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あるはずのない思い出
あるはずのない思い出が
次々と溢れてくるの
こんなことあったはずがない
わかっているのに
思い出すのは夏のある日
疲れて眠ってしまったあたしに
あなたはそっと言ったんだ
「大好き」
そんなわけないよね
だってあなたはあたしのこと、嫌いだもんね
あたしも嫌い 大嫌い
でも好きだって気づいたのは あなたが死んだあの日のこと
あたしが小さい頃にも
あたしに可愛いって言ってくれたのは
意地悪だよね? あたしはちっとも可愛くないのに
こんなあたしでも愛してるだなんて言ったのは
あたしが作った思い出なんだ
あなたはあたしを嫌ってた
あたしもあなたを嫌ってた
でもね時々思うんだ
もしかしたらあなたがあたしを好きだったんじゃないかって
あるはずのない思い出
そうだとわかっているのに




