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剣に愛された少女
少女は剣が好きだった
少女は剣に愛されて
剣も少女に愛でられた
たとえ女に剣が似合わぬのだとしても
少女は剣を手放さぬ
無理にでも引き離そうとした父を
心ゆくまで切り刻み
それに激怒した母親を
苦しまぬよう貫いた
少女は剣を抱きかかえ
世界を放浪 あてもなく
剣が少女の生きがいで
それ以外には何もいらない
友もなく目的もなく
長い日々を彷徨い続けた
けれど剣は少女を裏切り ある日突然折れ曲がる
その時少女は全てを悟った
己は剣に愛されてなどいなかったのだと
少女は泣いた 心ゆくまで
剣乙女は折れた剣を胸に刺し 共に命を終わらせた
悲しい少女の物語




