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第十話

 陸雄と清香は電車内で雑談する。


「陸雄。やっぱり高校でも野球続けるの?」


「当たり前だよ。少年野球からそれは変わらねぇ。俺から野球取ったら……」


「そこそこ勉強が出来て、テレビ好きで、大食いな元気高校生。結構残るね」


「いやまぁ……でも野球がなきゃ俺じゃないし……清香は良いよな。入試試験の成績一位だろ? 今日入学式で新入生代表として挨拶だもんな。緊張してるか?」


「全部覚えてるから平気だよ。昨日はちゃんと読んだから―――それに試験前にも教科書だって読み直しました」


「それだけですか、そうですか……秀才は違うわな」


「あっ、陸雄。そろそろ駅着くから降りるよ」


 大森高校付近の駅まで二駅なのですぐに着く。

 二人で見慣れない町を登校する。

 ゲームセンター、ファミレス、コンビニ、洋服店に美容店。


「あんまり来ない場所だけど、ここが登校場所になるんだね」


「今日ランニングしたけど、バッテイングセンター無いから寄り道しねーと思うけどな。おっ、マクドナルド発見っ! ハンバーガーを三年間食える権利が貰えたな! 野球に肉は必要だぜ!」


「陸雄、野球ばっかりだね。あっ、あそこに書店あるから参考書とか買えるね」


 清香はそう言って大型書店を指差す。


「あそこは今朝ランニングした時に覚えてるけど―――通学路の目印だったな。角を右に曲がって、まっすぐ行けば坂道あって―――そのまま学校見えるぜ」


「あっ、そうなんだ。事前に道案内してくれて、ありがとうね。今日は陸雄のお母さんにお金貰ってるから、お昼ご飯食べたい時は言ってね」

 

「ああ、学食は今日はやってねーから、マクドナルドで食うよ。とんかつビッグマックバーガー食べたいし―――」


 二人が雑談しながら歩いていると、同じようにブレザーの制服を着た学生たちが増えていく。


「私達と同じ一年生だね」


「野球できる奴いねーかな? あっ、あいつはラグビーやってる身体だな」


 同じ一年生達と共に、学校の校門前に着く。

 そのまま教師の案内で、入学式のある大森高校体育館に到着した。



 清香が入学式で新入生代表として挨拶をしている時に、陸雄は椅子に座りながら悩んでいた。


(中学では地元の名門シニアの入部試験落ちて―――結局レギュラーは無理だよって、そのチームの監督に強く言われたな。仕方ないから中学の軟式野球部入ったけど……実績は控え投手で兵庫の県大会八位―――高校野球で取り戻さねぇとな!)


 清香が無事に新入生代表の言葉を読み終えて、拍手が起こり入学式は終える。

 各自教室に行って、ガイダンスの時間となった。

 陸雄は清香の案内で一年一組の教室前に着く。


「陸雄。ここが私達の通う教室だよ。やっぱり迷ってそうだったね。後ろにずっとついてたんだもん」


「わ、わりぃ。今日ガイダンスと自己紹介だもんな。部の勧誘は明日からだっけか?」


「私は入らないけど、陸雄はグラウンドに行けば野球部入部だもんね」


「その前に入部届を職員室で貰わねぇとな。さ、教室入ろうぜ」



 新任の先生が入ってきて、清香は中学からの知り合いの女子と話して席に着く。

 ガイダンスを終えて、最後に自己紹介の時間が来た。


「それじゃあ、お約束だけど前の席の君から自己紹介お願いしますね」


「―――はい、わかりました」


 ショートレイヤーの髪型の男子が席を立ちあがる。


(あれ? あいつどっかで見たような?)


 陸雄は後ろの席で考え込む。


(誰だっけ? かなり昔だったような)


 立ち上がった男子がはっきりと通るような声で自己紹介する。


「……紫崎隆(しざきたかし)です。よろしくお願いします」


 瞬間―――陸雄はいつかの試合前の光景を思い出す。


「あっー!? 紫崎って、小学校の相手チームの野球部でレフトやってた―――俺にアクエリアスくれたやつじゃん!」


 陸雄が思わず、大声で席を立つ。

 振り向いた紫崎が、無表情で黙りこくる。

 その表情にはどこか陰があった。

 周りがざわざわと騒ぐ。


「君、ちょっと静かにして席に座りなさい。自己紹介だから、ね?」


「あっ、は、はい。すいません!」


「紫崎君だっけ? 野球部だったの?」


「……はい。中学二年でシニアのチームを辞めました」


 紫崎は聞こえる程度の声でそう言う。

 どこか悲し気な表情だった。


(シニア? ってことは硬式のボール使ってるのか。いいなぁ~。地元のシニア入部試験に落ちたことが悔やまれるぜ)


 陸雄が羨ましがる一方で、先生は話を進める。


「そうか。部活だけが全てじゃないぞ。大森高校にようこそ。これから三年間勉学に励んでくれよ。さぁ、次の人どうぞ」






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