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第三十話

 次の日の朝。

 授業前に陸雄達は、大森高校野球部のグラウンドに集まっていた。

 それぞれが走り込みをする中で、中野監督がバットを持ってユニフォームで現れる。

 時刻は六時ちょうどだった。

 大森高校に許可を貰って、校門を開けてくれたので朝練には間に合った。

 陸雄だけ定期券を買って、五時半に家から出ていた。

 ジャージ姿とグローブ片手にスパイクを履いて、キャッチボールをしていた。


「よし、監督よりも早く来るとは殊勝な心掛けだ。まずは腕立て伏せから行う。ただの腕立て伏せではない」


(寝たの十一時だから六時間しか寝てねぇな。く~、清香とがっつり予習までしたから学業は今のところ問題ないはず……高校初めての朝練、寒いけど根性だな!)


「私と同じように腕立てをすること。説明しながら行うからしっかりついてこい」


「「はいっ」」


 中野監督の腕立て伏せは他とは違った腕立てだった。

 顔を下に向けず前をキープする。

 そして腕は90度をキープ。

 下げる時ゆっくり上げる時、早く首からかかとまで真っ直ぐ通す。


「腹と背に力を入れろ!」


 そのまま顔は前方向いてゆっくり伏せる。

 腕は九十度顎は地面につけた。


「姿勢を崩さないで、立てる時は全力で地面を押せ!」


(これ、すげぇキツい。俺がしてた腕立てって何だったんだろう? たった二十回で腕がパンパンじゃねぇか!)


 星川と灰田が陸雄と同じく腕が笑っている。

 錦、松渡、紫崎、ハインは最初は慣れなかったようだが、徐々にペースを上げている。

 坂崎は二、三回で少し休憩をする。


「体を作るには故障しないだけの体作りが大事だ。毎朝必ずやるぞ! いいな! 腕立て五十回! しっかりやれ!」


「「は、はい……」」


「声が小さい! 守備連係の時に小声でどうする? 勝てる試合も勝てんぞ! もう一回!」


「「はいっ!」」


 一塁側の屋根付きベンチで、スパッツを履いた古川がマネージャーの仕事をしている。

 給水機に天然水を入れて、炊飯器に米を入れて炊いている。

 いくつかの炊飯器の隣に『全自動おにぎり製造機☆かってに南極大冒険くん!』という名前が書かれた怪しいペンギンの形をした小型の持ち運びが出来る機械があった。


(今日は塩にぎりだけで良いから、たまにしか使わない製造機使うかな。終わったら海苔貼るだけで良いかな)


 古川がタオルを用意しながら、そんなことを考える。

 二年生は錦以外一人も来ていなかった。


「灰田~。生きてる~?」


 松渡の隣で腕立てをしている灰田は息が上がっていた。


「くっそがっ! ブランクなんかクソ喰らえ! チクショウ! 腕が上がんねぇ……」


「灰田君。あと五回やれば終わりますよ。頑張りましょう!」


 星川の震え声の中、灰田が腕を押す。


「―――しゃ!」


 全員の腕立てが終わる。

 坂崎が息をはぁはぁと切らす。


「う、腕痛い……」


「カイリ。最初は筋肉痛になるだろうが、耐えろ」


 ハインが倒れた坂崎を起こす。


「次は腹筋を行う。足を持つ係と腹筋をする係。二人一組になれ」


 中野監督の指示で全員が起き上がる。


「リクオ。オレと組むか?」


「あ、ああ。じゃあ俺が先に腹筋すっから、しっかり押さえろ」


「星川君~。僕と組む~?」


「じゃあ、まだちょっと腕がヒリヒリするので、先に腹筋お願いします」


「錦先輩。先に俺が腹筋をしても良いですか?」


「ああ、紫崎君。しっかり押さえておくよ」


「坂崎。お前押さえてろ。俺が先にすっから」


「わ、わかったよ。は、灰田君……」


 それぞれがペアを組む。


「いいか? 二人一組の腹筋などををする時は毎回違った組み合わせで行え。チームを知るための一環と思ってそうしろ」


 中野監督の指通りの腹筋が行われる。


「古川。抑える役でいい。頼む」


「はい。監督」


 マネージャーの仕事が終わった古川を中野監督が呼びつける。

 古川が中野監督の足を抑える。

 中野監督がゆっくりと腹筋動作をしながら、説明する。


「いいか? 手は耳たぶをつまむ。尻を浮かせるように―――反動をつけるんだ。ヘソを巻き込む感じで上げろ」


 中野監督の腹筋動作を見ながらチームが同じ真似をする。


「最後に膝に顎をつけゆっくり下す。これを五十回! 始めろ!」


(くっそ! これ尻が浮いてるから腹にめっちゃ力入る―――! いけねぇ! 尻が地面に付きそうだ!)


 陸雄が腹に力を入れる。


(痛ぇ! マジで来る!)


「灰田! 岸田! しっかり尻を浮かせろ! 早く行うな! 数だけこなしても意味が無い! 量より質の筋トレだ! 抑えている奴。五十回数えたら交代しろ!」



 それぞれ五十回ずつの腹筋を終える。


「腹が……すげぇ痛ぇ……」


 八人は腕立てと腹筋のセットで腕と腹回りがパンパンに痛んでいた。


「よし、次は背筋を行う! 別々の二人一組になれ! 古川、足を抑えてくれ!」


「―――はい。監督」


 それぞれがペアを組む。


「星川君。俺と組もう」


「わかりました。陸雄さん。僕が先にやりますから」


「ハイン、俺とどうだ?」


「解った。タカシ。オレが先に背筋をする」


「に、錦先輩。ぼ、僕が先にします」


「坂崎君。ゆっくりで良いからね」


「はじめん。俺が先にすっからな!」


「灰田~。膝笑ってるよ~。大丈夫~?」


 中野監督が背筋を動作しながら説明する。


「ヒジを浮かせたまま手は耳の裏に添えろ。顔は正面を向く。下ろす時はゆっくりとだ! 投手は百回。野手は五十回やれ! いいな?」


「百っ!? マジかよ……半端ねぇな」


 陸雄が声を漏らす。


「投手の体幹を鍛えるために足腰は重要だ。灰田。松渡。岸田は百回やるまで交代は許さん。終わった者はランニングを五分間一杯走る事。投手陣はその後で同じく五分一杯走れ! 開始しろ!」


「僕と灰田は合計二百回だから、ランニングかなり遅くなるね~」


「くっそがっ! 百回くらい、くっ! 終わらせて、や―――るっ!」


 灰田と松渡、陸雄と星川組は他のメンバーよりも遅れて五分間ランニングを始める。

 古川がストップウォッチを片手に計測する。

 中野監督の指示で、陸雄以外で遅れた坂崎を含めてランニングが始まる。

 遅れた坂崎から本当の五分間が始まり、先に走った者は余計に走らされる時間を与えられる。


「しっかり走れ! ランニングフォーム一つで捕れる球とベースランニングのタイムが縮まる!」


「「うっす!」」


「声が弱くなってるぞ! 七イニングで連携取れなくなってもいいのか? 中学野球じゃないんだ! 声出せ!」


「「うっす!!」」




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