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第百七話


「つうか、日本に帰ってたんだな。ニュース見た時ビックリしたぜ。メールくらい送れつーの」


 戸枝がハインに嬉しそうに話す。

 ハインは戸枝とは小学校時代に試合の後でメアドを交換している。

 帰国後は連絡しても音沙汰が無かったので、戸枝も内心諦めていた。


「ツヨシ対策で練習してたんでな。送る暇が無かった。言葉よりもプレーで示す」


 戸枝がニヤリとする。


「へぇ……そりゃあ、逆に嬉しいねぇ。ありゃ? 陸雄はどうしたの?」


 戸枝が大森高校のメンバーを見る。


「フッ、ラッキースケベで病欠だ」


「はぁ、何それ? 面白そうなアクシデントにでも遭ったのか?」


 戸枝が興味津々で質問する。


「まぁ、ちょっとな……」


 表情をあまり変えないハインが言葉を詰まらせる。


「フッ、試合が終わったらメールで聞かせてやる。陸雄には内緒だぞ?」


「おう。頼むわー。ってか、紫崎も中学の試合の時に俺のアドレス知ってんだから野球してること送れよな。ま、いっか―――陸雄がいないのが残念だが―――今日は勝たせてもらう」


「フッ、戸枝先輩。いや戸枝キャプテン。お約束の返しセリフ言ってやろうか?」


「いいや、結構。しかしお前ら野球もうやらないとか言ってたのに、どういう風の吹き回しだ?」


 ハインと紫崎の会話に他のメンバーが近づいてくる。


「今いないチームの真のキャプテンの頼みでな。今年だけ甲子園目指すためにオレもケンシも協力した」


 戸枝が帽子を被り直す。


「ふぅん。あいつがねぇ……乾の奴も待ってるぜ。今日俺達に勝てれば、な」


「無論そのつもりだぜ」


 横から九衞が話に入ってきた。


「貴方がサウスポーでアンダースローの投法をする奇特な戸枝さんか?」


 戸枝が九衞をじっと見る。


「ほ~う。俺を知ってるとは光栄だね。君が中学野球界で噂になってた九衞君だろ?」


「九衞で良いですよ。試合楽しみにしてますよ……それじゃあ」


 九衞は一人で集中している錦の所に行って、話始める。


「ああ……そういや、お前らと一回戦試合した横田って投手覚えてる?」


 戸枝の質問に星川が答える。


「高天原高校の横田君ですよね? 試合後にマスコミの方から取材受けてましたよね? あっ、どうも! 僕は星川です」


 星川が戸枝に頭を下げる。

 戸枝も軽く頭を下げて、話を続ける。


「あいつは俺の中学時代の後輩で友人なんだわ。紫崎と公式試合した後に軟式の方に入って来てな。てっきり二回戦は横田の高天原高校が来ると思ってたんだけどな」


 戸枝が腰に手を当てて、話を続ける。


「むこうの野球部のグラウンドが大森高校のメディア効果で、あの後ちょっと注目されたらしいぞ」


「へぇ~……」


 挨拶を省略した松渡が興味を少し示す。


「そんでな……」


 戸枝の話では、高校野球担当のスポーツ新聞記者に横田が取材を受けたらしい。

 その後のローカルニュースで少し注目を浴びたようだ。


「学校名まで出たから高天原高校の校長が喜んでたみたいでさ。野球部の練習時間が増えて、グラウンドに練習機材が導入されるってよ」


 星川が試合を思い出したのか、黙って戸枝の話を聞いている。


「ってことで、お前らのおかげで横田達の野球部は今後強くなるって燃えてたぜ」


「それはリクオに後で聞かせてやりたいな。メールは病気のせいで出来ないから、学校で話しておく」


 ハインはそう言って、あまり表情を変えずに答える。

 試合中や練習中は冷静であまり表情を出さないハインがどこか無関心そうに見える。

 戸枝も含めて、ハインが昔からそうなのはいつもの事なので話を続ける。


「横田から勝ってくれっと頼まれたんでな。先輩としては勝ってやりたいところだが、お前らの強さは良く知ってるからな」


「フッ、面倒見の良いやつだな。シニアの時との試合の続きを今日の試合で終わらせるか?」


「ああ、いいぜ! って、やべっ! 話しすぎたか……一年がこっちに来ちまったなぁ」


 戸枝が後ろを恐る恐る振り返る。


 陽気なブロンド髪をオールバックにした外国人がやってきた。

 戸枝と同じユニフォームを着ている姿から選手のようだ。


「戸枝……そいつは?」


 紫崎が戸枝に質問する。

 体つきの良い外国人の少年が拙い日本語で答える。


「ハジメマシテ、ジェイク、デス。オーストラリア、カラキタヨ」


(ジェイク? ああ、こいつが中野の説明ではじめんに試合中は歩かせても構わないっと言われた選手か。確かに一年ながらに良い体してる。俺と同じセンターか)


 灰田が興味深そうにジェイクを見る。


「俺のチームの強力な選手だ。一年のジェイク・ウィンタースさ。俺が抑えてジェイクが打つ。聞いて驚くなよ~? 俺とジェイクの一回戦の成績はな……」


「キャプテン。ソロソロ ニュウジョウダヨ。カントク オコルヨ?」


 ジェイクが話を中断させる。

 おそらく監督に言われたのだろう。


「あ、じゃあ、そろそろ俺らも球場入るからよろしくな! 試合楽しみにしてるぜ!」


 そう言って、戸枝は去っていった。


「グッバイ。ベースボールフレンズ!」


 ジェイクも手を振りながら、続いていく。


「お前達。相手校とのお喋りも良いが、そろそろ球場に入るぞ!」


 中野監督の声が後ろから聞こえて、メンバーが球場に急ぐ。





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