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第七十六話

「四番―――レフト。錦君―――」


 錦君が打席に入る。

 捕手が立ち上がる。

 また敬遠だった。

 ハインが押し出しで、ホームベースを踏む。

 12点目が入る。

 錦は一塁に移動する。

 九衞が二塁で片足だけ塁を踏んで、退屈そうに次の打者を待っている。

 紫崎は三塁で塁を踏みながら、両手を上げて伸びをしている。


「タイム!」


 セカンドが塁審にタイムを宣言する。

 塁審が認めて、マウンドに内野手と捕手が集まる。


「横田。何考えてんだよ? さっきから敬遠ばっかでよ? これ以上点はやれねぇだろ?」


 セカンドが横田に呼びかける。


「これしか方法がない! みんなが点を取るには、この方法しかないんだ!」


 ファーストが横田の震える言葉に心配そうに話す。


「んなこと言ったって、もう大森高校に負ける事確定じゃん!」


「一点は必ず取られるけど、打力で抑えてくれ」


「横田―。無茶言うなよ」


 サードが会話に割って入る。


「まあ相手の投手の球に慣れないままだけどよ。逆転しようにも、もう12点も…………」


「―――そんなことわかってる!」


 横田が声を荒げる。

 チームが黙り込む。


「みんなキャプテンの頼みを叶えよう。ひでぇ点差だけど、俺たちの意地をみせようぜ」


 捕手が内野手たちに呼びかける。

 チームに重い沈黙が流れる。


「君達、時間だ。守備位置に戻りなさい」


 塁審の声でチームが守備位置に戻っていく。


「五番―――ピッチャー。岸田君―――」


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。

 横田がボールを強く握る。

 そしてゆっくりと打者の陸雄を睨む。


(おっ! すげぇ気迫! いいねぇ! こういう展開嫌いじゃないぜ。あんたもだろ? 横田さんよぉ!)


 陸雄が笑って、バットを強く握る


(何笑ってんだ? この野郎―――見下してんじゃあねぇぞ!)


 横田がサインに首を振り、二度目のサインで頷く。

 投球モーションに入る。

 力が入っているのか、ボールを握る手と振り下ろす足と腕が音を立てる。

 そのまま振り下ろして、ボールを離す。

 外角高めにボールが飛ぶ。

 陸雄がタイミングを合わせて、バットを振る。

 右回転のカットボールがバットを通過する。

 そのままボールがミットに収まる。

 

「ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに113キロの球速が表示される。


「気迫十分だな―――おもしれえ!」


 陸雄がバットを構える。

 横田は捕手から返球したと同時に―――静かに構える。

 サインに頷き、投球モーションに入る。

 陸雄がじっと見て、バットを構える。

 外角高めにボールが飛ぶ。

 陸雄はやや下にバットをタイミング良くスイングする。

 ボールが手元で遅く落ちる。

 そのチェンジアップを見事にバットの芯近くに当てる。


(チェンジアップは読めていたぜ―――いただきぃ!)


 陸雄がそのままライト方向に―――ボールを高く打ち上げる。

 犠打フライ。

 外野手に飛球を打ち上げ、タッチアップでランナーをホームに迎え入れること。

 この場合、三塁にいる紫崎がホームベースに走ることが出来る。

 別名、サクリファイスヒット。

 外野手のライトがボールを捉える。

 ボールがグローブに収まる。

 そのタッチアップで三塁の紫崎が走る。

 ライトが中継する。

 紫崎がホームベースに向かって、走っていく。

 中継からセカンドがキャッチャーに送球する。

 捕手が受け取るも、紫崎がホームベースにスライディングする。

 片手でホームベースにタッチする。 

 

「セーフ!」


 球審が宣言する。


「監督―――13点目です」


 古川がスコアブックを書きながら、どこか嬉しそうに話す。

 二塁ランナーの九衞と一塁ランナーの錦は動かない。

 事前にサインを出していた中野監督が腕を組み直す。


「岸田が投手以外に打者として成長していく証拠だな」


「そう―――ですね」


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「―――六番、ファースト。星川君―――」


「さー、僕と灰田君で一人塁に返しますよー」


 星川が打席に入る。

 中野監督のサインを見る。


(初球から打て―――ですね)


 星川がメルメットに手を当てる。


「―――プレイ!」


 球審が宣言する。

 捕手のサインに頷き、横田がボールを握る。

 そして素早く投球モーションに入る。

 真ん中低めにボールが飛ぶ。

 星川がタイミングを合わせて、バットを振る。

 ボールがバットに当たるが、芯から外れる。


(この感触は―――カットボール!?)


 打球がセカンドライナーに飛ぶ。

 セカンドが構えて、飛んでくるボールを捕球する。


「バッターアウト!」


 塁審が宣言する。


「ツーアウトになっちゃいましたか―――」


 ベンチに戻っていく星川の後で、ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


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