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第五話

 監督がタイムをかける。

 陸雄はグローブを付けて、マウンドに走り出す。

 走っている中で、応援している輪の中で父親を見つける。

 父親は走っていくリクオを見て、ニコリと微笑んだ。


「リクオ。初登板だからって緊張するなよ。練習を本番、本番を練習と思って投げろ」


 タイムがかかる中で、ハインがマウンド前で陸雄の肩を叩く。

 同じくマウンドに集合した乾が腰に手を当てる。


「ハイン。陸雄が打たれても援護してやるから、安心してサインだしておけ」


「は、ハイン。ぼ、ぼ、僕頑張る」


 陸雄は公式試合で勝ち越しの点差の為か、緊張している。


「リクオ。緊張をほぐす暇はあまりない。次の打者は好調の紫崎だ。打たれてもせいぜい二塁打だ」


「う、うん……他にランナーがいないから安心だね……」


「オレがリードするから、指示通りに投げろ。サインに首を振るなよ」


「ハイン。そろそろ時間だぜ。頼むぜ、期待のバッテリー!」


 乾が陸雄の肩を叩いて、ハインに笑顔を見せる。

 その合図で陸雄のチームは守備位置に戻っていく。 

 右打席に紫崎が立つ。


「―――プレイ!」


 球審が声を高らかに上げる。

 ハインがミットを構える。


(リクオ。まだ緊張してるな。まずは今日の調子を見よう)


 ハインが陸雄にサインを送る。

 陸雄がサインを確認する。


(が、外角低めのストレートに―――投げるっ!)


 陸雄がピッチングフォームに入る。

 一投をゆっくりと、力強く投げる。

 ビュッという小さな音と共に、ボールが真っ直ぐ飛ぶ。

 そのままボールは下に落ちるように、軌道を描く。


(フォームが硬い! 打てる!)


 そう思った紫崎がバットを振る。

 だが、タイミングがやや早いのか空振る。

 パンッと言う音がミットに響く。

 ハインがボールをしっかりと捕球する。


「ストライクッ!」


 球審が声を高らかに宣言する。

 ハインが陸雄に返球する。


(無駄に力が入ってるな。次は打者の肩スレスレの内角球を投げさせるか)


 ハインが座り込みサインを出す。

 ボールをキャッチした陸雄が早めに投球モーションに入る。


(次は内角のボール球に投げるっ!)


 今度は力を抜いて、ややスローの球を投げる。

 ボールがやや中央から、右に逸れる。

 紫崎のバットがピクリと動く。

 ハインが右上にミットを動かす。

 パンッという音が聞こえて、捕球する。

 球審が声をあげる。


「ボールッ!」


(ボール球にバットが動いたな。この辺りで打ちたいという気持ちになるはず)


 ハインが陸雄に返球する。

 陸雄がキャッチする。


「陸雄ー。力抜けよー!」


 ショートにいる乾が声をかける。

 陸雄が少しビクッとする。

 ハインが座り込む。


(次はボール球スレスレの―――低めのゴロゾーンに投げさせるか)


 ハインがサインを出す。

 陸雄がやや早めに投球モーションに入る。


(ひ、低めに―――投げる!)


 振り上げた足を地面にぶつけるように踏みつける。

 投げた腕から鞭のようにビュンッと音を立てる。


「―――あっ!」


 思わす陸雄が声をあげる。

 ボールを指先から離すのが早いのか、中央に投げられる。


(リクオ、ボールが高い! そこじゃない!) 


 ボールが低めではなく、高めに軌道を描く。


(チョコボール! 打てる!)


 紫崎がタイミングを合わせて、バットを振る。

 ポンッという軟球の柔らかい音がバットから響く。

 球は打たれ、ライン線に飛ぶ。


「ど、どうしよう!」


 陸雄が打たれた球を目で追う。

 紫崎がその間に走って一塁を蹴る。

 相手チームと味方チームの歓声が上がる。

 ライト線手前でボールがバウンドし、ライトが低い球を捕球する。

 二塁に向かって、投げる。

 セカンドが球をキャッチする。

 キャッチの前に、紫崎がコンマ数秒早く二塁を踏んだ。


「セーフッ!」


 塁審の声で相手チームが歓声を上げる。


「紫崎! ナイスツーベースヒット!」


 二塁を踏んだ紫崎が、パンパンッとユニフォームの埃を手で払う。


「う、打たれちゃった…………」


 陸雄が肩を落とす。


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