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第百ニ話


「じゃあ、英文と和訳をしっかり書いてクダサーイ! 先生のダンディさに見とれてはイケませんよー。本場アメリカンなワイフがいるから浮気出来ませーん」


 斎藤先生は奇妙な動きをしながら、教科書を見る。

 いつもの事なので、みんなは和訳した部分をノートを取る。

 灰田も欠伸しつつ、同じようにノートに和訳を書く。


「オーウゥ……皆さんドライな対応デース。これからのジェネレーションがウォリーね!」


(あっ…………やばっ…………)


 ドサリと言う音が聞こえて、陸雄が床に倒れ込む。

 机ごと倒れたため、ガシャンと言う派手な音が響く。

 みんながビクリとして、視線を陸雄に集める。


「陸雄! 先生! 岸田君が倒れてます!」


 誰よりも早く驚いた清香が声をあげる。

 クラス中がザワザワする。

 誰よりも落ち着いている灰田がそれを見て、呆れる。


(あの野球バカ。やっぱり持たなかったじゃねーか。放課後にやる中野のシゴキ練習どころじゃねーな)


「オォウ! ジーザス! 保健委員いるか? 保健室に連れていけ! ハリーアップ!」


 英語教師が陽気なイントネーションで保健委員を呼ぶ。

 倒れている陸雄を男子保健委員が担ぐ。


「うわっ! 重っ! しかもスゲー顔青ざめてんぞ! 体重が軽くなってねぇのが不幸中の幸いだけど―――柊木さんも来てくんない?」


 保健委員男子が柊木を呼ぶ。


「あっ、うん! せ、先生いいですか?」


「オーケーデース! レスキューしてあげてクダサーイ!」


 柊木も彼と同じように保健委員なので、席から離れる。


「俺が岸田を担ぐから、階段降りる時に担ぐの手伝ってくんない? このままじゃ岸田を階段に落としちまって、今以上の大惨事になる。出血とかそう言う系の……」


「う、うわぁ……大惨事になりそうだね。じゃあ、ドア開けと階段は手伝うね。教室のドア開けるよ」


 柊木が想像したのか、陸雄を担いだ男子保健委員と一緒に教室を出る。

 席に座っている松渡も想像して、冷や汗を垂らして苦笑する。


(うわ~。転んだら血がヤバそう~。グロいし、エグい~。後でハインにスマホでメッセージ送っておこう。この分じゃあ……)


 ノートに英文を書いていた紫崎がフッと笑う。


(フッ―――この分じゃ、次の二回戦は松渡が先発かもな。今日の練習はハインとみっちり練習、か―――)



 柊木が保健室のドアを開ける。


「先生。岸田君が授業中に倒れちゃって」


 お茶を飲んでいた保健医が椅子から立ち上がる。


「あらあら、お疲れ様ね。そこのベッドに寝かせてあげなさい」


 陸雄を担いでいた男子保健委員がベッドまで運ぶ。

 そのまま陸雄をベッドにドサリッと乗せる。


「ふっー! 終わった終わった。じゃあ、俺先に戻るわ。柊木、後頼む」


「うん……」


 柊木が女子の噂で聞いた情報も含めて、先生に事の詳細を報告する。


「なるほど、岸田君は朝に科学部の実験で使った水を被ったのね。まず体温計で熱を測ろうかしら、柊木さん測っててくれない? 先生、親御さんに連絡入れて、抗熱剤取って来るから―――」


「あっ、はい! 解りました。服脱がせるから、ごめんね、陸雄君」


 柊木は陸雄の制服を脱がす。

 野球で鍛えた筋肉に柊木がドキドキする。


「うわっ、凄い汗。早く測らないと―――や、やだ私……何じろじろ男の人の裸見てるんだろ」


 柊木が顔を赤らめて、陸雄の脇に体温計を差し込む。

 三分待つまで、ベッドの近くの椅子に座る。

 そのままうなされている陸雄を見つめる。


(そういえば栗林君も運動会の時に膝を怪我して、私が保健室に運んだことあったっけ)


 柊木がぼそりと呟く。


「……栗林君、まだ野球してるんだよね? ―――陸雄君達と一緒に野球部に入れば、また会えるかな?」


 柊木は中学でマネージャーだった。

 そのことを思い出す。

 保健室の窓からは体育の授業をやっているのか、学生の元気な声が聞こえる。 

 空いた窓からの風で揺れるカーテンの中で、柊木は胸に手を当てて―――握り拳を作る。


「もう一度、マネージャーやってみようかな? 陸雄君達の試合……見に行ってゆっくり考えて決めて見よう」


 その時に体温計の音が聞こえる。

 柊木が陸雄の脇から体温計を抜く。

 保険医が抗熱剤を持って、ベッドにやって来る。

 柊木が体温計を保険医に渡す。

 

「あら、38度9分ね。汗も凄い出てるし、顔も青ざめてるみたいだから救急車ね」


 冷静に答える保険医に柊木が驚く。


「えっ! 救急車って……ただの高熱じゃないんですか?」


 陸雄は保険医に薬を飲まされる。


「う、ううっ……に、苦い」


「はい、男の子だから我慢しなさい。じゃあ先生は救急車呼んで、親御さんに連絡入れるから―――柊木さんは授業に戻って報告してね」


 持ってきた水を柊木に飲まされて、うなされる。

 陸雄はグビグビと水を飲む。



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