No.011 W.G.P.U18(Ⅰ)
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あれからしばらくして。
ドロ研のガレージにて、凛月の入部を記念した会が開かれていた。
「では改めて、凛月の入部と操者就任を祝した作戦会議を始めます!」
「「あーい」」
ホワイトボードの前に陣取って張り切って司会進行をするミナトと、対面にパイプ椅子を持ち寄って座った凛月と冬治朗が素直な返事を返す。
そして残る一人、部長の夢遊はというと。
「むっすー」
「口で、むっすーとか言う奴はじめてみたわ」
彼らから少し離れた所でパイプ椅子に逆に座り、背もたれに組んだ両腕を乗せて不機嫌そうにムクれていた。
「あたしは素直にカンゲー出来ないケドなー!!」
ギロリと凛月を睨みつける夢遊とその視線を受けてびくりと肩を振るわせる凛月。
凛月を庇うように冬治朗が二人の間に入ってその刺すような視線を遮る。
「まぁ、まぁ、棘を抑えてワニ先輩!」
「なーにーよー今別! その子庇うの!?」
じたばたと子供のように椅子を揺すり抗議する夢遊の姿に、眉間に皺を寄せるミナト。
「ちなみに聞くが、何が不満なんだ?」
「それはもちろん──」
そう言って彼女はズビシッと自分の真後ろを指差す。
「──なんで、あたしの機体をあんなにボロボロにした子を操者にしなきゃならないのよ!!」
そこにあったのは、割とボロボロの状態のエンジェノイドだった。
脚部フレームに微細な歪みに関節部にゴミ、装甲の一部欠損などその他微細な不調が各種出ていた。
「走るなって、走るなって言ったのにぃ!」
バタバタガタガタと椅子を揺らして憤慨する夢遊を呆れたように見つめるミナト。
「あん時は、まぁしゃーないじゃんか」
「でもそのせいで結局部活紹介までに機体間に合わなくて、新入部員ゼロになったじゃん」
そう、夢遊の言う通り。
結局、あの一件で中破してしまった機体は直ぐには元に戻らず。
新入生に向けた部活紹介会には実機を出してパフォーマンス、もといアピールすることは叶わなかった。
「う、うぅ、ごめんなさい」
「謝んなくていいッスよエズっちゃん。まぁ、仮にやっても対して結果変わんなかったと思うッスけどね」
謝る凛月に対して、サラッと変なあだ名をつけつつフォローを入れる冬治朗。
だが、その言葉はフォローではあるが嘘は微塵もない。
「まぁ、元からコレがやりたいんならウチの高校来ないだろうからな」
「そ、そうな、の?」
「不本意ながら、な」
腕組みをして悩ましげに首を傾げるミナト。
「この辺だと二校、全国レベルで強い高校があるんスよ」
冬治朗の言葉に頷きながら、ミナトはキュポッとマジックペンの蓋を開ける。
「野辺地工専と私立伊藤学園だな。ワルキューレグランプリの本戦に抜けるのは毎年どっちかだからな」
後ろを向いて背後のホワイトボードにきゅるきゅるとペンを走らせる。
野辺地工専伊藤学園の二校をデカデカと書く。
「この二校がめちゃくちゃ強くて、本気でワルキューレグランプリやりたい奴らは大体ココ行くから、さ」
「へー」
話を聞いても何が問題なのか、どう問題なのかわかってない凛月は間の抜けた返事を返す。
そして、しばらく考えたのちに彼女はある質問をする。
「あ、あのひとつ質問があります」
「はい、なんですかリッキくん」
「ワルキューレグランプリって何?」
パキン、と何かが凍りついた音がした。
気まずい沈黙が降り、凛月が「やばい何かしくじったかも」という表情をする。
「パイセン?」
「浪岡?」
しかし、二人が責めるような視線を向けるのは凛月ではなくミナトだった。
そして当人はさっと三人から顔を背ける。
「──わ、ワルキューレグランプリとは!」
「あ、アイツ無理矢理誤魔化すつもりだ」
「説明しないで誘ったんッスね」
シラーっとした空気を無理矢理テンションでミナトは突破を図る。
「わ、W.G.P.とはエンジェノイド同士による飛行バトルレースのこと! そして我々が目指すのはそのU18大会だ!!」




