No.012 W.G.P.U18(Ⅱ)
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「W.G.P.ってのは、エンジェノイド同士で空飛びながら銃撃戦で妨害しながらのレース競技だ!」
それを聞いて、凛月は目を輝かせる。
「そら、空飛べちゃうんですか!」
わー、と手を叩いて喜ぶ凛月だが一瞬でもう一つの事に気がつく。
「──ってえ、バトル?」
「そう、銃撃戦」
反芻するように事実を再確認する凛月。
そして次の瞬間、残像が残るレベルの首振りで「否」を伝える。
「むりむりムリ無理む、む、無理です! 銃撃戦って! ここ日本ですよ法治国家ですよ!?」
彼女の脳内で、世紀末的な世界でバチバチにエンジェノイドが殺り合ってる映像が再生されている。
そしてそんな兵器を部活で扱っている事実に驚愕の悲鳴を上げる。
「も、もしかしてこの部活っていわゆる反社と言われる──」
「あたしたちのどこが反社じゃいってみろよ、あ゛あ゛?」
「お前のリアクションは反社じゃんか、よ」
頭痛を感じて額を押さえるミナト。
「まず銃撃って言っても実銃じゃなくてエンジェノイド用の規格の銃で尚且つ弾も殺傷力のない特殊なペイント弾だから安心しな」
しかしながら、コレは説明を忘れた自分の責任であるので、ちゃんと解説してやらねばと気合いを入れてホワイトボードに筆を走らせる。
「てか、前にもこんな事あったな」
説明を忘れた結果、拗れた事例が前にもあった。
──しかも割と直近に。
(案外俺は、学習しない生き物なのかもしれない)
自分の嫌な駄目な一面を認識してしまい、若干ブルーになる。
閑話休題。
「改めて、そして順を追って説明すると」
ミナトは一通りの説明文と図を一気に書き殴ってパンとボードを叩く。
「W.G.P.は指定規格のカスタムエンジェノイドを操って海の上を飛びながら、指定されたチェックポイントを通過して最終的にゴールに着いた順位を争う競技になる」
「そんで、その最中に専用の装備を使った妨害もありってのが他のレースとは違う点ッスね」
人差し指をくるくると回す奇妙なジェスチャーをしながら冬治朗が補足する。
「まず、コースについて」
そういいながらミナトはペン先でボードに描かれた図を指し示す。
「海上にホログラムマーカーによるチェックポイントが五つ設置してあって、このマーカーに触れると通過扱い」
コースの図にチェックポイントが五つ描かれていて、五角形のように見える。
「そして、マーカー同士の間は約二百メートルで一周が一キロくらいになる」
各ポイントにそれぞれ番号を記入していくミナト。
「順番通りにコレらのチェックポイントをクリアしていけば、道中は飛行ルートや高度は自由──自由だが、まぁある程度のセオリーというか最適解みないなのはあるから大体飛び方はパターン化してるけどな」
指を折って何かを数えながら、「自由といいながら自由じゃねーよな」と苦笑いを浮かべるミナト。
そしてその五角形の⑤と書かれた点と①と書かれた点までの間に線を引き、そこに"非戦闘区間"と書き込む。
「スタートしてから第一チェックポイントまでの間は非戦闘区間と呼ばれていて、この間は戦闘や妨害行為は禁止されている。だがここを過ぎてしまえは、各種戦闘や妨害行為などなどが解禁されるんだ」
ふんす、と鼻息を鳴らして更に夢遊も不機嫌そうな様子なまま続きを話す。
「下の海に着水すると失格になるけど、それ以外はなんでもアリよ」
「な、なんで、も?」
凛月のイマイチピンと来ていない反応に、ニヤリと夢遊は嗤う。
非常に意地の悪い笑顔だ。
「なんでも、よぉ。銃で撃つだけじゃなくて、進路妨害や体当たりに脅迫人質──あだッ!」
「嘘教えんな!」
ミナトはスタスタと早足で近づき、無駄に彼女を脅かそうとする夢遊の脳天にチョップを叩き込む。
「実際は、装備した銃火器等を使ったドッグファイトができるようになる」
ここまで聞いたところで、凛月が挙手をする。
行儀のよい質問の姿勢にミナトはややいい気になって、教師になったつもりで「凛月くんどうぞ」と声をかける。
「じ、銃撃戦っていってもペイント弾なんだよね? それって撃たれても痛くないんじゃ?」
凛月の疑問はある意味もっともだと言えた。
普通ペイント弾を使うなら、機体の何%被弾で失格──とかのルールだろう。
だが、先程の夢遊の言葉が真実ならば失格になるのは着水のみ。
ならば、ペイント弾には何の意味があるのだろうかと彼女は思ったのだ。
「あぁ、実はこれに使われている塗料が特殊でさ。空気に触れると、即座に重量てか比重が二十倍に増えるんだよ」
「十倍? ってことは、えーと一キロ分当てたら二十キロ増えるってこと?」
「そして、これは飛行レース。デッドウェイトが増えれば増えるだけ──」
「──不利になる!」
自分の伝えたい意図を汲んでくれた凛月にミナトはサムズアップを返す。
実際のところは、荷重に加えて塗料自体が持つ粘度もあって推進系やセンサー系に着弾してしまうとかなり不味いことになったりもするのだが。
次にミナトがペン先で指すのはエンジェノイドの図。
「出場するエンジェノイドは主催のW.G.P.協会指定のパーツと武装を、決められた条件以内で組み上げたモノであればOK」
ペン先で次々とエンジェノイド図の各所を示しながらツラツラと説明する。
そしてある程度の説明を終えたミナトは、期待半分不安半分みたいな表情で見上げてくる凛月に対してこう言い放った。
「そして凛月には操者としてW.G.P.U18に出場してもらうつもり。取り敢えず目指せ、全国!」
「え、えぇぇえ!?」




