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Episode 23. スカーレット・シェナリー

「わたくしのことは『スカーレット』と呼び捨てでいいですわ!!それに敬語は必要ないと何度言えば分かりますの?!」

スカーレットと名乗った少女がマスターに食ってかかる。それを聞いたマスターは、

「そうは言いましても、あっしにも立場がありますもんでね?これでもフランクに話してるつもりなんですがね...」

そう言って困ったように肩を竦めた。

「この格好をしているときは一人の冒険者ですわ!!そのつもりで扱えと何度言えば...」

「まあまあ、お嬢様。今、問題なのはそちらの冒険者に頼まれた依頼の件なのでは...」

スカーレットは納得していないようだが、召使いの女の子がそっと収める。

「そうでしたわ!!それにトロルロードですって?!そんな大事な依頼をどこの馬の骨とも分からない冒険者に頼むなんて!!」

それを聞いたスカーレットがマリーたちの方を見て言った。

「『どこの馬の骨』ですって?!こう見えてあたしたちはドラゴンも討伐した10万ポイント級の冒険者よ!!」

それを聞いたローズが怒って食ってかかる。

「ド、ドラゴン??10万ポイント??わたくしとそんなに変わらない年に見えますのに...ホントですの?マスター!!」

スカーレットが信じられないとばかりにマスターに聞く。

「ええ。今日、サクラノの街から着いたばかりで、経歴証明書にそう書いてありまさぁ。この件を任せるのに十分な実績だと思いますがね...」

マスターはスカーレットを納得させようとするが、

「なら尚更じゃありませんこと?!まだ人間性も分からない冒険者に任せるには問題がありますわ!!その依頼、わたくしが引き受けます!!」

スカーレットは逆に難癖をつけてきた。

「お嬢様にはとっときの依頼があるんで、そっちをやっていただけると助かるんですがねぇ...」

マスターはそう言いながら一枚の依頼書を取り出す。それを見たスカーレットは、

「また、人攫いの組織の掃討ですの?!もうこの組織は壊滅寸前でわたくしが出なくとも...」

そう言って駄々をこねるが、

「お嬢様!この組織の掃討は国王陛下直々のご命令で、お父上のシェナリー伯爵にとっても大切なお仕事です。お家の為にも早く殲滅する必要があるのはご存知のはずで...」

マスターが諭すように言うと、

「そ、それは分かってますわ!!」

スカーレットの態度が少し軟化した。

すると、その様子を見た召使いの女の子がチャンスとばかりに口を開いた。

「お嬢様。それくらいにしてはいかがかと...それにトロルロードはお嬢様のような剣士とは相性が悪うございます。私がいる限りお怪我はさせませんが、倒すのは容易ではないかと...」

「...まあ、ワカクサの言う事も一理ありますわね!!でもあちらの子だって剣士...そこのあなた!!」

スカーレットが苦虫を噛みつぶしたような顔でそう言うと、いきなりローズを指差してきた。

「な、なによ!!」

ローズが答えると、

「わたくしは『スカーレット・シェナリー』!冒険者になって一年ちょっとですけど、もうこの街を代表する剣士になっていますの!!そしてこちらは...」

「『ワカクサ』と申します。お嬢様の身の回りのお世話をさせていただいております」

突然、名乗りだしたスカーレットの言葉に召使いも自己紹介し、深く頭を下げた。

「この子はこう見えて一流のヒーラーですのよ!覚えておくことね!!...次はあなたが名乗りなさい!!」

そう言って、ローズに自己紹介を迫った。

「なに??いきなり...まあ、いいけど...あたしは『ローズ』。サクラノから来た剣士よ!!そしてこっちが...」

「あ、あの...『マリー』っていいます...一応、魔法使いです...」

二人はその勢いに押され、名前と職業を口にする。

「『ローズ』に『マリー』ね!!どうせあなたたちなんかにこの依頼、こなせるわけありませんわ!!無理でしたらわたくしがやりますので怪我しないうちに帰ってくることですわね!!」

そう言い残すと、人攫い討伐の依頼書を手にギルドを後にする。

ワカクサも軽く頭を下げると慌ててスカーレットについていった。



「なに??あの子...」

後に残されたローズが不満げに口にする。

「ああ、わりぃな!あの子はこの辺りを統治しているシェナリー伯爵の娘なんだが、とんでもねぇおてんばでな!!ああやって冒険者をやって強い相手と戦いたがってるわけよ!!」

マスターがそう言って、『やれやれ』といった顔をする。

「でもそんなお嬢様が冒険者なんかやっていいの??」

ローズが当然の疑問を口にするが、

「当然、オヤジさんも大反対だ。それでも言うことを聞かねぇらしい。『危ない仕事はさせるな』って言われちゃあいるが、本人は大きな仕事をしたがってる...こっちの身にもなってくれよ...」

マスターはそう言って項垂れた。

「強いの?」

ローズは興味があるのかそう聞くと、

「そうだな!あの子も言っちゃあいたが、この街に常駐するパーティの中では一二を争う剣士だ!だがさすがにトロルロードはな...」

マスターの言葉を聞いたローズは、

「へぇ、あたしたちとそんなに変わらない年なのに相当なものじゃない!」

と少し感心したように口にしたが、、

「おいおい。冒険者歴、一か月も経たねぇうちにドラゴン倒したヤツらが言うかよ!!それにしてもよくドラゴンなんて倒させてもらえたな!!」

マスターはローズの言い様に呆れたようにそう言った。

「それがダメ元で言ったんだけど、なぜかジークさんがオーケーしてくれたのよね...あたしが言うのもなんだけど、どういうつもりだったんだろ?」

ローズは首を捻っている。

「...本当はジークさんが倒したかったんじゃねぇのか?!それをお前らが本当に倒しちまって...」

「まあ、いいじゃない!あの子たちのことは覚えておくわ!それじゃ行きましょ!!」

マスターの言葉を流して、ローズが帰ろうとするが、

「・・・」

マリーは何か考えているのか動こうとしない。

「マリー!!どうしたの?!もう帰りましょ!!」

「あっ、ゴメン!!ローズちゃんって、スカーレットちゃんみたいな子が...ううん、なんでもない...」

ローズの言葉にマリーは意味ありげに何か言おうとしたが、慌てて打ち消して外へと歩き出した。

「...どうしたのかしら...」

ローズは少し気になったが、先に行くマリーについてギルドを出ていくのだった。


☆彡彡彡


その日の夜。

「私の胸...気に入らないのかな...」

浴室で自分の胸を両手で支えながら鏡で見つめているマリーがいた。

「私の方がおっきいのに...」

そう言って溜息を吐く。

そして思い出すのは、

(ローズちゃん、スカーレットちゃんの胸、じっと見てた...その後もスカーレットちゃんの事、いろいろ聞いて...もしかして...)

そこまで考えてマリーは頭の考えを振り払うように激しく首を振る。

「大きすぎるのも良くないのかも...今度、小さく見えるブラ、探してみようかな...」

そう言ってもう一度、溜息を吐くのだった。


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