No.019 飛翔(Ⅱ)
シグナルイエローが第一チェックポイントを抜ける──非戦闘区域を抜けた瞬間、先に行動を起こしたのは意外にもレオニーズ・ワンだった。
腰部を捻り、まるで背泳ぎの様な姿勢でシグナルイエローが発砲する前に手持ちのライフルのトリガーを引いた。
レオニーズ・ワンはスラスターの大部分が腰部より下に集中している。
その為、上体の姿勢を自由に取っても減速し辛い。
レオニーズ・ワンの射撃は狙いも雑ではあるが、牽制としての効果は絶大だ。
シグナルイエローの目論みは外れ、回避を余儀なくされる。
だが、彼がそこで諦めるわけがない。
シグナルイエローを操るのは私立伊藤学園──この県大会の優勝候補の一角だ。
そんな選手が、この程度の牽制で追撃を諦める筈がなかった。
レオニーズ・ワンの銃撃を迂回するように、しかしながらシグナルイエローは距離を詰める。
サブスラスターを最大限有効活用し、まるでスズメバチのような機敏な機動を見せる。
細かく動くことでレオニーズ・ワンに的を絞らせない。
一瞬の攻防、レオニーズ・ワンの銃口は黄色い残影を捉えきれない。
反対に、シグナルイエローの銃口は迷わない。
「──ッ!」
けたたましい銃声と共にアサルトライフルが無数の弾丸を吐き出す。
ここに来てようやく危険を感じたレオニーズ・ワン、だが回避が間に合う距離ではない。
積層防盾を構える──着弾。
三発のペイント弾が盾に着弾し、白い盾を蛍光ピンクに染める。
瞬間、激増する重量。
付着したペイントが瞬時に二十倍の重量を帯びる。
その加重に姿勢を崩しかけたレオニーズ・ワンはすぐさま、積層防盾の機能を使う。
着弾した部分の装甲が、ペイントごと剥がれ落ちる。
これこそが積層防盾の機能。
玉ねぎのように複数の装甲を重ねた盾で、着弾した部分を表面装甲ごとパージできる。
故に数回だけ、加重を気にせず防御に使えるのだ。
しかし、レオニーズ・ワンの所持する盾はその一枚のみ。
それを、シグナルイエローの銃撃を防ぐのに用いた──。
──それを、その瞬間を待っていた者が一人いた。
表面装甲のパージを終えたタイミング、その時レオニーズ・ワンの肩に衝撃が走り、機体が仰反る。
弾けた弾丸から噴出したのは、肩どころか機体の三分の一を埋めるような蛍光イエローのペイント。
その攻撃は、レオニーズ・ワンとシグナルイエローはおろか凛月の駆るガラテアよりも後方から。
ブリッツ・ティガーの狙撃。
最後方からの一撃が、先駆者に致命傷を与える。




