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第九百二十一話


 大森高校のメンバーは初めての甲子園で緊張しているのか、無言のまま相手選手達を見る。

 陸雄の心臓が高鳴る。


(甲子園―――ついにここまで来たんだ。夢なんかじゃない! 優勝旗を目指して―――勝つぜ!)


「「―――お願いしますっ!」」


 両校が一礼して、ベンチへ戻る。

 甲子園の試合はこれから始まる―――。



 大森高校のレギュラー達が守備位置に着き―――。

 マウンドの先発投手の灰田がロージンバックを握る。

 試合開始のサイレンが響いていく―――。


(県大会の一回戦の時は全然来なかったのに今や大森高校のみんなが豪華な演奏付きで応援してくれる! 最高のプレイをしてやるぜ!)


 灰田が吹っ切れたような笑顔を見せて、九衛から貰ったピッチンググローブでボールを拾う。


「一回表―――北鄭高校の攻撃です。一番―――ピッチャー、浜渡君―――」


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。

 右打席に浜渡が立つ。


「―――プレイボール!」


 球審が片手をあげて―――声を高らかに上げる。

 吹奏楽部の演奏と応援が大きく響く中で―――。

 バックネット裏の席料が一番高いと言われるゴールドシートに座る野球少年や富裕層が灰田をジッと見る。

 甲子園の出場校の生徒は席料は無料だが、他の客は料金がプロ野球観戦と同じようにかかる。

 前列のマネージャーの柊の隣に他校でありながら、席料を払った他校の女子高生がいた―――。


「松渡君―――私だけ他校の生徒だけど、マウンドの松渡君をしっかり見て応援したい」


 その席に座るのは埼玉県の代表校の生徒の紫藤だった。

 試合が始まり―――。

 三塁側ベンチの石津監督がサインを送る。

 頷いた浜渡が構える。

 吹奏楽部の合唱と声援の中で、マウンドの灰田がキャッチャーボックスのハインを見る。

 ハインがサインを送る。


(兵庫県頂点としての全国制覇を掲げた甲子園の先発投手としての俺の第一球。誇らしいし、燃えるぜ! こんな気持ちと大舞台は二度と立てない!)


 力強く頷いた灰田が構える。


「ハロー、高校野球の最頂点を賭けた夏の―――甲子園さんよ!」


 言い終えて、クイックモーションで灰田が投げ込む。

 打者の浜渡がジッと観察する。


「ほう―――クイックモーションか、ランナーがいる時の盗塁は厳しくも思えるが―――」


 浜渡が呟き、灰田の指先からボールが離れる。

 外角低めにボールが飛んでいく。


「石津監督の指示で打てそうとは言え、ここは一球待つか―――」


 浜渡が見送る。

 打者手前でボールが変化せずに通過する。

 そのままハインのミットにボールが収まる。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに130キロの球速が表示される。


(トモヤの制球も球速も今日は好調だな。打たれるリスクも考えたが、相手の打者が見送ったか―――)


 そう思ったハインが返球する。





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