけでしょ?すごいじゃない!!」


『エアボール』というのはマリーのオリジナル魔法で、簡単に言えば、『ファイアボール』を風属性で撃ち出したものだ。

単なる高圧の空気なので攻撃力はまるでない。

ただ、見えないので、さっきのように遠くの木々を揺らすような事ができる。

また、トロルが倒れた際に、クッション代わりに『エアボール』を置き、地響きが鳴るのを防いだのだ。


「こんなの攻撃魔法が使える人なら誰でも出せるよ!ただ、攻撃力がないから使わないだけで...」

マリーは褒められて恥ずかしそうだったが、

「『攻撃魔法は攻撃の為だけにある』という発想を飛び越えたのがすごいのよ!!マリーは自分を『器用貧乏』だって謙遜するけど、『冒険の手助けのバリエーションが多い』と考えたら、むしろ長所だわ!!」

そう言ってローズがマリーを持ち上げる。

「そんなこと...」

マリーは更に恥ずかしくなったようで俯いてしまったが、

「とにかく!!マリーのすごさはあたしが一番分かってるから!!ほら!中に入るわよ!!」

ローズはマリーの手を取って、トロルロードの集落の門の辺りまで引っ張っていった。

「ローズちゃん...」

顔を真っ赤にしながらついていくマリー。

やがて門に辿り着くと、ローズがこっそり中の様子を窺う。


「向こうに2匹、トロルがいるわね...ゴブリンに丸太を運ばせてるみたい...それ以外は...家の中かしら??」


情報ではトロルロードが十数匹のトロルを従えているとのことだった。

集落の中には奥のトロルロードの屋敷の他に、家が6軒あるようだった。

おそらくトロルが寝たり、休んだりしているのだろう。

計算では1軒にトロルが2、3匹住んでいることになる。

門番の2匹とゴブリンを監督している2匹。それにトロルロードの警護など、外に出ているトロルもいるはずなので、平均すると、現在、各家には1匹のトロルがいると考えられた。


「ちょうどいい具合に分散してるね!!どのトロルから倒す??」

マリーの問いに、

「外のトロルを倒すと誰かに気づかれるかもしれないわ!!まずは家の中のトロルから倒していきましょう!!」

ローズが作戦を決めた。

「そうだね!!いい具合に、木々や資材が散らばってるから、隠れるところには苦労しないし...」

見ると、集落の中は人間の村や街のように綺麗に整備されてはおらず、あちこちに茂みや木々があり、丸太などの資材も転がっている有様だった。

トロルから見れば小さな物だろうが、人間が隠れるには十分だ。

「よし!!行くわよ!!」

ローズが身を隠しながらトロルの家を目指す。

「待ってよ!!」

マリーもその後をついていった。



まず、一件目の家では、

「ギッ!!」

ドアを開けた途端、トロルが目の前にいた。ちょうど出ようとしていたのかもしれない。

<スバッ!!>

「ギャ!!」

・・・

<ズズン...>

まるでリピート再生のような光景が繰り広げられる。

この攻撃パターンを知っているトロルはいない。

隠密行動を取っている限り、ベストの攻略法だった。

「他には...いないわね...」

中は藁が敷いてあるだけの大きな空間が一つあるだけだった。

本当に寝る為だけにあるのかもしれない。

「複数いると厄介かもね!!でも多くても2匹でしょ!!何とかしてみせるわ!!」

そう言うと、ローズたちは次の家へと向かうのだった。


そして、

「よし!これで6軒の家、全てを捜索し終わったわ!!」

ローズが一息つく。

ちょうどいい具合に、各家にはトロルが1匹だけいた。

自分の家というものはなく、空いている家で休むシステムなのかもしれない。

その為、ちょうど分散されたのだろう。

「これで8匹倒したね!!後は4、5匹...外の2匹以外はトロルロードの屋敷かな?」

マリーがトロルの居場所を推測する。

「そうね!!その確率が高いわ!!とりあえず、外の2匹を倒したら屋敷に行きましょう!!残り3匹くらいならもう見つかっても大丈夫よ!!」

そう言うと、ローズは外でゴブリンを監視しているトロルを倒しに家を出ていった。



「今よ!!2匹のトロルが離れたわ!!」

外の茂みでトロルたちを監視していたマリーとローズだったが、2匹が離れた隙に、1匹のトロルに襲いかかる。

<スバッ!!>

「ギャ!!」

・・・

<ズズン...>

その後、もう1匹を倒すのは簡単だった。

<スバッ!!>

「ギャ!!」

・・・

<ズズン...>


「よし!!」

ローズがガッツポーズを取る。

「後は...」

マリーが何か言おうとしたが、

「グゲッ!!」

「ギャッ!」

「キキキ!」

トロルに使われていたゴブリンたちが騒ぎ出した。

「どうしよう!!あなたたちは倒さないから騒がないで!!気づかれちゃう!!」

マリーは言うが、ゴブリンたちには意味が分からないようだった。

「この数のゴブリンなら倒すのは簡単よ!!黙らせる為に始末を...」

ローズが言うが、

「ダメ!!余計な時間と力を使っちゃう!!無駄な戦いは避けないと!!」

マリーはそう言うと、ゴブリンに向け、ジェスチャーを試す。

まずは人差し指を立てて唇に当て、『シーーーー!』のポーズを取る。

すると、ゴブリンたちの騒ぎ声が小さくなった。

「いける!!」

手ごたえを感じたマリーは門の方を指差した。『逃げろ』という意味だ。

「「・・・」」

しばらく顔を見合わせていたゴブリンたちだったが、どこにもトロルの気配がないのに気づいたのか、我先にと集落から逃げていった。


「良かった!!それじゃ、トロルロードの屋敷に行こう!!」

マリーが言うと、

「...やっぱり、あたしの相棒はマリーだけね!」

「えっ!今、なんて...」

ローズの言葉に聞き返すマリーだったが、ローズは構わず、奥の大きな屋敷に向かっていった。


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