表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/59

Episode 21. シェナリーのギルドに行こう!

「あっ!見えてきたわ!!あれがシェナリーの街よ!!」

ローズが前方を指差し、声を上げる。


サクラノの街を出発してから一週間。

朝、食事を取ってから転移石で移動場所まで転移し、歩き出す。

昼過ぎに休憩を取り、しばらく休む。

その後、夕方まで歩いたら、どこか人目につかない場所を見つけ、転移石を土に埋める。

これは、人や動物が持っていかないようにする為だ。

そしてそこからサクラノの家まで転移し、お風呂に入り、夕食を取る。

その繰り返しだった。

魔物に気をつけながら野営しなければならない、普通の冒険者とは違い、とても快適に旅をする事ができた。

途中で遭遇する魔物も、ドラゴンを倒したローズにとっては、倒すのは朝飯前だ。

天気にも恵まれ、二人はあっけなくシェナリーまで辿り着いた。


「あの門、懐かしいな~~~!」

門が見えてくるとローズが感慨深げに話し出す。

「ローズちゃんが育った街だもんね!!」

マリーが笑顔で答えると、

「孤児院で退屈な毎日を送ってただけだけどね!特に楽しい思い出もないわ!」

ローズはぶっきらぼうにそう言った。

「ローズちゃん...」

マリーが悲しそうな顔をすると、

「ゴメン...変な話したわね!でもそれは昔の話!!あたしたちはこれから、この街ででっかい仕事をやり遂げるのよ!!新たな伝説のスタートね!!」

ローズはそう言って、ふてぶてしく笑った。

「うん...」

静かに微笑むマリー。

やがて二人は門をくぐり、街の中に入った。



「うわぁ~~~~!!」

街の中に入ると思わずマリーが声を上げる。

門を通り抜けると、目の前には大きな通りが3本、放射線状に伸びており、荷馬車がひっきりなしに走っていた。

通りに沿って大きな建物が並び、どこまでも続いているようにみえる。

はるか遠くに見える丘は木々に囲まれ、そこに大きな邸宅が建っていた。おそらく領主のものだろう。

こんな大きな街を見るのはマリーにとって初めての経験だった。

「すごい!!これ、全部、シェナリーの街なんだよね?!どれだけの人が住んでるの?」

マリーはその規模に圧倒されてしまう。

「ふふふ。この辺りで一番の大都市だもの!!これ以上の街と言えば、王都と他に数か所くらいしかないわね!!」

そんなマリーにローズが説明してあげた。

「王都ってこれ以上なの?!...どんななんだろう...想像もできないや!!」

マリーがポカンと口を開けている。

「そういうあたしも見た事ないんだけどね!!あたしも王都を見たら今のマリーみたいになるかも!!」

ローズはそう言って笑った。

「私、そんな変な顔してた?!」

マリーが恥ずかしそうにしているが、

「ふふふ。呆気に取られてるマリーも可愛かったわよ!」

「もう...冗談ばっかり...」

ローズの言葉にマリーはそう言いながらも、ほころぶ顔を取り繕うことが出来なかったのだった。



しばらく大通りを歩いていくと、急に人通りが多くなる。

商人や道行く人の賑やかな声が聞こえてきた。

「なに?!」

マリーはビックリするが、

「ああ、あそこはこの街の市場なのよ!!いろんな店がたくさんあって、人も多いわ!!はぐれないように気をつけて!!」

そう言ってローズは市場の中へと歩いていく。

「待って!!」

マリーが慌ててついていくが、喧騒とあまりの人の多さに唖然とするばかりだった。

「マリー!!こっちよ!!市場を抜けたら、冒険者ギルドはもうすぐだから!!」

ローズが声をかけるが、

「あっ!!ごめんなさい...あっ、待って~~~!!ローズちゃ~~~ん!!」

マリーは人ごみに慣れないのか、通行人にぶつかったり、行く手を塞がれたりして、なかなかローズについていけない。

「もう!!仕方ないわね!!」

「あっ!!」

そう言ってマリーの手を取ったローズ。

そのまま手を引いて歩いていく。

「・・・」

マリーは真っ赤になって、じっと繋いだ手を見ながらローズについていくのだった。



「・・・」

二人はそのまま手を繋いだ状態で、冒険者ギルドまでやってくる。

シェナリーの冒険者ギルドはサクラノの10倍はありそうな大きな建物だった。

しかし、マリーの意識は繋いだ手に集中している。驚くことも忘れてギルドに入ろうとした時、

「あっ!!手を繋いだままだったわね!!ゴメン!!気がつかなくて!!」

ローズが慌てて手を離した。

「あっ!繋いだままで...ううん...そうだね!私も気づかなかった!!」

マリーは名残惜しそうに何か言おうとしたが、慌てて打ち消すとにっこり笑ってそう言った。

しかし、その笑顔はどこか寂しそうだった。

「マリー?...ううん、なんでもない」

ローズは一瞬、何か感じ取ったようだったが、すぐになんでもないと思ったのか、そのまま受付へと歩いていく。

「・・・」

マリーも無言で後に続くのだった。


「結構、すいてるね!」

マリーが周りの様子を見ながら言う。

「そうね!ちょうど昼過ぎで一番、人が少ない時だからかしらね!朝とか夕方だったら大混乱だと思うわ!!」

そうローズに言われたマリーだったが、冒険者ギルドは朝と夕方が賑わうのはサクラノも同じだった。

朝は依頼の受注。夕方は依頼の完了報告が多い。

ある意味、当たり前の会話だったのだが、

(でもこんなに大きい建物が大混乱ってどれだけ人がいるんだろう...)

マリーはちょっと怖くなるのだった。


「お願いします!!」

ローズが空いているカウンターの受付嬢に話しかける。

サクラノと違って何人もの受付嬢が並んで処理をしていた。

「はい!なんでしょう!!」

明るく答える受付嬢にローズが言った。

「あたしたち、サクラノの冒険者ギルドから来たんですけど、手続きをお願いします!!これが経歴証明書です!」

そして、サクラノで受け取った経歴証明書を渡す。すると、

「少々、お待ちください」

受付嬢はそう言うと、カウンターの奥に歩いていった。

「マスター!!経歴証明書の確認をお願いします!!」

そう言って、奥の40代くらいの大柄な男性に声をかけている。


その男性は赤髪を短く無造作にカットしている。

筋骨隆々で身長も高い。とても威圧感を感じさせる風貌だった。


「あれがシェナリーのマスターなんだね!!」

マリーがその様子を見ながら言う。

「そうね!あの体つきだと、昔は冒険者を目指していたのかしら?」

ローズの言葉に、

「でも、ジュークさんより随分、若いね!!」

マリーが答えると、

「『冒険者を目指したけど、むしろ管理の方が向いてた』って感じかしら?ジュークさんは現役を引退してからマスターになったから年を取っているのよ!!」

ローズがシェナリーのマスターの経歴を予想する。

すると、シェナリーのマスターと目が合う。

マスターはニコッと人懐っこそうに笑うと二人のもとへやってきた。


「おう!!お前らすげぇな!!冒険者を始めて間もねぇのにドラゴンを倒しただぁ??ポイントも随分溜まってんじゃねぇか!」

大きな体に見合った大きな声でそう言う。


すると周りがざわめき始めた。

「まぁ!あの女の子たち、ドラゴンを倒したらしいわよ!!」

「へぇ~~!そんな強そうに見えないけどな!まぐれじゃ...」

「じゃあ、お前、まぐれでドラゴン倒せるのかよ!!」

「それは...」

冒険者たちがその事実を知って、憧れと、少しの懐疑の目で二人を見る。


「ちょっとおじさん、声が大きい!!変に目立っちゃうじゃない!!」

ローズがマスターを睨む。

見ると、恥ずかしそうにしているマリーをローズが庇っていた。

「わりぃ、わりぃ!!この通り正直な性格なもんでな!!...しかもジークさんのお気に入りみてぇじゃねぇか!!文面から分かるぜ!!」

シェナリーのマスターはそう言った。

「『ジーク』??ジュークの間違いじゃ...それにジークっていったら...」

ローズが何かに気づいたようだ。

「ああ!『ジューク』はジークさんが冒険者をやめてギルドに入った時につけた名だ!!...確か現役時代に19匹の古代竜を倒したことにちなんだんだったかな!」

マスターは何気なくそう言った。

「やっぱり!!あの有名な『ドラゴンスレイヤー・ジーク』!!まさかうちのギルドマスターが...」

ローズが驚きの声を上げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ