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Episode 15. ドラゴン退治の報酬

「今回はご苦労だったね。ドラゴンを倒してくれたおかげで助かったよ!」

席に着くと、マスターがお礼の言葉を述べた。

「いえ、あたしから言い出したことですし...それに正直、あれほど強いとは思いませんでした。マリーの機転がなかったらどうなってたか...」

ローズがそう言って苦笑いをする。

「わ、私はちょっとサポートしただけで、ドラゴンはローズちゃんが一人で倒したんです。それに最後に気を失って、ローズちゃんに心配をかけて...」

マリーは照れくさいのか、謙遜して言うが、

「いや、魔物との戦いはパーティ全体の手柄だ。サポートも含めて全員が協力しなければ強い魔物には勝てない。謙遜することはないよ!」

マスターがマリーに笑いかける。

「そうよ!あたしは今回はマリーの手柄の方が大きいと思ってるわ!!だからもっと胸を張って!!」

「あ、ありがとう...」

ローズにも褒められ、マリーは恥ずかしそうにお礼を言う。

「正直、私も本当に討伐できるとは思っていなかった。見事なものだ!他の冒険者も二人を見直すだろう!」

マスターは楽しそうにそう言う。

「そ、そうかな?」

とマリーは自分たちの業績をあまり実感できていないようだったが、

「それはそうだ。ドラゴンは存在するだけで脅威だし、他の魔物が山から下りてきて街も危険な状態にあった。アリサ君たちを待たずにその脅威を取り除けたのは大きい!」

マスターはそう言って、感心したように頷いた。

「アリサさんたちなら倒せるんですね。そんなに力の差があったなんて...でもかなり縮まったはずです!あたし、この戦いで強くなりました!!」

アリサの名前を聞いたローズは一瞬、微妙な顔をしたが、思い直したのかそう言って、胸を張る。

「そうだね。ローズ君の成長なしに、ドラゴンは倒せなかっただろう。それに話を聞くとマリー君も大事な働きをしたみたいじゃないか!二人はいいパーティになりそうだな!」

マスターは上機嫌だ。

「・・・」

「へへへ」

マスターの言葉に見つめ合って、微笑むローズと照れ笑いをするマリー。

「それにドラゴンの素材は高く売れるんだ!その分も含めて報酬はかなりの額になるよ!」

「ホントに?!」

マスターの発言に食いつくマリー。しかし、

「あの...報酬が目当てでは...」

自分の態度ががめついと感じたのか、マリーは恥ずかしそうに俯いてしまった。

「ははは。報酬を求めるのは冒険者として当然だよ!気にすることはない!」

マスターにそう言われて、

「で、いくらになるんですか?それにポイントも!!」

ローズが目を輝かせる。

「ローズちゃん!!」

マリーが食いつくローズをたしなめるが、

「ははは。それでこそ冒険者だ!私も若い頃は...と、これはどうでもいい話だったね!報酬は...」

<<ゴクッ!!>>

二人の喉が鳴る。

「10万ポイントと金貨100枚だ!!」

「「え~~~~~~~~~!!!」」

報酬の大きさにマリーたちは思わず大声で叫んでしまった。

「そ、そ、そ、そんなに...」

マリーは驚いて言葉が続かない。

「それだけあれば、欲しかった武器も防具も買える!!それにそれだけポイントがあれば依頼も...」

ローズは早速、今後のことを考えていた。

「ああ、このギルドの依頼なら受けられないものはないし、それだけ実力があるということだから、大きな街のギルドに行って、でかい仕事を請け負ってもいいだろう!!」

マスターの言葉を聞いたローズは、

「でっかい仕事...最強の冒険者になるあたしの夢に近づく第一歩だわ!!」

そう言って目を輝かせていた。

「...他の街か...」

しかし、マリーの顔は暗かった。

「マリーは乗り気じゃないの?!...まあ、マリーは肉親も友達もいるものね...でも、たまに帰ってくれば...」

ローズが言うが、

「う、うん...ローズちゃんがそうしたいんなら私ももちろん、ついていくよ!でもあの家、もったいないなぁ...」

マリーはむしろ、今、住んでいる家が気に入っているようだった。

「そうね!あれだけ居心地のいい家は他にないわね...でも冒険者に安住の地はないのよ!」

ローズの言葉に、

「分かってる...でも何週間も体を洗わないとか...恥ずかしくてローズちゃんに見せれない!!」

マリーがそう言って、顔を両手で覆うが、

「なっ!マリー!!なに言って!!」

ローズが慌て出す。その顔は真っ赤だった。

「あっ!!」

マリーも自分の言った意味に気づいて同じく真っ赤になる。

すると、その様子を見たマスターが、

「何の話だい?」

と不思議そうに問いかけてきた。

「「な、なんでもありません!!」」

二人は揃って返答を拒否したのだった。


マスターは二人の様子に首を傾げていたが、

「あっ!それと言っておかなければならないことがあった」

思い出したようにそう言った。

「なんですか?」

ローズが聞くと、

「まず、ローズ君に貸した剣だが...」

とマスターの言葉に、

「はい!おかげでドラゴンを倒すことができました!!約束通りお返しします!!」

ローズはそう言って、マスターから借りた剣を机の上に置いた。

「いや、そうじゃない!その剣はローズ君にあげよう。良ければ使ってやってくれ!!」

とマスターが言う。

「えっ!!でもこんなにいい剣を...」

ローズが戸惑うが、

「いい剣だと分かるか!なら尚更使って欲しい!!私は既に最高峰の剣を手にしている。だから、手元にあっても使う機会がない。それをもったいなく思っていたんだ!!」

マスターはその理由を教えてくれる。

「でも...」

ローズが尚も遠慮していると、

「いいかい!本当のいい剣とは買うものでない。職人が丹精込めて打ったものを使い手が育てていくんだ!!」

マスターが『剣』というものについて持論を話し出す。

「私は若い頃、初めての大仕事で得た金でその剣を作ってもらい、ずっと大切に使ってきた。その結果、買った時よりもいい剣になったと信じている!!」

「あたしもそう思います!!使い手の努力...経験...そんなものが詰まっているというか...この剣を振るたびにあたし、『剣』というものを教えてもらっている気になるんです!!」

マスターの言葉にローズも同意する。

「だからこそだ!!私にはもうその剣は必要ない...しかし、それでその剣の成長を止めてしまうのはもったいない!!ローズ君ならその剣を成長させられる!!今回の件でそれを確信した!!だからローズ君に使ってもらいたいんだ!!」

マスターはそう熱弁した。

「マスター...」

ローズの目が潤む。

「頼む!!私の剣を引き継いでくれ!!そして、その剣が必要なくなった時に、次の使い手にまた引き継ぐ!それがローズ君の仕事だ!!」

マスターはそう言って、ローズを見つめた。すると、

「...はい。分かりました!!あたし、きっとこの剣と一緒に成長します!!そして十分、強くなった時に、新しい適任者に譲る!それをこの場で約束します!!」

ローズはそう言ってマスターを見つめ返した。

「頼んだよ。ローズ君...この剣ともさよならだね。今までありがとう...」

マスターは机の上の剣に頭を下げたのだった。


そして、しばらくの後、頭を上げたマスターは、一組の銀色に輝く石を取り出した。

「それと君たちにはこれをあげよう!さっきの『家を手放したくない』という望みを叶えてくれると思うよ!」

そう言ってウインクするマスターに、

「「どういうことですか?!」」

二人の声が揃った。


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