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第三話

 陸雄が五年生になり、春の終わりを迎えた日。


「陸雄―――なんか最近―――カッコよくなったね」


 幼馴染の石渡清香(いしわたりせいか)が、陸雄をまじまじと見て、頬を赤らめる。

 事実あれから陸雄は、いじめがなくなり、クラスのリーダー的存在にまでなっていた。

 子供は力のあるものに憧れる。

 陸雄は男子グループの間で、強い者として認められていた。


「清香、嬉しいよ。僕、地元の少年野球団で野球やっているんだ」


 陸雄は野球で自信が付いたのか、性格も変わっていった。

 清香はそんな陸雄の変化に気付きながら、好感を持っていた。

 女子がたくましく頼りがいのある男子に惹かれるのは、珍しい事ではない。


「プロ野球選手になったら―――清香のお嫁さんになって―――」


「い、いいよ」


「それまで恋人になる~」


「て、照れるよ」


「他の女の子に浮気しちゃダメだよ」


「うん。約束するよ」


「それまで勉強教えてあげる。だからプロ目指して、野球頑張ってね」


「ありがとう―――清香」


「えへへ~。応援してるよ~」


「僕―――清香のためにも頑張るよ」


 野球は陸雄に恋人と自信をくれた。

 そして野球道具を片手に隣に住む清香の家族の家から、練習場に今日も向かう。



 ある練習終わりの夕方。

 陸雄はハインと一緒に着替えていた。


「ハイン。練習終わったら毎日球受けてくれるけど―――僕、試合に出てみたい」


 陸雄はまだベンチで、スタメンにはなっていなかった。

 投手としては成長しているのだが、監督がまだ起用していない。


「レギュラーになったらオレとバッテリーが組めて試合に出れるよ」


「じゃあ、僕、レギュラーになるために頑張る」


「コントロールは前より良くなってきているから、後は努力を続ければなれるよ。ウチのカントク。打率は無くても、抑えてくれる投手なら起用するからさ」


「うんっ!」


 ハインとの合同練習もあってか、監督は陸雄を試しに公式試合で出そうと考える。

 それから二週間後に、陸雄は抑え投手としてレギュラーになる。



 レギュラーになった喜びで、夕食の時に父親に陸雄は楽しそうに話す。


「お父さん、明日僕がレギュラー初めての公式試合なんだ」


 それを聞いた父は嬉しそうに微笑む。


「そうか、そうか。お父さん再来月から異動で単身赴任になるんだ。最後に陸雄の晴れ姿を見て、家から遠ざかるのも悪くないかもな」


「えっ? お父さんどこか行っちゃうの?」


「昇進して兵庫支社から東京本社に行くんだよ。母さんとお隣の清香ちゃんのご両親と仲良くするんだぞ」


 父親の単身赴任。

 突然の事だった。

 叱る時は叱り、褒める時は褒める父親が離れることに、陸雄はショックを受ける。



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