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第百十五話


 中野監督が二人を見て、注意する。


「こらこら、喧嘩するな。いいか? 朋也様。九衞が逆という理由はだな、結論から言えば本人にとって自然なフォームさえ身につければ、全身をフルに使って投げる投法のため体の負荷が分散し故障しにくいんだぞ」


「ほんとかい?」


 灰田が妙な九州訛りで聞き返す。


「ぼ、僕も知らなかった」


 坂崎も応援を止めて、聞き手に回る。

 九衞の横にいる紫崎がバットを持って話す。


「フッ、そしてスローカーブ系やフォーク系の変化球の変化が小さい」


「え? なんでだよ?」


 九衞がため息をつく。

 灰田がキッと睨む。

 紫崎が灰田の横に移動して、話を続ける


「フッ、考えても見ろ。下から投げ上げるんだぞ? 重力を使って落とす変化球はうまく投げられないだろう?」


 灰田が腕をポンと叩いて、気づく。


「あっ、そっか。意外と欠点も大きいんだな。ってか、紫崎はネクストバッターなんだから―――はよサークルいけや」


「フッ、親切心でお前の為に説明に参加してやったのに……」


「あっ、わりぃ。紫崎、しょげんなよ。ちゃんと塁出て点取って来いよ」


 灰田がネクストバッターサークルに移動する紫崎に一言添えて、見送る。


「後はね~投球動作に時間がかかるんだよ~。だから、盗塁を許しやすいんだ~。セットアップポジションならある程度は克服できるがな~」

 

 松渡が灰田以外の坂崎や星川にも説明する。

 三人が納得する。


「「へぇ~!」」


 スコアブックを書き終えた古川が灰田達を見て、話題に入る。


「他にも球持ちが他の投法より長く、そこでさまざまな工夫を取り入れやすいんだよ。投球に多彩な緩急をつけれるんだけど、戸枝君はデータだけ見ればそんな緩急つけられないみたいだけどね」


「なるほどなぁ。長所短所がはっきりしてんのな」


 灰田が関心する。


「あ、つ、次の投球入るみたいだよ。み、みんな見よう」


 坂崎の言葉で選手一同は打席を見る。

 戸枝がセットポジションで投げ込む。


「さっきと違いますね」


 星川が疑問を持つ。


「打者を威圧するワインドアップだ。今投げたセットポジションが基本だろうな。だが、それでも塁に出れば盗塁の隙はある」


 中野監督が腕を組んで答える。

 戸枝が投げたボールは外角やや低めにストライクコースから外れる。

 ハインが見送る。


「―――ボール!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに109キロの球速が表示される。

 三年生捕手が返球する。

 戸枝がボールをキャッチする。

 ハインが一息ついて、構える。

 捕手がサインを出す。


(え? 先輩。もう次の球で仕掛けるんですか?)


 サインの意味を知った戸枝が驚く。

 捕手がサインを変えない。

 仕方なく頷いた戸枝が投球モーションに入る。

 ハインがじっとアンダースローの投球を見る。

 ややタイミングをずらして、戸枝の指先からボールが離れる。

 ボールは真ん中高めに飛ぶ。

 ハインがスイングする。

 打者手前でボールが左に曲がりながら落ちる。


(ここでシンカーか―――)


 ハインのバッドがボール一個分掠める。

 捕手のミットにボールが入る。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに111キロの球速が表示される。

 シンカーは投手の利き腕方向に曲がりながら落ちる球種である。

 戸枝は左投手なので左に曲がりながら落ちる。

 ハインがバットでスパイクを叩いて、泥を落とす。


(やはり球速から察するに速い球速で鋭く落ちる高速シンカーは無いようだな)


 遅いシンカーは浮き上がってから落ちる逆方向のカーブのような軌道である。

 そして横回転が必要なカーブやシンカーはアンダースローではよく投げれられる。

 捕手が返球する。

 ハインが構える。

 戸枝がキャッチする。


(この配球なら―――次のコースはだいたい予想できる。あの球種に的を絞る)


 ハインが目立たないようにバットを肩に当てる。



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