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第百十四話


 サウスポーは一塁走者への牽制のしやすさが失点の減少に繋がることなども有利な点であると考えられる。

 加えて松渡は制球力が非常に高い。

 さらに緩急もある程度調節できる。

 握力もあるため投げるのが難しいと言われているフォークボールもある程度の調節が出来る。

 非常に優秀な投手である。

 ジェイクはそれに気づいた。


「バッターアウト―――チェンジ!」


 球審が宣言する。

 三番打者の二年がトボトボっとベンチに帰っていく。

 ハインがキャッチャーマスクを上に上げて立ち上がる。


「ハジメ。良いピッチングだ。戻るぞ」


「ハイン~。ナイスリード~! 最後三球三振で抑えたのは個人的に気持ちが良いよ~」


 松渡がニヘラと笑顔を見せる。


「まぁ、球審頼りの配球もあったけどな。ハジメのコントロールの正確さに安心した。指は痛くないか?」


「平気だよ~。ありがと~」


(上位打線を三者凡退に仕留めたか。ハジメはリクオとは違う投手だ。打席では陸雄とは違って貧打だが、投手としてなら優秀だ)


 そんなことを考えながら、ハインがベンチに帰っていく。


(ハインは実戦を通してみると、凄く上手いリードだな~。疲労が全然ないや。ハインも気付いているだろうけど、点は紫崎達が代わりにやってくれるかな~)


 松渡も続いてベンチに帰っていく。 

 ジェイクが松渡の投球をじっと見ていた。

 機械のように分析した後に楽しそうに声を漏らす。

 ネクストバッターサークルのジェイクが、バットを持ったまま立ち上がる。


「カレユニーク、ダネ。タノシミヨ」


「俺と同じサウスポーとはな。ジェイク―――次の回は松渡ってヤツの球、打てるか?」


 戸枝が楽しそうにジェイクに聞く。

 ジェイクは無言の笑顔でサムズアップした。

 戸枝がニヤッと不敵に微笑む。


「よし! そんなら、次は俺らの守備だ! みんな! 気合い入れていくぜぇ!」


 上級生たちも戸枝がテンションが上がると敬語を忘れること思い出したのか、気にせずに声をあげる。


「「おうっ!」」


 西晋高校が守備位置に着き、一回裏が始まる。


「一回裏―――大森高校の攻撃です。一番―――キャッチャー。ハイン・ウェルズ君―――」


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。

 右打席にハインがバットを構えて立つ。


(一度やり合った相手だが、あのアンダースローは覚えている)


 ハインがベンチにいる中野監督のサインを見る。


(一球待て。難しい球は見送って後は流し打ちしろ、か)


 ハインがヘルメットを被り直す仕草をして、サインに了承する。


「―――プレイ!」


 審判が宣言する。

 戸枝が捕手のサインに頷いて、投球モーションに入る。

 ワインドアップをして投げる腕を高々と上げる。

 やがてボールを持っている腕が水平を下回る角度にまで移動する。

 戸枝がボールをリリースする際に身体が沈む。

 そして指先からボールが離れる。

 投げたボールが下から上に上がってくる。

 そのまま外角真ん中に飛ぶ。

 ハインはボールを目で追う。

 捕手のミットに入る。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに110キロの球速が表示される。

 ベンチの星川が身を乗り出して、嬉しそうに話す。


「今のがアンダースローですか! ここから見てもボールが下から上に上がりましたね。潜水艦と言われるサブマリン投法って言われる所以が解りますよ」


 松渡が座りながら答える。


「それでいて、僕と同じサウスポーだもんね~。投げる球の軌道が他の投法とは大きく異なるしね~」


 中野監督が付け加えるように説明する。


「打者からは球が浮いてくるような感覚で捉えられる。また、スライダー、パワーカーブ系の変化球もしばしば浮きながら曲がる軌道を描くがな」


「なぁ、中野。フォーム見た感じじゃあ全身使うから体の筋肉が痛むんじゃねぇか? 長く投げれーねーっと思ったんだけど―――」


 応援を中断した灰田が中野監督に聞く。

 それを座って聞いている九衞が鼻で笑う。


「へっ! チンピラ野郎はさっきのフォーム見ても気付かねーのか? 逆だよ逆。ホント馬鹿だな」


「あんだとー! この強面野郎! 知ってんなら教えろや!」


 灰田が九衞を睨む。

 九衞が退屈そうに試合を見て、鼻を掻く。


「えー? 馬鹿に説明するのは俺様的にめんどくさい。一からか? 一から説明しないとダメダメですかぁ?」


「て、てめー! わっかんねぇもんはわかんねぇんだから、しょうがないだろ!! いい加減にしろ!」


 灰田が九衞に拳を握って、ズンズン近づく。


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