表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
925/987

第九百二十五話


「北鄭高校―――三番―――センター、作島君―――」


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。

 作島が右打席に立つ。

 三塁側ベンチの石津監督がサインを送る。

 作島が頷いて、マウンドの灰田を見る。


「灰田―――九州の同じリトルのチームから、こうして甲子園で打席勝負することになるとはな」


 作島が嬉しそうに笑う。

 マウンドの灰田も気持ちは同じだった―――。


「来い灰田! ガキの頃のように抑えるか―――打ち抜くか―――勝負しようぜ!」


 作島が大声を出して、構える。


「俺が熱くなって殴った年上のあいつ―――高校野球で一番手強くて大きい選手になって帰ってきた。再会の挨拶はこの夢の舞台でボールとバットで交わしてやる!」


 灰田もそう言って、闘志を燃やす。

 冷静なハインが少し間を置いて―――サインを送る。

 頷いた灰田が構える。

 マウンドとバッターボックスの二人が集中する。


「いくぜ―――作島!」


 灰田がクイックモーションで投げ込む。

 作島がジッと観察する。

 手からボールが離れる。

 回転せずに不規則に揺れながら打者にボールが近づく。


「これが灰田のナックルボール! 手を出さないと二番打者の先輩に言われたけど―――」


 作島が構えたままナックルボールを目で追う。

 ボールが真ん中に揺れながら飛んでいく。

 作島がスイングせずにボールが揺れながら通過する。


(トモヤのナックルボールを打てる位置に投げさせた。こっちのリードで犠打にして相手が打つと思ったが―――振らないか―――)


 ハインのミットにボールが収まる。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに111キロの球速が表示される。

 ハインが返球する。

 灰田が捕球して、息を吐く。


「いい緊張感だぜ。作島と真剣勝負で打席対決が出来るんだ。もう二度とこんな機会はない」


 灰田が汗を流して、そう呟く。

 作島が嬉しさで笑顔を見せて、構え直す。


「俺は今こうして灰田と真剣勝負してるんだよな。一打席だけの勝負かもしれない。本気の勝負だ―――」


 作島と灰田がそれぞれ構える。

 ハインがサインを送る。

 頷いた灰田がクイックモーションで投げ込む。

 作島がジッと観察する。

 手からボールが離れる。

 回転せずに不規則に揺れながら打者にボールが近づく。


(また、ナックルボールか―――打てそうだが―――)


 作島が見送る。

 ボールが回転せずに不規則に揺れながら内角高めに飛んでいき―――。

 ハインのミットにボールが収まる。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに107キロの球速が表示される。


(ツーストライクでも振ってこないか―――今ここでトモヤのナックルボールは多様出来ないな)


 そう思ったハインが返球する。

 灰田が捕球して、笑う。


「やっべぇなぁ―――チームプレイの野球なのに俺は今楽しくてしょうがないぜ」


 そう呟いて、ハインのサインを灰田が待つ。


(後のことを考えるとこの打席ではトモヤのナックルボールは使えない―――ここは―――)


 ハインがサインを送る。

 頷いた灰田が構える。

 作島が緊張と高揚で胸が高鳴り―――。


「さあ、勝負はここからだぜ! 灰田!」


 嬉しさのあまり叫んで作島が構える。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ