No.016 本性と適正
▽▲▽
「──悪い、無茶させすぎたな」
緋菜が帰ったあとのガレージにて、ミナトはパイプ椅子に腰掛けてグロッキー状態の凛月に謝罪をした。
いくらなんでも、女の子にさせる訓練とかじゃなかったと真面目に反省したのだ。
「正直、調子に乗ってた」
「み、みーくん?」
しっかりと頭を下げて謝る彼の姿に、被害者である凛月の方が少し面食らっていた。
「俺の悪い癖だ。自分基準でなんでも考えてしまう」
自分が出来るのなら、他人も出来るだろう。
自分がこうしたから、他人もこうする方がいいだろう。
ミナト自身には全く悪意はない──むしろ彼なりに相手の為を思った善意の行動。
しかし、誰も彼もがそう出来る訳じゃない。
実際、彼は過去にそれで大きな失敗を──孤立をした事があった。
それなのに、また同じ過ちを繰り返しかけたのだ。
「コレが一番効率が、って言ってもお前には無茶苦茶だったよな。凛月には、まず楽しんでもらわないと」
凛月がW.G.P.に興味を持ってくれたことが嬉しくて、彼女が公式戦に出ても勝てるように仕上げようと思っていたが、多分それは間違いなんだとミナトは感じた。
──新規には、まず楽しんでもらわないと。
勝利は楽しい、だがまずは勝つだけでない『楽しい』を知ってもらわないといけなかった。
勝利を至上の喜びと感じる根っからの闘争者なんて、早々居ないのだ。
──自分の様な、闘争者なんて。
「だからごめんな、明日からはまず──」
「──なんで?」
ミナトの謝罪に、凛月はそんな疑問符を投げかけた。
予想外の問いかけに思わずミナトは顔を上げて彼女を見る。
凛月は、きょとんとした様子で彼を見つめていた。
まるで、謝罪の意図が理解できないかのように。
「勝負なら勝つのが一番良いんじゃ無いかな? 誰だって、どんな時だって、負けて楽しいわけ無いし」
彼女は純粋な目を向けてくる。
勝てるように無茶な訓練をやったミナトに対して、何故当然のことをして謝っているのかが、理解できないといった風に。
「勝負なら、取り敢えず勝つべきです。勝つ為に戦うべきです。負けて得るモノもあるかもしれないけど、勝った方が良い」
その時、ミナトは彼女の瞳の奥に怪しい光を見た。
普段の彼女の様子とは似ても似つかない、かつての自分と似た、闘争心からくる渇望の──貪欲な光を。
凛月の境遇や性格について、ミナトはあまり多くを知らない。
親戚だからといって、多く交流があったわけではないからだ。
だがこの時、彼は初めて凛月のことを知りたいと感じた。
凛月がミナトの過去を知らないように。
ミナトもまた、凛月の過去を知らない。




